第16話 海野平の戦い7

 信虎追放の報を受けた村上義清は、諏訪頼重に佐久への派兵を促すと同時に、自ら兵を率い海野領であった小県郡東部の防備を固めるのでありました。そこへやって来たのが




家臣「長野業正が海野の衆を率い、信濃へ侵入して来ました!!」




 長野家は上野国西部に地盤を置き、業正は山内上杉の重臣で上野国箕輪城城主。海野平の戦いに敗れ上野に逃れた海野衆の要請を受けた山内上杉憲政は、この業正を総大将に任命。信濃へと侵入して来たのでありました。これに対し




家臣「佐久郡の国人悉く上杉に降伏しました。」




 甲斐の国で発生したクーデターに伴い、権力の空白地帯となった信濃の佐久郡。いつまた侵入して来るかわからない村上に不安を覚えた佐久の国人は、長年縁のある山内上杉家に支援を要請。これにも応える形で長野業正が入ったこともあり、佐久の国人は抵抗らしい抵抗もせずその傘下に収まるのでありました。これにより佐久郡と小県郡の境で直接相対すことになった村上と上杉でありましたが……。




真田幸隆「長野様!!」


長野業正「これは真田殿。如何なされた。」




 真田幸隆は海野の一族で、先の海野平の戦いに敗れ上野に落ち延びたひとり。




真田幸隆「なぜ海野に入らず兵を引くのでありまするか!?」




 長野業正が佐久を治めたところで諏訪頼重より交渉の場が持たれ、交渉の結果。小県郡は村上。佐久郡を山内上杉と諏訪で分け合うことで和睦が成立。そのため長野業正は兵を引くことになったのでありましたが……。




真田幸隆「我が海野との約束を反故にするのでありまするか!!」


長野業正「……うるさいのう。佐久は佐久で地盤を持つ国人からの要請があって受けたもの。それに対してお前らに今。その地盤が無い。見て見ろ。村上の防備体制を。」




 山内上杉の信濃入国を想定した村上は、先手を打って佐久と小県の境の防備を固めていた。




長野業正「北条とのいくさが続いている今。こんなところで兵を消耗させたくはない。どうしても?と言うなら……。」


真田幸隆「……。」


長野業正「お前の力で奪い取ってこい!!!」


真田幸隆「!!!!」




 周りに引き留められる真田幸隆。




長野業正「これだから農民無勢は……困ったものだ。」




 帰国後……。




源太郎(真田信綱)「父上!!」


真田幸隆「…………。」


源太郎「父上!!!」


真田幸隆「……許せぬ……。」


源太郎「……父上……?」


真田幸隆「……どこまでもコケにしやがって……。」


源太郎「………………父上……………。」


真田幸隆「……自力で奪ってこい。だと……。面白い……。」


源太郎「……………………。」

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