第5話 補欠
ある日の朝、学校の周りを徹は走り込んでいた。ただ、表情は渋い。
〜それは数日前の話〜
徹がグラウンドの横で素振りをしていると、佐々木先生が徹に声を掛けて来た。ここ最近の調子を佐々木先生に話すと佐々木先生は何かを閃いた様子でこう言った。
「君に今必要なのはランニングですね。打撃練習も大事ですが、ランニングが必要です。ベースを走るにも試合で戦うにも必要なのは体力です。下半身を鍛える事は打撃にも繋がります」
一体、あの先生は野球部の監督じゃないのに何なんだろうか。徹は嫌だったが、仕方なくもランニングをする事にした。
「クッソ!俺がやりたいのは!!綺麗なヒットを打つ野球だっての!!」
徹は朝の空に向かって叫んだ。
そして、ランニングを始めて1週間が経った。徹は監督から球拾いを命じられており、好きな打撃を中々出来ないでいた。たまの全体練習も外野の守備練習のみ。
おかげで、キャッチボールに慣れたのもあるが、前よりボールを落とさない。それどころか、落下地点までどの選手よりも正確に入ってボールを捕っている。
「あのボーヤ、守備は中々出来るみたいね。今度、守備固めとして使おうかしら」
監督は徹の守備を少しであるが、認めつつあった。
「みんな集合よん!」
監督が部員を呼ぶ。再び黒鳥中学校と練習試合をするようだ。
「スタメンは前回と同じよ!篠木ちゃん!アナタは守備要員で使うから準備してなさい!」
守備要員かよ!?と思いながらも試合に出れるだけマシかと徹は思った。
ところが、次の試合でも徹の出番は無く、練習試合では黒鳥に敗れた。
更に練習試合が4試合続くも、全試合負け。
負け続きの中で秋の大会間近となった。
「次こそ勝つわよ!!また黒鳥と練習試合を組んで来たわ!!」
部員もやる気が無い。勝てないのが分かってる。更に言えば、別にそこまでチーム全体が勝ちたいとも思っていないからだ。
「スタメンはいつも通りよ!みんなアタシに勝ちを頂戴!!」
〜こうして迎えた練習試合当日〜
グラウンドには佐々木先生が立っていた。
「えー、今日は大鎌監督は体調不良という事で私が監督代行になりました。皆さんよろしくお願いします」
絶対酒のせいだ。部員はそれぞれそう思ったが、言わなかった。
「スタメンですが、私が指揮をするので再度オーダーを変えさせて頂きます」
佐々木はそう言うと徹の所に向かった。
「篠木君、ランニングは継続しましたね?」
やる気無く返事をすると佐々木は笑った。
「篠木君、君は1番ライトで試合に出てもらいます」
部員からはざわめきが起きる。
「ここ最近は負け続きですからね。何かを変えないとこのチームは勝てないでしょうし」
佐々木先生は徹の肩をポンと叩く。
「期待してますよ、篠木君」
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