★★★ Excellent!!!
怪異に魅せられている人の心境とは 和田島イサキ
両親を亡くし親戚に引き取られた不遇の少女が、散々にこき使われる日々の中で〝影〟と交流するお話。
ホラーです。と、完全にそう言い切ってしまうとたぶん語弊しかないのですけれど、でも相当にホラいです。ジャンルは現代ファンタジーとなっており、もちろんその通りの内容ではあるのですが、でも登場するものがどう見てもホラーのそれというか。だって作中の「影さん」がどう考えても〝あちら側〟の存在、読者の胸の奥をゾワゾワざわつかせてくれるタイプの何かなんです。つまり『読者に恐怖を提供することを主目的とする作品』という意味でのホラーではないのですけれど(たぶん)、でもそれ以外はホラーだと思います。手触りとか味わいとか。
で、その上でタグにある通りの「ハッピーエンド」をやってしまうのですからとんでもない。
以下はその結末に触れるためネタバレ込みの内容になります。
これがハッピーエンドしていること、そう読まされてしまうことがもう凄まじいです。だってこれ普通に考えたら絶対ダメなやつで、少なくとも〝あちら側〟に取り込まれているのは確実なはずで、つまり普通ならバッドエンドの要素しかないはずの幕引きが、でも一切の疑問も含みもなく「よかったね」と思える。しかもそれが自然になされているので最初はなんとも思わなかったのですけれど、でも考えれば考えるほどすごいというか、いやなんでしょうこれだんだん恐ろしくなってき…
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