第27話 志賀城の戦い1

 河越城を巡る争いに北条氏康が勝利を収めた結果。関東における北条の優位性が確定。これを見た武田晴信は北条氏康との関係強化に乗り出し、共に関東管領山内上杉憲政を圧迫。北条は上野。一方の晴信は信濃東部に位置する佐久郡へと兵を進めるのでありました。その戦いにおいて最も重要な役割を果たしたのが板垣信方率いる諏訪衆の面々。古今東西降伏した側に課せられる仕事は決まって最も嫌がられる仕事。戦国時代においては最前線でのいくさ。この最も命の危険に晒される場所において諏訪衆は目覚ましい活躍を見せるのでありました。全てはかつての主君・諏訪頼重が遺児。寅王丸帰還のため。高遠に藤沢。更には大井との戦いを経るに従い諏訪衆の面々は精強さを増していくのでありました。河越城の戦いの翌1547年。晴信は佐久郡制圧の総仕上げとして信濃における山内上杉最後の拠点・志賀城


―志賀城は上野との国境に近いため山内上杉から支援が受け易い上、城主の笠原清繁は西上野の高田憲頼と縁戚関係にあり、その憲頼が志賀城に入っている。そのことも手伝い佐久郡の大半が武田晴信傘下に収まる中、山内上杉方として踏みとどまっている―


を包囲するのでありました。その最前線に陣取るは勿論板垣信方率いる諏訪衆。そんな彼らのもとに伝令が舞い込むのでありました。




伝令「申し上げます。山内上杉の軍勢が碓氷峠を越え、志賀城に向けに兵を進めている模様であります。」




 河越城の戦いに敗れたとは言え、山内上杉は本拠地上野で健在。西上野の衆を志賀城に向け派遣するのでありました。この報告を受け


「……山内が……。」


と呟く人物が。




板垣信方「真田殿。如何なされた?」


真田幸隆「いえ。昔のことを少し思い出しておりまして……。」




 武田・諏訪・村上により海野庄をおわれた真田幸隆は主君・海野棟綱と共に上野の山内上杉憲政のもとに身を寄せ。直後に発生した武田信虎追放の混乱に乗じ信濃に侵攻した山内上杉家重臣長野業正に同行。旧領の回復を目指し働くも利益を得たのは佐久の衆だけ。山内上杉に失望した幸隆は上野を離れ。今は板垣信方の脇備として旧領回復を目指し活動しているのでありました。




真田幸隆「そんなに佐久が大事なのか……。俺らの事を虫けらの如く捨てたあいつらが……。そんなにも……佐久は大事なものなのか……。」


板垣信方「まあまあ経過は知っておる。そなたの気持ちはよくわかっておる。リベンジするには良い機会であるな。」


真田幸隆「御意。ところで上杉の手勢は誰である?」




 伝令より山内上杉方の武将の名を聞き




真田幸隆「板垣様。私に考えがございます。」




 幸隆の考えを聞く板垣信方。




板垣信方「面白い。やってみようではないか。殿には私から話しておく。」

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