金の穂の国を夢見て。

 それは、幻でしょうか。

 宝石の国からきたお姫様。彼女が蔑んでいた百姓の国で見たのは、黄金よりも輝く麦畑。理不尽から逃れ生き抜いてきた人々の、あたたかな笑顔。
 肌の色が違っても、重ねた手の温もりは変わらない。
 一粒の麦が寄り集まり、いつか一面の麦畑が現れるように。
 私たちひとりひとりも寄り集まって、金の穂の国を見ることができたなら。

 風に波打つ金色の輝き、あたたかな人々。

 けれども、それは幻でしょうか。

 いいえ。この物語を読んだ私たちの心には、既に種が蒔かれているのですから。

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