会談記録再生・二

【ピュービル】王国は再び立ち上がるさ。

【ゴオルギー】誰を王にして?

【ピュービル】それは本心ではないだろう。本当に聞きたいことじゃない。

【ゴオルギー】本心などおれにもお前にもわからないさ。我々は分かたれている。

【ピュービル】お前は救う。

【摂政】お前は建てる。

【建国者】そしてあいつが審判する。

【摂政にして覆す者】あいつに任せるつもりなのか?

【盲目の建国者】試す価値はある。

【摂政ゲオルグ】しかしお前は見えない目で神話を書き直してしまった。今やおれは貶めれられた。


窓を叩く豪雨の音。


【地べたを這う虫であるゴオルギー】とんでもないことをしてくれた。おれとあいつを追放して。取り返しがつくとでも思っていたのか?


沈黙。


【哀れなゴオルギー】何も見通せぬお前にはわからなかったのだろうな。おれの導きがなしには。お前は……。

【荒れ狂う力の偉大なる我らのピュービル】力だ。偉大だ。

【ゴオルギー】ただそれだけだ。正しさはない。


コップを置く音。


【ピュービルの持つコップの中で溺れゆく苦しげなゴオルギー】今お前はあいつが、あの裁く四つ足が何をしているのかわかっているのか?

【勝ち誇る勝利の象徴の何も見えぬピュービル】さあね。あいつのやる通りさ。

【溺れるゴオルギー】とんでもないことになっているぞ。おれたちは、おれたち三人はもう二度とひとところに、ひとつに戻ることはないだろう。流出は続く。世界を飲み込むまで。


 コップの水を飲み干す音。会話は終了した。


 補足すべきこととして、ズメトリスカ近郊である裕福な家族を載せた馬車が行方不明になった。後に彼らは奥深い林の中で野生動物に食い荒らされたかのような凄惨な死体で見つかったという報告があったが、そのうち末子の少年(八歳)の死体のみ見つからなかったという。


 その馬車は目撃証言によれば、風変わりな山羊に似た動物を載せていたという。

 その獣の顔は、どこか奇妙にも若く美しい少女の顔を思わせる風貌をしていたともあった。

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