『心』を失くした者たちの、戦いと治癒の物語

 ――戦いの道具として、心を持つことを許されなかった『人形』たち。
 ――遠い昔、人としての心を奪われ、残りカスのようになってしまった男。

 その『心』を失くした者たちが出会い、触れ合って、残酷な現実と戦いながら、徐々に人としての感情と心を取り戻していく治癒の物語です。

 練り込まれた世界観と、人物たちが置かれている厳しい状況が、読む側により現実味と臨場感を与えてくれます。

 また、重い背景にも関わらず、脛に傷を持った者たちが自分たちなりの幸せと、安息を求めて、それぞれの目的のもとに戦っていく……その過程を見守るのは、微笑ましくも暖かい気持ちにさせてくれます。

 そして話の構成的にも、ただ暗い、ただシリアスなだけでなく、所々配置された笑いを取る場面が適度に緊張を緩めてくれていて、いい緩急をつけて飽きずに読み進めることができる物語だと思います。

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