第2話 野球部って柄?
夏の青空広がるグラウンド、勉は徹に振りかぶった。
放たれたボールは110キロのストレート。コースは厳しくない。
カキィン!と音がすると、ボールは後ろに飛んでいく。
ファールボール。徹は勉のボールに当たる事が出来た。
「野球やった事があるのかい?」
勉は徹に問う。
「いいや、全然スポーツは苦手だ」
再び勉は振りかぶって投げる。ボールはさっきよりも遅い。
徹は野球に詳しくないが、ボールの回転を見て、さっきとは違うと感じていた。
その予感通り、ボールはさっきとは違う軌道を描いてる。カーブだ。
カキィン!またしても徹はボールを打った。ただ、ボールは徹の前には飛ばない。
勉は驚いていた。見る限り素人、運動も出来なさそう。次の1球はどうしようか、これが実戦ならば2ストライクと追い込んだ状況。ただ、これは1打席勝負ではない。相手は完全なる野球素人。野球部が素人相手に本気で投げるべきか。
勉の葛藤を徹も感じていた。何かは分からないが、迷っている事は分かる。
「俺は素人何だから気にしなくて良くない?どうせ打てないんだしさ。折角だし、見せてよ野球部の投手ってのをさ」
徹は構えを取る。勉は少し考えた後に振りかぶった。自分でも大人気ないのは分かっている。それでも投げてみたかった。渾身のストレートを。
勉からストレートが放たれた。流石は野球部のストレート、これには徹もお手上げだった。とりあえず、バットだけでも出そう。徹も一か八かだった。
キィン!バットはボールに当たったが、打球は真横に向かって飛んで行く。
徹は昨日の井田村選手のような打球を打ちたいのだが、打球は簡単に前に飛ばない。3球投げられて3球当てた。徹は意外と才能が自分にあるのではないかと思い始めていた。前には飛んでいないが。
勉は今のボールを当てられて考えていた。一体何で徹から空振りを取ろうかと。カーブとストレートが勉の持ち玉であり、徹には全てのボールを当てられた。前には飛んでないが。
徹がファウルで粘っている訳ではない事は勉にも分かっている。勉は考えをまとめるとプレートを踏んだ。
すると、そこへ声が掛かる。
「そこまでですよ我利野君」
勉を読んだのは家庭科の先生である佐々木(ささき)だ。野球部の顧問ではないが、度々野球部の様子を見に来ている。
「なんで佐々木先生が!?今、関係ないでしょう?」
勉は何故止められたのか訳が分からない。すると、佐々木は勉の所に行って肩を叩く。
「ウォーミングアップが不十分ですよ我利野君。全てのボールにキレが感じられません。もう少しウォーミングアップをしっかりしたらどうです?グラウンド20周しましょう」
顧問でもないのに何て事を…と思いながらも勉はグラウンドを走り始めた。
「さて、篠木君。君のバッティグも初心者にしては素晴らしいものでしたよ。野球部のエースのボールをあそこまで当てるとは中々です」
佐々木はそう言うと徹の肩を軽く叩く。
「私は篠木君に野球の才能を感じました。篠木君次第ですが、野球をやってみて良いかもしれませんね」
徹は少し考えますと言いグラウンドを後にした。
「おーい、篠木!また来いよー!」勉がそう言うも徹は振り返らなかった。自分に野球なんて考えた事も無かった。運動もまるでダメな自分に野球なんて…徹は困惑したまま家に帰宅した。
家に帰っていつものゲームをする。ただ、バットを振った後なのかしばらくすると腕が痛くなった。これ以上は腕が痛くなるので、ゲームはやめる事にした。
居間に行くと親は今日も野球を見ている。野球なんて柄じゃない。自分には合わない。徹は親と今日のグラウンドでの話をした。
親は徹が野球?と最初は驚いている様子だったが、家庭科の先生が野球をした方が良い事を話すと「じゃあ野球をしたら良いじゃない」と徹の背中を押した。
徹はまだ悩んでいた。俺が野球?と。
〜翌日〜
勉がグラウンドで練習していると徹がグラウンドに入って来た。
「入部希望だ、俺が入らないとストーリーが進まない」
徹のストーリーという言葉に困惑しつつも、勉は徹を歓迎した。
「ようこそ篠木君、我が野球部へ」
こうして、徹の野球部生活が始まる事になった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます