第20話 表裏者2

諏訪頼重との同盟を破棄した武田晴信は甲斐国内に軍令を発し、1542年6月。諏訪領に向け出陣。甲斐の国北西部の若神子に到着。




武田晴信「高遠はどうだ?」


板垣信方「我が方の動きを見て判断するものと思われます。」


武田晴信「我らの本気度を確かめるわけだな。」


板垣信方「左様。」




 若神子は諏訪と佐久との合流点。




板垣信方「殿。佐久と諏訪。どちらを選ばれます。」


武田晴信「高遠との間では、高遠が諏訪で我らが佐久となっているのだな。」


板垣信方「御意。」


武田晴信「どちらのミッションがきついと思う。」


板垣信方「諏訪に御座います。」


武田晴信「そこに高遠が単独で入ることは?」


板垣信方「皆無でありましょう。」


武田晴信「あっても……。」


板垣信方「我らと諏訪が佐久で激突したあとになると思われます。」


武田晴信「それならば……。」


板垣信方「……。」


武田晴信「高遠が動く前に諏訪の本拠を叩いたほうが。」


板垣信方「得策にございますな。」




 若神子から針路を北西にとった武田晴信。その行き先は勿論。




高遠頼継「何!!晴信が諏訪に侵入しただと。」




 敵対する諏訪。共闘を結んだ高遠の機先を制し諏訪の本拠に乱入した武田晴信。これに対し諏訪頼重は居城である上原城を自らの手で焼き捨て、堅固な桑原城へ後退し抵抗するも、7月4日。諏訪頼重は武田晴信から提示された条件を呑み降伏するのでありました。その条件となったのが




武田晴信「妹は無事なんだな……。」


板垣信方「はい。」




 諏訪頼重に嫁がせていた武田晴信の妹・禰々の安否。武田晴信が攻城からわずか3日目で和睦を提示したのもそのため。自身を含む身内の安全とを引き換えに頼重は武田晴信と降伏。甲斐で保護されることになったのでありましたが……。




板垣信方「禰々様は戻られたか?」


山本勘助「はい。」


板垣信方「……ならば……。」




 甲斐に入った諏訪頼重の滞在先となったのが東光寺。この寺がある板垣郷は板垣信方の根拠地の1つ。そこで諏訪頼重の前に差し出されたのが……。




山本勘助「殿からのせめてもの情けに御座いまする。」




 用意されたものは短刀。全てを悟った諏訪頼重は切腹。弟・頼高も甲斐に連行され自刃したため諏訪惣領家は滅亡するのでありました。助け出された武田晴信の妹・禰々でありましたが、翌年1月わずか16歳でこの世を去るのでありました。




 武田晴信の思わぬ侵攻に後れをとった高遠頼継も諏訪に侵入。諏訪領の内宮川西方を確保。一方、武田晴信は東方を占領し、そこに板垣信方を容れるのでありました。

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