最終話

「大昔にこの世をダメにしちゃうスゴい悪いものがあったの。ソレと戦ったのがエグゾギアとエグゾギアに選ばれし勇士たち。そして悪いのを封印して眠りについたのが、今はザガンのエグゾギア。碧羅白襖ってワケ」

「なるほど」

「ホント、わかった~?」


 なんとなくな――現在唯一となってしまった野郎衆ザガンは若衆を率いて破壊せざるを得なかった家屋の片付けに勤しむ傍ら、彼の後ろを付いて回るバジラの話を聞いていた。それは闘いになってもシュテンにエグゾギア・碧羅白碧を渡さなかった理由であった。


「きっとこれからも他のエグゾギアが襲いに来るんだから、今まで以上にがんばらないとねっ」

「心配無用」

「も~っ! ちょっとザガン!」


 そしてその件の碧羅白碧であるが、どうにも一度本格起動を果たすとその後はある程度までなら自律行動出来るらしく、試しにとザガンが廃材の撤去を命じるとそれは物言わずともその通りにし始めたのである。


 始めこそ次の取るべき行動が分からずに立ち往生することもあった碧羅白襖であったが、教えてやればすぐに覚え、疲れ知らずで力も凄まじいとおかげで片付けは大いに捗った。

 今もそれはザガン同様に角材を担ぎ移動している。ザガンが二つなのに対し碧羅白襖は倍の四つをだ。しかもその足取りはとても軽やか。


 興味津々に雛かの如くついて回る子供たちを引き連れるエグゾギアの姿が少し可笑しくて頬を綻ばせたザガンであるが、彼が唯一纏っている腰絹を掴んで引っ張るバジラに彼は振り返る。一緒に振り回された角材から逃れるべく、悲鳴を挙げたバジラはその場にしゃがみ込んだ。


「すまぬ。うっかりだ」

「も~っ!」

「なんにせよ、オレは負けぬ。野郎衆としての意地がある」


 それだけ? しゃがんだままそう言うザガンを見上げ、唇を尖らせたバシラが問う。

 夜が明け、血が流れ多くの命が失われた騒動の後とは思えぬほどの快晴。憎らしいほど清々しい青空をするとザガンは担いだ角材を地面に突きつつ見上げ、言った。


「お前も自慢したかろ?」


 そして次にバジラを見て微笑浮かべたザガン。バジラはそんな彼を前にして頬を赤らめながら両目を輝かせると、蛙か蝗虫ばったの様に飛び上がり伸ばした両腕を彼の首に巻き付け抱きつくのであった。


「ステキよ旦那様ダーリン♡」

「む……」


 よもやそう来るとは思っていなかったザガンはまともにバジラを受け止めたことで後ろに傾き倒れそうになってしまう。そしてそんな彼の背を支えたものがあった。


 裸の胸板に顔をすり寄せるバジラから視線を外し、己の背後へとそれを向けたザガンが見たのは倒れようとする彼を支える碧羅白襖。彼のエグゾギア、その碧き双眸。

 ザガンはしばし、自らを映すその両目を見詰めるとふと笑い、そしてぐっと握り締めた拳を秘めながら今一度の空を見た。


 ――来るなら来い、超鋼の勇士ども! 野郎衆頭領、このザガンが相手となる! エグゾギア・ザガンが!!

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異界の守人 ――エグゾギア・ザガン―― こたろうくん @kotaro

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