第13話 海野平の戦い5
1541年5月。村上義清は海野領のある小県郡東部に侵攻を開始。これに対し、
『村上が攻めて来たぞ!!』
と迎え撃つ態勢に入る海野の衆。そこに諏訪頼重が和田峠を越え海野領に乱入。上田付近で村上・諏訪両勢力と相対することとなり動揺する海野の衆。そこに武田信虎の軍勢が佐久郡に侵入。海野の衆は東・南・西の三方から挟み撃ちに遭うのでありました。
家臣「武田と手を結ぶのでありまするか?」
村上義清「そうだ。」
家臣「しかし殿。武田とは……。」
武田と村上は長年。佐久郡において抗争を続け、直近でも1539年に信虎の重臣・飯富虎昌が佐久へ。これに対し1540年2月に義清が甲斐に侵入。これを受け4月信虎の同じく重臣・板垣信方が佐久郡に反撃に出るなど
一見すると、とても共同戦線を張ることが出来ないような相手。
村上義清「殴られたら殴られた分だけ殴り返す。そうしなければ相手に舐められてしまうだけ。」
軍事演習などで仮想敵となった国が嫌がるのは、自分が仮想敵扱いされたわけではありません。仮想敵となっていることはお互い様でありますので。では何故嫌がるのか?と言いますと、その軍事演習で相手が使った分だけ自分の軍事演習で使わなければならなくなるからであります。
『お前の使った兵器ぐらいなら屁でもないよ。』
と内外に示さなければ
『あの国攻めたら……潰せるな……。』
『うちの国攻められたら……耐えれないな……。』
と思われてしまうため、それを防ぐべく。たとえお金が無くとも使わなければならなくなります。逆に何事も無いように対応することが出来れば
『あそこは油断ならぬ相手。』
『うちの国のトップは頼りになる。』
と評価されることになります。
村上義清「いつでも甲斐に侵入するルートは確保していますよ。いつでも甲斐の国を混乱のるつぼに陥らせることも出来ますよ。を信虎に示すために2月。私は甲斐に攻め込んだのだ。」
家臣「それに対して武田は佐久に入り込んで来ましたが。」
村上義清「佐久の連中はまだ。私と信虎を天秤に掛けているのであろうし、私が甲斐に入る時、決まって佐久のルートを使うからな。」
家臣「今、佐久の連中は信虎に頭を下げてはいるけれど……。」
村上義清「信虎にとって私を不気味な存在と思ってもらえればそれで善し。で。信虎に取引を持ち掛け。信虎と同盟関係にある諏訪を巻き込んで実現したのが今回の共同戦線。」
家臣「ただ相手は信虎。我らが狙う小県郡にも奴が……。」
村上義清「そこで活きて来るのが信虎と山内上杉の関係。海野領の裏書きとなっているのは山内上杉家。海野領は言わば山内上杉領。そんなところに信虎が本腰を入れて奪いに来ることはあり得ない。適当なところで兵を引くことになることは必定。」
家臣「でもそれでは結果的に我らが単独で……。」
村上義清「我らも本気では戦わぬ。」
家臣「それでは……。」
村上義清「ここで武田と山内上杉の関係が活きて来るのである。武田と山内上杉は同盟関係。と言うことは武田もしくは山内上杉が互いの同盟を破棄せぬ限り山内上杉が信濃に兵を入れることはあり得ない。と言うことは……。」
家臣「海野の衆が頼みとする山内上杉の援軍は期待できない。」
村上義清「そればかりか、武田と山内上杉の間で既に話がついているのかもしれない。と疑心暗鬼となっているものも出てくるかもしれない。そうなってくると……。」
家臣「海野は各郷村の連合組織。」
村上義清「自分の利益を守るためそれぞれがそれぞれの生きる道を模索することになる。そこに三方から兵が迫って来ると……。」
家臣「あとは自壊していくのを見物するのみ。」
村上義清「味方するものには所領の安堵を約束。」
家臣「敵対するものに対しては……。」
村上義清「直轄ないし恩賞の原資とする。」
家臣「彼らに迎え入れられた海野の運命は……。」
村上義清「山内上杉を頼って落ち延びるのではあれば、彼らを担ぎながら。我らに味方するならば……。」
家臣「奴の首を持参することになる。」
戦いは2週間足らずで武田・諏訪・村上の連合軍の勝利。海野衆は降参するもの。山内上杉を頼って上野の国に落ちるものなどバラバラとなり、その所領を武田・諏訪・村上の三者が分け合い終了。
……となるハズだったのでありましたが……。
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