不思議な魅力と迫力と

「グスコーブドリの伝記」という、宮沢賢治の童話があります。
グスコーブドリという、一人の少年が、押しつぶされそうな現実の中を生き、しかし周りの幸いのために、災害にたった一人で立ち向かった男となった話です。
本作は、そのグスコーブドリが、現代に、それも新宿という地に生まれ落ちたら……というお話です。
のっけからグスコーブドリが女の子という時点で、もうハードな展開しか予想がつきませんでしたが、そのハードさを飲み込んで、読んでいく価値のある一作だと思いました。
ひとりの人間が生まれ、生きて、生き抜いて、そして己が才により、周りをより良くしていくことができ、そしてそして……そんなお話です。
哀愁の中、不思議な魅力と迫力をたたえている逸品です。
どうか、ご一読を。

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