第3話 清水寺
アンジェラめ!旅行が終わった後でとっちめてやる!
俺が歯軋りしていると優仁が荷物のトランクを引きずりさっさと歩き出す。
「行こうよ奏多。僕は早く京都観光がしたいよ?」
「ああ…わかったよ。まず駅のロッカーにトランクを預けようぜ」
俺とて京都は初めてなのだ。イライラして時間を無駄にするのはもったいなさ過ぎる。
コースは面倒なので優仁に任せることにした。彼はガイドブックを小脇に挟み、見もせずに。
「まず清水寺かな。徒歩約15分で着くし。次に金剛寺、安井金毘羅宮、建仁寺、八坂神社…それで祇園に戻る、と。お昼は鰊蕎麦。これは絶対譲れないからね」
「よく覚えてるなあ」
「僕は人間とはスペックが違うからね?」
ここの、と頭を叩く。じゃああの幼稚さはなんなんだよ…
そんなこんなで俺達はのんびりと歩き清水寺に到着した。雄大な景色と歴史ある建造物に圧倒される。
「世界遺産にも登録されているんだよ、清水寺は。『清水の舞台から飛び降りる』の清水はここのことだね」
この男がいたらガイドはいらんな、などと思っていたら、ふと優仁が立ち止まり。
「奏多、清水の舞台から飛び降りる、ってどういう時に使われる言葉か知ってる?」
「あ?自殺したい時か?」
ポカリ。グーで殴られた。いてえぞコラ。
「なにすんじゃ!」
「思い切って大きな決断をするという意味のことわざだよ…もう」
呆れた口調に俺が殴り返してやろうかとすると、クスクスと笑う女性の声が聴こえた。
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