第七章 ヒメオコゼ

 ルイス警部は先に突入して、ルイス警部の上司の部下は、指示通り、ルイス警部の後から突入すると、自分の小型のライフルのH&KのMP7A1を自分が目視した物に、向かって構え、そして急いで大きな柱に隠れた。ルイス警部とルイス警部の上司の部下は、工場内に入ると直ぐに、海の潮の香りが部屋中に充満しているのが分かった。そして部屋の中には、魚が大量に籠の中に入っているのが良く分かり、その籠の中にある魚は鱗や内臓、そして棘などを取り除かれている状態で、山積みにされているのであった。部屋の中は、海水やら水道水やらで水浸しになっている状態で、長靴じゃないと歩き辛い様な具合いであって、床が滑り易くなっていた。部屋の中をより観察すると、魚の鱗や内臓、そして棘を取り除くまな板がいくつもあり、魚の大きさで選別する機材などや加工された魚の保存の為の急速な冷凍を行う機材があった。ルイス警部は、自分のライフルのH&KのMP5SD6を大きな物陰に遭遇する度に、隠れている所に人がいないか構えた。ルイス警部の上司の部下は、ルイス警部の後に、少しばかり遅れながらも懸命について来た。ルイス警部は、見る限り魚でいっぱいだなと、心の中でつぶやいた。部屋の中を半分程進んだ丁度その時に、工場案内図の看板に、上の階に加工食品の検査室があるという表示があるのが目に入って来た。ルイス警部は、探し物を見つけた様な表情で、ルイス警部の上司の部下に「おい、この看板を見てくれ、上の階に検査室があるとあるぞ。検査室なら色々な薬品や魚から抽出した物、例えばヒメオコゼの棘の毒を保存できる様な設備が整っている筈だ。直ぐに上の階へ向かおう、でも慎重に行動しなければならない、良いな。それにしても人影が無いなぁ」といった。ルイス警部の上司の部下は、滝の様な汗を拭いながら、ルイス警部に「了解です、検査室があるというだけでも逮捕が出来ると良いんですがね、それからヘマを踏まない様に気を付けます」といった。ルイス警部とルイス警部の上司の部下が、部屋のもう半分まで来た所で、上の階に行く為のエレベーターと階段があるのが分かった、上には検査室と事務所があるという表示の看板が、階段の横にあるのが見てとれた。ルイス警部は、声を押し殺して、ルイス警部の上司の部下に「この工場は二階建ての様だ、上の階までで終わりになっている。犯人たちか犯人一人だけが居るのは二階になると思われる。一階には人っ子一人いないからな、これから二階に向かう、犯人の攻撃に備えるんだ、良いな」といった。ルイス警部の上司の部下は、今置かれている状況に、少し慣れて来た様子で、平静な調子が少し窺えた。そしてルイス警部の上司の部下は、ルイス警部に「分かりました、援護は任せて下さい。力いっぱい頑張ります」といった。ルイス警部とルイス警部の上司の部下の二人は、二階への階段を上り、そして二階の通路に差し掛かった所で、二人は人の声が聞こえて来るのが分かった。その声はいくつも聞こえて来て、声の主は一人で居るのでは無く、複数の人物が二階に居るというのが容易な推測であると思わせた。ルイス警部は、ルイス警部の上司の部下に向かって、人差し指を口に持って行き、音を立てない様に指示を出した。ルイス警部は、通路に沿って歩き、部屋の扉が見えて来ると、その扉のドアノブを回して、扉を開けて持っているライフルを構えた。しかし開けた扉の中に犯人たちは居なかった、ルイス警部は、自分の後ろについて来ているルイス警部の上司の部下を、今確かめた部屋の中へと入る様に指示をして、部屋のドアを閉めた。するとルイス警部は、ルイス警部の上司の部下に「この奥の大きな部屋からいくつもの声が聞こえる、恐らく何人もの人が居ると思われる。もし相手が発砲して来たら躊躇わずライフルを撃つんだ、良いな」といった。