第4話 憧れ
監督に補欠宣告をされて以降、徹はひたすらに走り、守備やキャッチボールの練習をした。
スローイングも安定し、ボールを前ほどは落とさなくなっていた。
しかし、打撃は相変わらず当たるが、前に飛ばない状態が続いた。
「みんな集合よん!今週の土曜日に練習試合をするわぁん!相手は黒鳥(こくちょう)中学校よ」
この学校の名前は白鳥(はくちょう)中学校。名前の通りライバル関係の学校だ。
「これがオーダーよん、氷河神ちゃんと篠木ちゃんは補欠ね!」
初の練習試合、徹には出場機会があるのだろうか、そもそも野球初心者なので、ルールを覚えなければならない。最近は野球の中継を見てるが、間近で試合を見るのは徹には初めてである。
〜翌日〜
白鳥中学校と黒鳥中学校の試合が始まった。試合は勉が黒鳥を抑えるも、白鳥打線は黒鳥の投手を打てず、お互いに0が続いた。
迎えた最終回。
白鳥打線は黒鳥から1点も奪えずに回を終えた。
「キーッ!全く打てないわー!!貧打よ!貧打!こんなんで新人ちゃん出せないわ!」
監督がベンチで怒っているが、徹から見て黒鳥の投手は初心者の徹から見ても手強いように見える。勉よりもストレートが速く、カーブも曲がっている。勉で練習している白鳥打線が打てないのも仕方ない。
そのような分析をベンチで徹がしていると、大きな打球音が鳴り響き、放物線を描いた打球が白鳥中学校のフェンスを越えた。
サヨナラホームラン。
この試合は0-1で白鳥は負けてしまった。
「次は負けないんだからぁ!もおおおう!悔しいわああ!!」
ベンチで狂う監督を他所に部員は片付けをしている。特に試合後のミーティングは行われず徹も部員も帰宅した。
徹が家に帰るとユニティーズの試合が中継されていた。見るとユニティーズが滅多打ちにされており、3回時点で3-12と大きくリードされている。
「ユニティーズもこんなルーキーに散々だね」
テレビには井田村が出ている。デビューから打席数は少ないものの、打率8割と全く凡退していない。
今日も井田村は2打席中2安打、打席のリプレイを見ても鋭く美しい線となるヒットを放っている。
「こいつの凄い所は中々簡単に凡退しないんだよな、安打打つまでタイミング合わなくても粘れるんだ」
親が言うように井田村はどんな相手でもファウルで粘りヒットを打っていた。この打席もユニティーズの投手の厳しいボールをファウルにし、綺麗なヒットを放ってみせた。
凄い…徹は自分で野球をしてプロ選手の凄さを感じていた。そして、改めて自分も井田村選手のように綺麗なヒットを打ちたいと願うのであった。
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