憧れと愛情と憎悪を原動力に。

社会の片隅で生きる少女、グスコー。
その生は踏みにじられ、弄ばれる。
少女の瞳から光が消えていく。

一人の歌い手、古ぼけたギター。
「全ての曲は憧れと愛情と憎悪を原動力に作られた」
言葉が、沁みる。
「虚無からは何も生まれない」

グスコーはギターを手にとる。
歌が生まれる。
少女の瞳に、光が灯る。

グスコーは歌う。憧れ、愛情、そして憎悪。
一番届け難い歌だ。私たちが蓋をしたい感情。呑み込まれてしまう感情。
でも、グスコーは歌う。憎悪の先で生きる自分を。
グスコーはちゃんと届けるのだ、みんなに。

この物語を契機に、「グスコーブドリの伝記」を読んだ。
知らないだけで、私たちは幾人ものブドリの先で生きているのだろう。

耳を澄ませば、歌声が聴こえる。

私たちはこの世界を渡る。祈るように。
憧れと愛情と憎悪を、原動力として。

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