第70話.神と悪魔の共同④

 廃工場の奥にひっそりとあった地下の隠し部屋。


 そこに下り立った夢城真樹ゆめしろまき福地聖音ふくちきよねの前に現れたのは、見た目は男の子っぽいが、声は女の子の謎の人物だった。


 その人物は薄ら笑いを浮かべながら、二人を見ていた。


「あなた、誰?」


 真樹が尋ねる。


「ボクが誰かなんてどうでも良くないっすか?」


 二人を冷笑するかのような顔のまま、その人物は言った。


「ボク? あなた声は女の子っぽいけど男の子なの?」


 真樹が再度尋ねる。


「はぁ? 性別なんてどうでもよくないっすか? ボクが男だろうが女だろうが何かキミ達に影響あるっすか? キミ達に関係あるのはこのカプセルに入ってる女の子の方っしょ?」


 真樹達の眼前にいるその人物は、若い女性の入った透明なカプセルをコツコツと叩いた。


「この子がうちらに関係ある? どういうことや!?」


 今度は聖音が尋ねた。


「彼女こそがキミ達が望む、終末をもたらす女王だからっすよ」


「この子が終末を起こす??」


 真樹が首を傾げる。


「そうっすよ。男と女でも、現実と仮想でも、上級民と下級民でも、それこそ神と悪魔でも、何でもいいから対になっているものが対立し融合するとき、終末が起こる。そして今のこの世界が終わりを告げ、新世界が創世される。それが天帝が定めたこの世界の仕組みなんすよ。でもキミ達は勘違いしてるみたいっすね。自分達の考えに賛同する者だけを生き残して新世界が創れるって思ってるみたいだけど。残念ながらそうじゃないんすよね。ついでにぶっちゃけると、今の世界をリセットして次の新世界を創世するのは神でも悪魔でもなく、況してや天帝でもなく、ボクなんすよ。ボクが新世界を創世するんすよ。ねぇ、夢城真樹さんに福地聖音さん」


 その人物は口角を上げ、より不気味に笑った。


「あたし達の名前といい、天帝といい、それを知ってるあなたって……」


 真樹が目を見開く。


「しょうがない。自己紹介してあげるっすよ。ボクの名前は、そうだね、とりあえずケロッキーとでも呼んでもらおうかな。そしてキミ達が護法者ごほうしゃと呼ぶ者。いや護法者だった者かな」

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理の悪魔∨情の神∧新世界の先導者《エバンジェリスト》 歩夢図 @holmes777

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