かつて人形と呼ばれた少女と全てを失いかけた男の運命の物語

 殺戮人形と呼ばれる兵器として育てられた二十人の少年少女たち。
 彼らを率いる一番——アインスと呼ばれた少女は一人の男と出会い、与えられた変化を受け入れることで、やがてその運命を自らの手で変えていく——。

 当初はコミカルなキャラクターに見えたニーダルが、実のところ背負う重く暗い陰。重い過去を背負う彼だからこそか、全てを受けとめてしまうその大きな器に救われていくロゼットと、その弟妹たちが「人形」から人の心を取り戻していくその姿に胸を打たれます。
 やがて、そうして救われた彼女たちの存在こそがニーダル自身をも救う鍵となっていくという。

 息も詰まるような迫真の戦闘シーンの中でも、格好いいのにどこか軽みと大人の余裕を失わないニーダル。離れた場所で必死に戦い抜くロゼットたちと、冷徹な敵役たちのわずかに見せる情。

 現実世界を映すかのような理不尽な世界の中で、それでも圧倒的な力と想いでその理不尽さを吹き飛ばし、満身創痍になっても大切な物を掴み取ろうとする彼らの姿は最高に格好良かったです。

 そして、ラストはまごうかたなきハッピーエンド!

 悪徳貴族のヒロインたちとは対照的に、ぺったんこだのまったいらだのシャープだのどうにも辛いロゼットさんの描写はきっと作者さまの愛情の裏返しかな、なんて……!

 そんなところも含めて、登場人物たちが愛しくて仕方がなくなる素敵な物語でした。

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