ルイス警部の上司の部下は、コクリと頷いた。ルイス警部とルイス警部の上司の部下は、今身を潜めた部屋から出ると、奥の部屋へと目指した。二人はどんどん進んで行き、奥の大きな部屋の直ぐ傍に検査室があるのが分かった。ルイス警部は、検査室の部屋の窓越しから中を覗いて見た、すると何やら新しく培養されている試験管が何本か見えた。ルイス警部は、恐らくヒメオコゼの毒を抽出した物だろうと考えた。ルイス警部は、嬉しそうな表情で、ルイス警部の上司の部下に「この検査室を見てみるんだ、これは大きな手掛かりじゃないかな」といって、肩を軽く叩いた。ルイス警部の上司の部下は、ルイス警部の表情に影響されたのか嬉しそうな表情で顔が緩んで、ルイス警部に「どれですか?ああ、見えましたよ、ええ、その様ですね。これは大したものだ」といって、最後の言葉の語尾が少し跳ね上がって、大きな声を出しそうになった。ルイス警部は、直ぐに手をルイス警部の上司の部下の口に押し当てて黙らせた。ルイス警部は、低い声でたしなる様な口調で、ルイス警部の上司の部下に「駄目じゃないか、大声を出したら、犯人に気付かれたら、逃げ切られるか発砲されるかだぞ。注意してくれよな」といって、奥の大きな部屋に向かって再び進み出した。少しして大きな部屋が事務所であるという看板が見えて来た。ルイス警部は、低い姿勢で大きな部屋の扉に備え付けてある窓から中を覗いた、するとその中には三人の人が居て、トランプをしているのが目に入って来た。その三人の人物は恐らく、ポーカーをしている所であろうと思われた。ルイス警部は、予想していた通りだったので、思わずその場で大きな笑い声を出しそうになる所であった。ルイス警部は、口元に薄っすらと微笑を浮かべながら、ルイス警部の上司の部下に「これからこの部屋に突入する、用意は良いな…相手の攻撃に素早く対応するんだ」といって、頷いて見せた。大きな部屋の中に居る三人の男たちは、どの男もワイシャツの上に灰色のベストを着ていて、灰色のズボンで、ワインレッド色のネクタイを付けているスーツ姿で、上着のジャケットは使用していない机に、放り投げだされている、靴は黒色の革靴だ。そして自分たちの座っている椅子にライフルを立てかけていて、ピストルはホルスターで肩から吊るして、直ぐにでも発砲出来る様にしてある様だ。彼らが持っているライフルは、H&KのMP5K PDWかSTEYR-HCのどちらかで、そしてピストルの方は、H&KのカスタムP7M13(H&K P7M13の銃口を長くした物)かH&KのUSPをホルスターにしまっているのだ。ルイス警部は、これはもしかすると彼らと交戦状態に陥るかも知れないと思った、そしてルイス警部の上司の部下に務まるかどうかを自分に対して質問を投げかけた。彼は、今回が初めての銃撃戦になる、そんな状態なのに三人を相手に戦えるか?…仕方が無い、僕が足りない分の戦力を補えば良いんだ…そうだ!と心の中でつぶやいた。ルイス警部は、顔が険しくなって緊張が走って脈を打っている表情で、ルイス警部の上司の部下に「それでは行くぞ」といった。ルイス警部の上司の部下は、大きく目を見開きながら、ルイス警部に「はい、任せて下さい」といった。ルイス警部は、ライフルのH&KのMP5SD6を構えながら、大きな部屋の扉を開けて、三人の男たちに「我々は法執行機関の特別捜査官の者だ、直ぐに手を見える所に出して、そのまま我々が手錠をするまで動くな、分かったか?」といって、直ぐに部屋の中へと入って行った。その後にルイス警部の上司の部下が小型のライフルのH&KのMP7A1を三人に照準を合わせながら、ゆっくりと部屋の中へと入った。しかし三人の男たちは、無言のままその場に立ち、何の返答も無しという具合だ。