第4話 ガイド
「ごめんなさい、貴方達のお話が面白くて。つい立ち聞きしてしまいました。笑ってすみません」
ペコリと頭を下げた女性は紫色の上品な和服に身を包んだ美人で。歳は20代後半ぐらいだろうか。
「観光ですか?京都は初めて?」
「はい、そうです。まだ着いたばかりで。貴女は京都の方ですか?」
「ええ…産まれも育ちもずっと」
穏やかな微笑みを女性に向ける優仁。接待モードと思いつつ、俺の頭の隅がチリチリする。
「そうですか。そのわりに京訛りがありませんね」
「ふふ、聞きたいどすか?もし宜しければ清水寺の見所をご案内しますよ?」
「本当に?それは有り難いなあ。でも言葉は標準語で大丈夫ですよ。ねえ奏多、ガイド、ぜひお願いしたいよね?」
優仁がニコニコと俺にふってくる。
俺はブスッとしたまま。
「は?別に要らねえんじゃないの、ガイドとか」
「お邪魔でした?すみません。私はただ京都の良さを知って頂きたかっただけなんですか…」
しょんぼりする様子に罪悪感が刺激された。
しかも優仁のやつは、咎めるように俺を睨んでくるし…
「…やっぱりお願いします」
「まあよかった。失礼ですが、お名前を伺っても?私は各務と申します」
「俺は九条しじ…奏多、だ」
優仁も名乗り、挨拶をかわす。
初めての場所で案内は助かる。が、なんだか二人きりの旅に邪魔がはいったような気がするのは何故だろうか。
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