遥か遠くの1安打
@pengin4545
第1話 野球との出会い
テスト前日に勉強せずシューティングゲームで遊ぶ、篠木 徹(しのぎ とおる)は何かを求めていた。
「これもクリアか」
そう言うとクリアしたゲーム機を机に置いた。小学校の時からゲームに没頭、別に特にやりたい事も無く中学生2年の今までゲームに明け暮れる毎日、今日も1日が過ぎるだけ…のはずだった。
居間に行くと親が野球をテレビで観ている。野球もそうだが、徹はスポーツ全般が苦手である。
『打ったぁ!ホームランだぁ!流石はフィリップ選手!!』
ホームランなんて絶対に無理だ。そう思いながらも、今日は少しだけ野球に目を向ける事にした。
『さて、ユニティーズに点を取られた後の回、次は代打のルーキー井田村選手だ』
さっきの選手より華奢な選手。ルーキーという事は今シーズンから入った新人である。
「ギャンブラーズに随分と華奢な選手入ったなー。そんなんじゃユニティーズの神威打てないぞー!」
父親が言う神威はユニティーズの豪速球投手。中々打たれる投手ではない。
徹は不思議とこの対峙する井田村に興味を持った。何でなのかは自分にも分からない。
『神威投げた!井田村選手は空振り!!なんという無慈悲なストレート!』
テレビの実況が言うように無慈悲なストレートだ。まるで井田村のバットは当たる気がしない。次の球もストライクになり、井田村は追い込まれてしまった。
「まぁ、相手が悪いよなぁ」
徹は間違いなく打者は三振だと思っていた。この2球を見る限り、井田村は神威に全く合ってない。
『さぁ、神威の無慈悲な直球が放たれるぞー!投げたぁ!!』
徹が三振だろうと見ていたその時だった。井田村が振ったバットが神威の球を捉えた。
打球は凄く綺麗な線となり投手神威の横をすり抜けて行った。
井田村は安打を打つと代走を出された。
「凄い…凄く綺麗な線…」
徹は井田村のリプレイに釘付けになっていた。綺麗な線となった打球。その美しさに。
数分して、徹は部屋に戻った。一応であるが、勉強でもしようかと思っていたからだ。
「野球かぁ…俺には無理だな」
勉強しながら野球の事を少し考えていたが、やはり自分には無理だと改めて思っていたのだった。
〜翌日〜
試験は散々だった。勉強してないのだから仕方ないが。
家に帰ってゲームでもやろう。徹が帰ろうとすると、目の前に野球のボールが落ちている。近くにグラウンドあるし、返しに行っても良いか。
徹がグラウンドに行くとグラウンドで部員が1人練習していた。ピッチングの練習をしている。ポジションは投手だろうか。徹がグラウンドに入ると部員が徹に気付く。
「入部希望者!?」
部員が徹に近付くと徹は「違います」と否定した。部員はボールを受け取ると入部希望者じゃない事に落ち込んでしまった。
ただ、直後に部員はバットを持って徹に渡した。
「折角来てくれたんだし、ちょっと遊んで行かないか?僕はこのチームの投手でね。まだ部員も来ないし遊ぼうよ」
徹はバットを持つと打席に立つ。
「そういえば名前を聞いてなかったね。僕の名前は2年の我利野 勉(がりの つとむ)」
「2年の篠木徹」
まだ2人は知らなかった。この出会いがこのチームを大きく変える事に…
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