部屋の中は事務仕事に使うテーブルがいくつもあり、その上には、大量の紙や文房具が無造作に置かれていた。三人の男たちは、丁度部屋の真ん中辺りに居る様であった。ルイス警部が、ゆっくり三人の男たちに近づいて行く、そして立ち止まると、丁度そのタイミングにルイス警部の上司の部下が、震えながら小型ライフルを構えて、ルイス警部を追い越して行った。するとその状況を見て、ルイス警部の上司の部下がまだまだ戦闘経験が無いのが分かったみたいで、三人の男たちは、自分たちが席に着いていたテーブルをひっくり返し、ライフルのH&KのMP5K PDWかSTEYR-HCを掴みとり、ダダダダと発砲してきた。三人の男たちの一人が、ライフルを連射して体が振動で震えながら、ルイス警部とルイス警部の上司の部下に「何が法執行機関だ、特別捜査官だ、そんな物に邪魔されてたまるか、ここから大人しく立ち去るんだ」といった。そして三人の男たちの二人目が、威勢よく、ルイス警部とルイス警部の上司の部下に「そうだ、その通りだ覚悟しろ、俺たちは世の中を正しくする為に、やっているんだ。それなのにまるで、俺たちが犯罪者の様な言い方をして、許さないぞ、これでも食らえ」といって、ライフルを連射して来た。ルイス警部は、慌ててルイス警部の上司の部下の首の後ろを掴み、傍に置いてあった机の下に隠れさせて、ルイス警部の上司の部下に「危ない所だったんだぞ、僕の前に来ては駄目だ、君は銃撃戦の経験が無いだろ、だから君は、僕の後ろに居るのが安全なんだ、訓練の時を思い出すんだ、戦力的に乏しい傷付いた仲間を、前面に押し出さないだろ。そこまで戦力にならない訳じゃないにしても、君は戦いに慣れていないんだ、良いな」といった。ルイス警部の上司の部下は、小型ライフルを抱きしめながら、目には薄っすらと涙を溜めて、ルイス警部に「うん…分かりました」といった。ルイス警部とルイス警部の上司の部下が、隠れている机は、彼ら二人をすっかり隠していて、その上この机は金属で出来ている為に、三人の男たちの放つ銃弾を、易々と突き抜けさせるのでは無く弾いた。ルイス警部は、机に隠れながら、上体を起こし、ルイス警部の上司の部下も引っ張り上げて上体を起こした。そしてルイス警部は、低い太い声で囁く様に、ルイス警部の上司の部下に「良いか、僕があの三人の男たちに向かって狙撃する間、君はこの場から援護射撃をしてくれ、完全に仕留めるのでは無く、相手の肩や足や腕を狙ったりして、戦闘不能状態に持ち込むんだ。良いな?大丈夫か?」といった。ルイス警部の上司の部下は、ルイス警部に「了解…」といって、自分の小型のライフルの調子を確かめた。ルイス警部は、ルイス警部の上司の部下に「それじゃあ、行くぞ、反撃開始だ」といった。ルイス警部の上司の部下は、息を深く吸い込み、吐いて、その為に肺が大きく膨らみまた萎みながら、ルイス警部に頷いて見せた。ルイス警部は、隠れている机からライフルのH&KのMP5SD6と顔だけを出して、ライフルを単発から連射出来る様に切り替えて、ストトトトと三人の男たちに向かって弾を撃ち込んだ、三人の男たちの直ぐ傍をルイス警部が撃ち込んだ弾がかすめた。ルイス警部のライフルは、サイレンサー機能付きなので、狙撃時の音が単発の場合はストストや連射の場合はストトトトとなるのだ。三人の男たちは「この野郎が何をするんだ、法執行機関だとか言って調子に乗りやがって、どうせ真面に捜査したりしていないんだ」と唸った。三人の男たちの一人は、自分のライフルのSTEYR-HCのカートリッジを新しい物に取り換えて、その間は残りの二人が自分たちのライフルをダダダダと発砲して来た。ルイス警部の上司の部下は、自分の小型ライフルを余所にして、足元に放り投げ、相手の放つ銃弾とその銃弾が立てる音に怯えながら、両手を耳に付けて「うわぁ、ああ」と叫んでいる。