第11話
碧と白の光を纏いし超鋼は新たなる肉体と命を礎とし、現へと再びの降臨……否! 新たなる超鋼として誕生した!!
その名も――エグゾギア・ザガン!!
護りの要たる装甲は碧と白に閃き、流るる水が如き曲線美は風を撫で極小に塵すら付着せず! 碧玉の双眸に灯したザガンが眼光鋭く、彼の表情の一切を秘匿せし無垢の
しかしてその五体は逞しく、
――即ちそのエグゾギア、この世を内包せり!!
原初にして王道を征くエグゾギア・ザガン。対するは王道の
相対す強大が二つの合間に生じせしは超鋼が矜持と、そしてザガンとシュテンが闘気の激突の火花であった。
本来人の目には空気と同じく見えないはずのそれが、しかしあまりに濃度が過ぎる故に若衆にも女衆にも、子供たちにすら見えてしまう。それほどまでに圧倒的!
感受性高し赤子が泣き声の謳歌が始まる。子供たちは知らずの内に失禁し、若衆に女衆たちの肉体は震え上がる。
それらが動くことも発声することもままならぬ中で唯一、そのいずれもが可能で居るバジラは諸の手の爪を竜鱗で硬質化した掌の内に握り締め、ザガンの背中を見詰めていた。彼の勝利のみを信じて!!
「……いざ――」
つかまつる――しばしの睨み合いは互いの隙を窺い合っていたが故、しかし対するシュテンは曲者。隙を見出すことが出来なかったザガンは己が彼に隙を曝す前に突撃を敢行する。勇気ある行動である! しかし互いに隙が無いのであれば五分と五分!!
「その意気や良し! 見事なる度胸なれば……」
向かい来るザガンに対しシュテンは己の右手、その指を真っ直ぐに伸ばす。鋭翔爪の発射姿勢! けれどそれが向いているのは
それを訝しむ心をザガンは踏み倒し直進。何が来ようとも対処してみせるというそれは力を得た故の慢心か、それとも自信か。
「出でよ、
しかしその現象を見たザガンは己が目を疑う。垂直に立てられたシュテンの揃えられし五指より溢れ出た朱き輝きはたちどころに形を定め、そこに朱い光の剣を生じさせたのである。電離気体に似た超高温は触れたものを一瞬にして溶断せしめる! エグゾギアとて例外ではない!!
だがザガンは見破る。その刃渡り約五寸! 威力を確保すべくその剣、刃渡りはそれが限度であると。
怖じけるなと彼は自らに言い聞かせ、更なる加速を行う。その意思を汲み取ったザガンのエグゾギアは、その背中と足裏に設けた噴射口より火を噴いた。爆発にも似た噴火にぐんとその背を押され、瞬く間にシュテンとの距離を詰めるザガンに彼は光刃を薙ぐ。
――ズバムッ!!
朱色一閃! しかし虚空を両断したのみ!!
シュテンが狙いたるザガンは自らが光刃の間合いに収まる直前、踏み込んだ足を爆発させシュテンの頭上を飛んでいた。パパパッと細かな爆発がザガンのエグゾギアに生じ、彼は宙でその身を翻すことに成功。そして――
パッ、パパパッ! 再び噴火を小刻みに繰り返し、宙に居る間にザガンが放ったのは回し蹴り。足に埋め込まれた宝石から生じた碧い障壁が蹴りを放つ彼の右脚を覆い、保護と威力増加を図る。更に足裏の噴射口から火を噴き、蹴りに加速を加えるとそれは振り返らんとしたシュテンの顔面を捉える。
ぐしゃり――と鈍い音を奏で、瞬間硬化したシュテンのエグゾギアはしかし宙を舞い手足をなげうちながら地面へと墜落。強かに叩き付けられる。その重量に蹴りの威力が加わり、地に墜ちたシュテンの身体は地面にめり込んでいた。
片や着地を成功させ、シュテンと立場交代。斎屋を背負いながら彼を見たザガンはエグゾギアの双眸を碧く輝かせながら告げる。
「……野郎衆闘法エグゾギア流――飛竜爆蹴」
とでも言おうか――一回転し地面に顔面から沈んだシュテンが、突いた両手で身体をそこから引き剥がす様子を彼は見ながら一人呟く。単なる回し蹴りにエグゾギアの機能を加えた、空中殺法。即興であった!
「やったァ! ザッガーンッ、そのチョーシっ」
元より拳闘に優れるザガン。彼の華麗軽やか、そしてエグゾギアの爆炎が華やかでど派手なその一撃にぞわぞわと肌を粟立たせたバジラが堪らずに歓声を挙げその場で跳び跳ねる。
「確かに、効いたァ……超鋼を纏い受ける痛みはなかなか堪えおるわ」
地面をひっくり返し遂に立ち上がったシュテンは唸り声を挙げつつ首をさすり、左右に傾けたりしながらもどうやら大事には到っていないらしく綽々と言う。
それを前にし悠然とした立ち姿で居たザガンは右拳を引き左の掌を突き出した独特の構えを取り、自らの渾身の一撃がその言葉とは裏腹にまるで堪えていない様に見える彼に驚きながらも平静を保つと言った。それが
「ムフフフ……無論! 其方も既に理解出来ておろう!?」
ここからが本番――シュテンが咆え、握り締めた拳で両脇を締めると渾身に力を込めた。すると見る間に彼のエグゾギアの朱が濃くなり、全体にエネルギーの伝達される光が忙しなく行き来し始める。
そして気合いの咆哮と共に展開した頬当ての“口”から大量の排気を行った後、掲げた彼の両腕、その肘がさく裂し前腕が上腕より分離し飛翔した。
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