第12話
――
超硬にして超柔! 超鋼にて編まれた綱に繋がれながら、朱色の光に似た火を噴き飛翔したシュテンが二本の前腕部は彼の左右上空に停滞し、同じ光を灯したそれぞれの五指を驚愕に動きの止まったザガンへと向けた。
「照射光! 発っ」
「――!?」
シュテンの叫ぶ掛け声と共にザガンがその身を捻るようにしながら跳ねる。刹那、宙に浮いたシュテンの両手の指から十本の光芒が迸り、ザガンはそれの合間を縫うようにして辛うじて回避に成功する。彼の纏うエグゾギアが危険を知らせたのである!!
半ば無意識に、危機感のみが反応して動いたザガンであり、遅れ馳せながらその目で見た光景に驚きを露わにする。シュテンが放った光線はザガンのエグゾギアの超鋼を掠めるとそこを赤熱せしめ、地面に直撃すると土を沸騰させた。建物へと命中した光線は木造であるそれを瞬く間に炎上させてしまう。
「バジラ!」
「ガッテン! みんな……!」
着地をし、光線が掠めた己が脇腹を見る。少なくとも直撃しなければ大事には到らぬと考えたザガン。すると彼は視線を、シュテンの変貌にぽかんと呆けているバジラに向け叫ぶ。
彼の声にはっと我にかえり同時に彼の意図を汲んだ彼女は、二人の闘争が生む闘気の余波に当てられ動けずに居る里の人々の元に駆け寄ると、女衆に子供らを連れて避難するよう指示し若衆らには火の手の始末をと皆の指揮をとり始めた。
「ムハハ! 良い判断だが、他所に気を配る余裕があるかな!?」
「くっ……」
ザガンが身構えると自由自在に空を駆けるシュテンの両腕が次々に光線や鋭翔爪の弾丸を放ち彼を攻め立てる。ザガンは踊らされるように地べたを飛び跳ね、迫り来る攻撃を躱すことで精一杯。それを見てシュテンは上機嫌に笑い声を挙げた。
未曾有の経験に戸惑うザガンであったが、困惑しながらも彼の眼はエグゾギアも合力し飛び回るシュテンの腕を確かに捕捉していた。そしてそこから放たれる神速の数々にも、エグゾギアが予め予想を立てて軌道を知らせてくれることを理解する。何より彼の頭は冴えていた!!
シュテンもまたエグゾギアの力を用い、ザガンの動きを予測し腕を操り射撃するのだが、攻撃は精々彼の超鋼を掠めるばかりで直撃できない事にもどかしさを覚えていた。
これがエグゾギアか――自らも繰るそれの超力に彼は戦慄と胸の高鳴りを覚える中、不意にザガンと目が合う。
「ムゥ!?」
そこだ――より確実な一撃をとシュテンが光刃を形成し、その両手でザガンを切り裂かんと差し向けた時、まるでその時を待っていたかのように両腕の超鋼で刃を受け止めそれを“いなした”ザガンの足元が爆ぜ、砲弾のような勢いで彼がシュテンへと突撃する。
「今の貴様は無防備!」
「――確かに!」
ザガンの指摘を否定しないシュテン。彼にぐんぐんとザガンが迫る。彼の構えた拳、その拳骨に鉄球が浮かび上がる。
――
彼の拳がシュテンのがら空きの胴体へと叩き付けられた時、そこに眩いばかりの輝きが溢れた。再びの白夜であった。
それに気付かないわけもなし、炎上する消火不可能な家屋の破壊に勤しんでいたバジラが振り返ると、そして彼女が見たものは煙を上げて地に沈んだザガンの姿であった。
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