第12話 反撃の始まり

桐ヶ谷を抑え波に乗りたい白鳥だったが、渡辺は次の回もしっかり抑え、流れを白鳥に渡さない完璧な投球を見せる。


一方、白鳥の守備は氷河神とポジションを交代した勉が再びマウンドに上がり、ヒットを何本か許すも鳳凰打線をしっかり抑える。


お互いに点が取れない中で迎えた最終回の7回表。桐ヶ谷の打順を迎えたところで、大鎌監督は外野守備に入っていた氷河神と勉の守備位置を交換した。


「流石に次は負けないよ〜。ここを打って白鳥に勝たないとね〜。油断は無しだぞ〜」


桐ヶ谷はマウンドの氷河神にバットを向けて宣言した。


氷河神は桐ヶ谷を睨むと投球に入る。氷河神の初球は低めへのカーブ。桐ヶ谷は思い切りバットを振る。打球はファールゾーンに飛んでいった。


氷河神は審判からボールを受け取るとすぐに投球に入る。次に放たれたのは内角へのストレート。桐ヶ谷は思い切りバットを振るも打球はファールになる。


「カーブもストレートも当てたよ〜。次なんてあるの〜?」


桐ヶ谷の発言に「次で終わるから安心しやがれ」と氷河神は投球に入ろうとしたが、捕手の統がマウンドに行き、氷河神に何かを伝える。


仕切り直して次のボール。桐ヶ谷は次のボールは外へ逃げるボールと予想していた。


その中で放たれた3球目。ボールは桐ヶ谷の予想通り外に逃げるカーブボールだった。桐ヶ谷は完全に読んでいた。いつも渡辺が投げる決め球を捕っている桐ヶ谷にとっては氷河神のボールはいつもよりも遥かに打ちやすかっただろう。


球速も渡辺の方が上だっただろう。


ただ、氷河神が今投げたボールは桐ヶ谷の想像を超えていた。ボールはバットを大きく避け、大きく外れたボールは統が全力で抑えた。


「ストライク!バッターアウトォ!」


この試合で初の三振に桐ヶ谷は怒りとも驚きとも言えない表情をしている。ただ、桐ヶ谷は分かっていた。自分の慢心と実力で氷河神に負けたと。


氷河神は最後のボールはプレートギリギリに立ち、自分の中でのギリギリまで角度を付けていた。渡辺も同じようなボールを投げるが、氷河神のように曲がる事は無かった。


ボールの変化は氷河神の方が上だった…実力を見誤ってしまったのだ。


一方の白鳥バッテリーは前の打席からこの決め球を思い描いていた。前の打席では、最終打席に桐ヶ谷を打ち取るために、この打席を次にどう繋げるかをマウンドで確認。そして、最後のボールはどの位置に、どのコースに投げるかの確認。この勝負は氷河神、統の作戦勝ちだった。


桐ヶ谷はベンチに帰って行く。まだ負けた訳ではない。この最終回で2点を取られない限り負ける事は無いのだから。


次の白鳥のトップバッターは徹。


最終回裏の攻撃が始まった。

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