第33話 上田原の戦い4

武田晴信「(躑躅ヶ崎に)戻ってから(山本)勘助と話していることなんだけどな……。」


高坂昌信「(今2人がいる)ここで。でありまするか?」


武田晴信「いやここではない。あいつは表の顔の人間である。」


高坂昌信「え!?あの容貌が。『表の顔』でありまするか?殿と勘助様の軍議やいくさ場の様子を見る限り、てっきりこの部屋で。と思っておりました。」


武田晴信「もしそうだったとしたらどう思う?」


高坂昌信「まぁ……。いいんじゃないんですか。と……。」


武田晴信「真面目な話に戻すが、板垣のところに面白いのがおってな。勘助は既に知っていたようなのではあるが、そいつに今……。」




 信濃国海野庄。




真田幸隆「私は板垣様に信用されていなかったのだな……。」




 真田幸隆は板垣信方の脇備。と言うことは今回のいくさで窮地に立たされた武田晴信を救うべく板垣と共に。となるハズであったのでありましたが。




真田幸隆「村上の先陣が私と同じ海野の人間であることを確認した板垣様によって、私はこのいくさから取り除かれた……。」




 同士討ちとなることに対する板垣信方の気遣いなのか。




真田幸隆「私の心変わりを気にしてのことだったのかな……。今となってはわからぬ……。」




 そんな幸隆がなぜ今。今回のいくさ場となった海野の地に居るのか?




(甲斐)


武田晴信「『力攻めだけでは駄目だ。』と勘助が申しておってな……。」


(信濃)


真田幸隆「『海野に精通しているから。』と山本様が私を御館様に引き合わせてくださった。」


(甲斐)


高坂昌信「で。真田様にはどのような役目を与えたのでありまするか?」


(信濃)


真田幸隆「1つは、今村上傘下にある我が海野の一族を武田方に引き入れること。」


(甲斐)


武田晴信「幸隆は海野の惣領の娘婿。」


高坂昌信「それ故、海野平の時。村上に帰属することを善しとせず。上野に……。」


武田晴信「再起を果たすことをモチベーションに、板垣のもとで働いていたのを勘助は見ておったそうな。で。もう1つ幸隆に指示をしていることがある。それは……。」


(信濃)


真田幸隆「村上はなぜあのようないくさをしてきたのか。」


(甲斐)


高坂昌信「あのような?と申しますると……。」


武田晴信「とにかく不思議なことだらけだった。今まで見たことがない光景があまりにも多すぎて。それがなんであるのかがわからないことには対策を立てることも出来ぬ。勿論幸隆に全てを探らせることは出来ぬ。彼は村上内部のものでは無いのであるから。ただこのいくさには幸隆の同族である海野のものが村上方。それも先陣として参加しておる。」


高坂昌信「彼らは村上にとって征服されたものたちでありまする。」


武田晴信「最も危険な任務を課せられることになる海野のものたちが、村上からどのような指示を受けたのか?を幸隆に探らせておる。」


高坂昌信「普通であれば『死力を尽くして武田に突っ込んでいけ!!』となりまする。」


武田晴信「そうだろ。そう思うだろ。でも実際は違ったんだよ。」




 村上が帰属した海野の一族に出したその指示とは……。

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大将首は自分で守れ 俣彦 @k_matahiko

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