「あると思う」そんな恋模様

 ayaneさんの恋愛ものはいくつも読ませていただいていますが、常に感じるのは欠点は欠点として書き、その欠点も愛する人たちを描けているという点です。 欠点を、登場人物の言動で全肯定する事で欠点でなくし、寧ろ長所の様に描くものが、恋愛というジャンルでは目についてしまうだけに、この描き方は特筆すべき美点です。

 主人公の和と聖也にも、相手の気持ちを推し量ろうとするが故に、それを理由に自分の行動を正当化している節が感じられ、それがすれ違いを生む展開は、納得できる描写がなされています。

 中盤から関わってくる和の両親も、凡百の作品であれば、とんでもない分からず屋か、有り得ない理解者である場合が多いのですが、この物語では「両親も、恋愛を成就させて結婚した先達である」と感じさせられました。

 特に父親は、自分の経験があるからこそ、聖也に対し思う所があるし、対応もそうなってしまうという事を想像させられますし、また和を愛する父であるが故の行動であるとも思わされ、一方的に頭の硬い分からず屋と書かれていない点も外せないポイントです。

 そういった登場人物に共通して、多かれ少なかれ感じさせられるのは「責任感」で、優等生としての責任感、親または教師としての責任感、また富豪やエリートとしてのものまで、無責任な我が儘さを感じさせない人物描写にとても惹かれます。

 時間を忘れて読む物語でした。

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