ルイス警部は、凄い形相で、ルイス警部の上司の部下に「君には援護射撃をする様に言っただろ、何をしているんだ。このままだとあの男たちに逃げられるか命を奪われるぞ、どうするんだ、やるのかそれとも潔く負けるのか?どっちだ?答えてくれ!」といって、肩を掴んで左右に揺らした。ルイス警部の上司の部下は、目を瞑ったまま、ルイス警部に「どうしたも何も、こんな危ない仕事なんて夢にも思っていませんでしたよ、だから体が怖くて動かないんです、このままじっとしていて解決する策を練った方が良さそうです。ジョナサン警部」といった。ルイス警部は、困惑した表情で眉にしわを寄せながら、ルイス警部の上司の部下に「何を言っているんだ、相手は本物の悪党で、それに本物のライフルで、本物の銃弾を浴びせているんだ。このまま何もしないまま良い結果に終わる事なんか無いぞ、さあ勇気を振り絞って戦うんだ、悪党を捕まえる為に君は、今の仕事に就いたんだろ?どうなんだ?そうだろ?」といって、また肩を左右に揺らした。ルイス警部の上司の部下は、少しばかり黙り込んでから息を切らしながら、震える体を縦に振って、ルイス警部に頷いて見せた。ルイス警部は、さっきより表情が明るくなり自信に溢れた調子で、ルイス警部の上司の部下に「良しでは、今度はきっちりと援護を頼んだぞ、良いな」といって、直ぐにライフルを連射して弾を相手に撃ち込んだ。するとそのタイミングで、ルイス警部の上司の部下は、小型のライフルH&KのMP7A1で、ストト、ストトと弾を撃ち込んだ、それによって相手の三人の男たちは、どちらに気を配って発砲して良いかが分からなくなり、先程よりも狙いが定まらなくなった。ルイス警部は「これはしめたぞ」とつぶやいた。ルイス警部の上司の部下もまたサイレンサーを装着している小型ライフルなので、音がルイス警部と同じなのだ。ルイス警部は、ルイス警部の上司の部下が、狙撃している間に、自分のライフルを単発射撃に切り替えて、相手に狙撃しながら前へ前へと進みながら近づいて行った。ルイス警部は、ライフルのH&KのMP5SD6を相手の三人の男たちにスト、ストと単発で弾を撃ち込みながら、部屋の中に散在している机に隠れながら進んで行ったのだ。相手は、ルイス警部がだんだんと近づいて来るのが分かっているが、なす術が無い様で、ルイス警部が自分たちとの距離を、縮めて来るのに対してほぼ無抵抗状態で受けるしかなかった。ルイス警部は、机に身を隠しながら自分のライフルのカートリッジを取り換えて、机の下に背中をもたれさせながら、相手の攻撃が少しばかり止むのを待った。机の下は金属製の板で外部から足元が見えない様な造りになっていて、銃弾の盾には丁度良い具合いに、働いてくれた。ルイス警部の上司の部下は、上手い具合いに、援護射撃をしてくれている様であって、ルイス警部にとって、思ったよりも早く、反撃の機会が訪れた。ルイス警部は、再びライフルを単発射撃しながら、机のある所へと右往左往しながら、部屋の中を進み、机に隠れるとルイス警部の上司の部下の、援護射撃の具合いと自分のライフルの弾の具合いを確かめながら、机の上から顔を出したり、机の横から顔を出したりしながら相手に弾を撃ち込んだ。ルイス警部の上司の部下は、小型のライフルを二~三発連続して射撃しているが、ルイス警部は、弾の数を温存する戦い方を、英国海軍特殊部隊で学んでいて、なるべく一発ずつ射撃する、戦い方をしているのだ。相手は金属で出来ている物も平気で、銃弾を大量に浴びせていて、その銃弾が跳ね回っていて、何処に跳んでいくのか分からないという具合だ。