小惑星を受け取った少女が出会う、不思議な事件と淡い恋——。

 資産家の祖母の遺言で小惑星のひとつの相続人として指名された紫陽(しはる)。
 幼い時からそばにいてくれた優秀な秘書の安藤と共に、その小惑星へ管理人を見極めるために訪れたことから、驚きの事件に巻き込まれて——?

 丁寧に織り込まれた伏線が、驚くような事件に発展し、そして綺麗に収斂していく本編ラストはお見事! と言うより他ないのですが、さらに続く第二部で詳細が明らかになる登場人物たちがとっても魅力的です。

 知的でクールでどこか謎めいた安藤、対照的に一見よれよれで粗野に見えて、いざと言うときは頼りになるし、意外と絆されやすく(最高に格好いい!)優しいツバメ。そしてどことなく感情の読めない紫陽自身や彼女の家族の秘密。
 やわらかい紫陽の語り口は穏やかなのに、次々と起こる事件と謎に、一体この先どうなるのだろうと気になって最後まで一気に読み切ってしまいました。

 それぞれが驚くような過去を抱えていて、それでもなんだかみんな優しく温かい——。
 個人的には紫陽さんのツバメに向ける仄かな恋心と戸惑うツバメさんに思い切り悶えてしまいました……! できれば彼らのその後が見てみたいなあと思わずにはいられません。

 びっくりする仕掛けと魅力的な登場人物たちが織りなす物語。
 おすすめです!

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