第一話の時点では少し笑えるテイストのものなのかな? と思って読み始めたらどんどん嫌な気持ちになっていく(褒め言葉)良質かつ多重的なホラーです。
人間が何に怖いと感じるかというのはパターンがあると思うのですが、複数のパターンを効果的に混ぜることで読者にいろいろな嫌な気持ちを想起させていく(褒め言葉)手腕はさすがの一言。民俗学的観点の使い方も秀逸で、物語に一気に深みというか、ただ事ではない感が生まれてきます。
他の作品もそうなのですが作者の方は「そこまで読んだ時点での読み手の状態」をかなり正確に把握しているように感じられます。「テイストを変える、あるいは新情報を出す」というのを絶妙なタイミングで意図的にやっているように見えます。というのは、出てくる登場人物が尽く素直に好きになれない特徴を持ち、それが隠すことなく描写され、通常であれば嫌な気持ちで胸焼けがする(褒め言葉)状態になりかねないところを、「ほらほらまだ新しい味があるよ」と唆されてつい読み進めてしまうのです。まあその新しい味もなかなかに嫌な気持ちになる味なのですけれど(褒め言葉)(好きな味です)。
この登場人物が好きだとか、助かってほしいとかの感情はあまり出てこない一方で、この世の中のどこか薄暗いところでひっそりと行われているヤバい物事をひっそりと覗き見ているような、そういった暗い興奮を引き出される一作でした。
何の因果か体質か、子供のころから何かと異常者を引き寄せる主人公。
その中からついに異常者の枠に収まらない人間?が現れる。はじめは実話怪談系のホラーと思いきや、話はオカルトに踏み込んで二章へ進みます。
これはその二章公開時点のレビューですが、明らかな怪異が続き、まさに暗い海にこぎ出したような主人公の運命に、しっかりと舵を取ってくれるキャラクターが現れます。このキャラクターがまた秀逸で、それを言いたいがためにレビューを書いたようなものです。
まずキモい。でもあれ?結構頼りになる。でもやっぱりキモい。しかも元々縁があるのでめちゃめちゃ踏み込んでくる。そのためにキモくテンポよくストーリーが引き締まっていきます。
散りばめられるホラーのエッセンスにも光るものがあり、以後も期待しかありません。
初めて書かれた小説とのことですが(このクオリティーで!)、どうか気負わず、自信を持って完結を目指してほしいと思います。
常軌を逸した攻撃性を備えた女性を引き寄せてしまう体質の栄子が、謎の魚のような女性に異常な理屈で詰め寄られるところから話ははじまります。
単なる異常者との邂逅ものかと思っていると、異常者がとある地方に伝わる伝承に出てくる化物の類である可能性が示唆され、幼馴染の男性(異常者)とその友人(異常者)と共に正体を探り始め、前半に散りばめられた伏線を回収しながらストーリーは異常者オールスター戦のようになりながら佳境を迎えます。
主人公含め登場人物たちはどことなく以上にもかかわらず話は破綻すること無く進み、最後は個人的にとても好きな余韻と余白を残して一旦幕を閉じました。
短期間で描かれた作品で、しかも初の小説とのことなので他の作品も呼んでみたいなと思います。
ちなみに僕はるみ殿推しですぞーーーーふおおおお