第5話 武田信虎

家臣「武田信虎にございます。」


村上義清「要注意人物の登場だな。」




 武田信虎が家督を継いだのは数えにして14歳のこと。




村上義清「若いな……。」


家臣「殿もまだ二十歳を過ぎたばかりでありますよ。」


村上義清「……にしても14は若いぞ。」


家臣「信虎の父信縄が亡くなってしまった以上信虎が継がざるを得なかったのは仕方ありません。」


村上義清「ただ元服したばかりの年齢で家督を継ぐことになったとなると……。」




 甲斐の国東部にある都留郡の国人が中心となり信虎の叔父・信恵を擁立。信虎打倒の旗を立てることになります。




村上義清「まぁそうなるわな……。」




 ただ信虎はこの苦境に対し、武力で対抗。その結果、翌年には信恵以下反旗を翻した主だった武将を戦死に追い込むばかりか都留郡に侵攻し奪取。敗れた国人衆は北条を頼って相模へと亡命。




村上義清「その頃武田と北条の仲は?」


家臣「頼りにするぐらいであります故。」


村上義清「愚問だったな。」


家臣「殿は何言っても大丈夫ですよ。逆の立場(私)が同じ問い掛けをした日には……。」


村上義清「最低一刻半の説教が待っているかな?」


家臣「……ですよね。」




 甲斐東部で発生した反信虎の動きは甲斐の北西部や南部にも飛び火。その炎は国内勢力のみならず。




村上義清「諏訪や今川の介入を促すことになってしまった。と……。」


家臣「国人側からすれば自分の権益を維持するのに頼みとなる勢力の後ろ盾が無いと保つことが出来ません。そんな中、甲斐の守護・武田の当主がまだ十代半ばとなれば。」


村上義清「たとえ他国の勢力であったとしても……。」


家臣「敵対勢力と境を為している国人には、接していない国人とは異なる事由がありまして……。」




 勢力と勢力のはざまにいる国人は基本境を為す全ての勢力に従っています。




村上義清「二重三重の課税と軍役を課せられることになっている。」


家臣「出来ることなら自分の所領は安全地帯であってほしい。」


村上義清「であるから例え他国の勢力を引き入れることになったとしても。」


家臣「片側に払っている課税分の一部を担保に安全を保障してもらうことを目指すわけであります。」


村上義清「これに対して信虎は……。」




 武でもって対抗勢力の撃破に動くも諏訪・今川の軍勢は手強く信虎劣勢で推移。しかし……。




『遠江情勢悪化に伴い今川が甲斐から撤退し武田信虎と和睦』




村上義清「今川にとっては当然今川のほうが大事。」


家臣「今川の脅威が無くなった信虎は国内統治に向け次なる一手を打ちます。」




 甲府開設と有力国人の甲府集住。




村上義清「従うなら家族を人質に甲府に集まれ。さもなくば……。私もやってみたいものである。」


家臣「ただそれをやるには尋常ではないお金が掛かりますし、殿にはまだ単独で従わせることが出来るだけの武力がありませぬ。」




 集住に反対する国人が甲府を退去するも信虎はこれを撃破。




家臣「今川の気が変わらないうちに……。」


村上義清「諏訪はどうしている?」


家臣「今川と連携しての動きであった模様……。」


村上義清「俺も武でもって国人共を……。」


家臣「……滅多なことを申してはなりませぬ。国人共が束になって殿を狙って来たら我らはひとたまりもありませぬ。」


村上義清「甲斐が統一され、武田と今川が和睦したとなると、チト面倒なことに……。」

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