第10話 海野平の戦い2

家臣「(北信濃と挟み撃ちの形となる)越後の長尾はむしろ(村上と対立する)高梨や井上と連携していますし、長尾は長尾で今。お家騒動の真っ只中……。」




 1540年当時。越後守護上杉定実の養子に奥州伊達稙宗の三男・時宗丸(実元)を迎え入れるか否かで大揉め。その流れに加担する主要な人物の1人が長尾家の当主ある為景。




家臣「騒動により長尾が越後国内に忙殺されている隙をついて我らは北信濃への進出を強化して来たわけでありますが、……その長尾と。でありますか?」


村上義清「いやそうではない。むしろ高梨や井上は越後との緩衝材として残しておきたいのが本音。」


家臣「(長尾の本拠)春日山は千曲川の下流にありますからね……。」


村上義清「揉めているのは養子を受け入れる側(越後)だけではないぞ。」




 越後に実子を送り込むにあたり伊達稙宗は、自領の精鋭100騎をつけることを考え実行に移そうとしていました。それを知った稙宗の息子晴宗が反発。稙宗は越後のほかにも奥州の様々な家に娘を嫁がせたり、養子に出すことにより勢力を拡大。晩年となり、嫁がせた各家からの要望を叶えるべく自分の領土を割譲することを約束するなどしていたこともあり、2年後の1542年から稙宗と晴宗の間で内乱が勃発。これに稙宗のお墨付きを利用し、伊達領内に親戚の家が介入。




家臣「相続で揉めるのはいつの時代も変わりませぬ……。」


村上義清「ましてやこの時代は皆。食べていくのに精一杯であったから尚更のこと。」


家臣「たとえそれが本家であったとしても。」


村上義清「むしろ裕福な本家だからこそ狙われるのであり、本家が本家を名乗り続けるには嫁ぎ先の家を守るのも仕事。」


家臣「ただそうすると本家が弱体化することになる。親父の代は良いかもしれないが、俺の代になった時それでは困る。と……。」


村上義清「私の20年もそんなところなんだけども。」


家臣「ことがうまく運んだ場合は記録が残りませんからね……。」


村上義清「で。トピックスらしいトピックスが。」


家臣「佐久を武田に奪われたこと。」


村上義清「これから晴宗も似たような苦労を味わうことになるんだろうな……。閑話休題。我らが共同戦線を張るのは北信濃では無い。海野平である。」

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