キミの初めては全部俺が教えてあげる。 ~俺を『彼氏』認定してくれたら、もれなく『溺愛特典』がついています。~

ayane

プロローグ

 ―放課後―


 アマリリス高校、第一校舎の裏庭。


 俺は林和はやしかずと二人で裏庭に立っていた。心地よい風が二人の頬を優しく撫でた。


「俺と付き合って下さい」


「……光月君」


 林の黒縁眼鏡を両手でゆっくり外す。一瞬驚いたように、林は数回瞬きをした。


「眼鏡をかけない方が、全然可愛いよ」


 大きな二重の瞳が、恥ずかしそうに俺を見上げた。


 俺は林の髪に触れる。

 センター分けで、左右二つに結んでいた黒いゴムを一つずつ外した。


 ストレートの長い黒髪が、パラパラとほどけ林の頬にかかる。俺は右手で優しくその髪を直す。


「林……。髪を結ばない方が綺麗だよ」


 赤く染まった林の頬に、右手を添えたまま、桜色の唇にそっとキスをした。


 一瞬、ビクンとなった林の華奢な肩を左手で支える。


 一秒、二秒……三秒……。


「俺の勝ちだな」


「えっ……?」


 キョトンとした顔で林が俺を見上げた。


「ちぇっ、聖也の勝ちかよ」


「くっそぉ、つまんねぇの」


 校舎の陰から、俺の親友、元木正和もときまさかず平本恭介ひらもときょうすけが顔を覗かせた。


「見たか、お前ら。これで、まさの焼き肉食べ放題決定だからな」


 俺は自信満々に、正和と恭介に声を掛けた。


「や、焼肉……?」


 林は林檎みたいに真っ赤な顔で固まっている。


 そんな林に正和と恭介はため息を吐きながら視線を向けた。

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