資産家の祖母は孫の紫陽(しはる)に、「小さな惑星を譲る」旨の遺言を遺し亡くなった。星の相続から始まった騒動と、様々な人たちと繋がり成長していく女性の物語です。
ジャンルがSFという通り、惑星間を行き来できるというくらいの近未来を感じる設定。でもゴリゴリのSFというわけではなく、どなたも気軽に読めるテイストとなっています。恋愛、家族愛がお好きな方もぜひ。
紫陽ちゃんはお金持ちだけど一見普通のお嬢さん。ですが要所で意志の強さや賢さを感じ、安定感抜群です。様々な事件を通して資産家一族としての自覚や強かさも身につけていきますが、その描き方に嫌味がなく自然で好印象。思わず応援したくなっちゃいます。
男性陣もみんな魅力的!そういえばみんなタイプ違いますね。改めて思い返してみるとすごい。お好みの彼が見つかりますよ、たぶん。
ちなみに私は3章で登場する従兄の冨士くんにノックアウトでした。ネタバレ良くないのでこれ以上は何も言えませんが、でもでも同士が欲しいんですよ〜。一緒に沼りましょう。ぜひ!
資産家の祖母の遺言で小惑星のひとつの相続人として指名された紫陽(しはる)。
幼い時からそばにいてくれた優秀な秘書の安藤と共に、その小惑星へ管理人を見極めるために訪れたことから、驚きの事件に巻き込まれて——?
丁寧に織り込まれた伏線が、驚くような事件に発展し、そして綺麗に収斂していく本編ラストはお見事! と言うより他ないのですが、さらに続く第二部で詳細が明らかになる登場人物たちがとっても魅力的です。
知的でクールでどこか謎めいた安藤、対照的に一見よれよれで粗野に見えて、いざと言うときは頼りになるし、意外と絆されやすく(最高に格好いい!)優しいツバメ。そしてどことなく感情の読めない紫陽自身や彼女の家族の秘密。
やわらかい紫陽の語り口は穏やかなのに、次々と起こる事件と謎に、一体この先どうなるのだろうと気になって最後まで一気に読み切ってしまいました。
それぞれが驚くような過去を抱えていて、それでもなんだかみんな優しく温かい——。
個人的には紫陽さんのツバメに向ける仄かな恋心と戸惑うツバメさんに思い切り悶えてしまいました……! できれば彼らのその後が見てみたいなあと思わずにはいられません。
びっくりする仕掛けと魅力的な登場人物たちが織りなす物語。
おすすめです!
SFであり、ミステリーであり、の読み応え十分なストーリーで最後まで楽しみました。
一度読み切った後、ぼくは答え合わせもかねて二週目をしました。一読目にも思いましたが、読みかえすと所々に張られた伏線が見事に絡まり合って巧妙にラストの「答え合わせ」に繋がっていると、改めて感じられてただただ感動です。(アンドロイド、安藤、アンドゥ―……すごい!)
安藤とツバメの掛け合いも面白かったし(にやにやした)、唐突なバトルも面白かったです(びっくりした)。それに巻き込まれておろおろする紫陽がとにかく可愛い(にやにやした。2回目)。しかも、紫陽、もしかしたらそれ、ファーストキスだったんじゃ……! なんて思うと今後のツバメとの関係がどうなっていくのかも「うふふ」な気分になります。(そしてまたツバメが猫型ロボットにからかわれる……笑)
面白かったです!!
気になる点としては、些末な部分ではあるのですが、父親の存在でしょうか。遺産の件のみならず父親が上の二人から冷遇されているような気がしなくもなく、それがなんでなんだろう、というのがもやっとしてしまったのと、「両親の離婚(?)で祖母宅に身を寄せる」「祖母の死で祖母宅から出ていく」にお父さん、甲斐性あるの? ないの? がもやっとなりました。(金銭的に余裕があったらそもそも出戻らないのではと)
母親のことも、もやっとです。紫陽花を植えて大切にして、「お母さんからのプレゼント」と祖母が言えるくらいなら、離婚(?)にも理由がありそうに感じるのですが……。(まさか死別??)
そして祖母の手紙。安藤は人間じゃないんだな、は、実は序盤からわかったんですけど、手紙に関しては「安藤は読んだ?」「いいえ。存じません」から「人となりはご自分で確認するようにと、先入観は持たせるなと “言われております” 」と会話が続いたので、安藤は読んでいて(つまり、手紙には大したことが書かれていないことを知っていて)紫陽から質問が飛んでくる前提で答えを用意していたんだなと思わせてしまうのが(だから手紙の最後の意味も分かっているんでしょと邪推してしまう→所有権か処分の件なんだなと思ってしまった)、作者的に予定通りなのか、どうか……。