大分相手の傍に来た、ルイス警部はさっと身を隠している机から顔とライフルを出して、三人の男たちの一人の肩と足に、ライフルでの射撃を一発ずつ命中させて、地面に倒れさせた。倒れた男は「うわぁ、くそ、弾が当たった」と叫んで身を捩った。三人の男たちの二人目が、倒れた男に「大丈夫か?こっちに来るんだ、さあ早く」といって、ライフルの攻撃を中断して、横を向いて倒れた男の肩に腕を回した。その機会をルイス警部は逃さなかった、相手の三人の男たちの二人が攻撃する事が出来なくなり、相手の一人だけが攻撃しているのだ。そしてルイス警部の上司の部下が、援護射撃をしているのだ、そっちに気を取られて、自分に対しては、注意を怠るだろうとルイス警部は確信した。ルイス警部は、隠れている机からちらっと様子を窺った、すると直ぐに、倒れた男に手を貸している二人目の男を捕えた、そしてライフルでスト、スト、ストと二人目の男の両肩と足に弾を撃ち込んで、その場で膝を付かせ地面に転がした。二人目の男は痛みに顔を歪めながら、残っている三人目の男に「くう、俺もやられた、お前は逃げるんだ」といって、力いっぱい腕を振り上げて、外に出る様に指差した。三人目の男は、物凄く動揺して、二の足を踏みながら、外へと向かおうとした。するとその時、ルイス警部のライフルが又もや微かな音を立てて、弾を発射した。その発射された弾は、三人目の男の両足と肩に一発ずつ命中して、三人目の男を、その場で崩れさせた。ルイス警部は勢い良く、机の陰から飛び出しながら、ルイス警部の上司の部下に「今だ、あの男たちを包囲するんだ、ライフルを構えたまま包囲するんだ、良いな」といって、駆け足で男たちの居る場所へと向かった。ルイス警部の上司の部下は、先程までの恐怖に怯える姿は無く、真剣な顔で、ルイス警部に「了解です、今行きます」といって、小型ライフルを構えたまま小走りでルイス警部の元へと向かった。ルイス警部は、三人の男たちの場所に到着すると、直ぐに相手の持っていた、今は地面に転がっているライフルを蹴って遠くへやり、三人の男たちに「動くな、そのままだ、今ホルスターに入っているピストルを取り出すからな、不審な動きをしてみろ、怪我をするぞ、良いか」といって、男たちのホルスターからピストルを奪い取った。ルイス警部の上司の部下は、ルイス警部がホルスターからピストルを取り上げる所で、丁度ルイス警部と合流した、そして三人の男たちに小型ライフルを向けて、ルイス警部の指示を待った。ルイス警部とルイス警部の上司の部下は、手際よく三人の男たちに手錠をかけて、作戦本部に応援要請と救急隊の要請をした。作戦本部への連絡を終えた間も無い時に、ルイス警部の上司の部下は生き生きとした表情で、ルイス警部に「次はどうします?今のうちにこの男たちに尋問をしますか?」といって、笑って見せた。ルイス警部は、自分のライフルのカートリッジを確かめて、弾の残りの数を確認しながら、ルイス警部の上司の部下に「そうだな、今のこの時間に出来る事といえば、彼らに話しを聴く事かも知れないな、でもまずは、さっき見た検査室の物を、確保する方が良いかも知れないな。そうだ、早速取り掛かろう」といった。ルイス警部の上司の部下は、合点がいったみたいで、頷きながら、ルイス警部に「分かりました、私が検査室の様子を見て来ましょうか?ジョナサン警部?」といった。ルイス警部は、ルイス警部の上司の部下に「いや、検査室の方は僕に任せてくれ、直ぐに行って来る、あの男たちの事を、少しばかり見ていてくれないか」といって、大きな部屋から出て行った。ルイス警部の上司の部下は、手錠をされている男たちに「良し、大人しくしているんだぞ、さもないとどうなっても知らないぞ、良いな」といった。手錠をされている男たちは黙り込んで、下を向いているだけだった。ルイス警部は、大きな部屋を出るなり、直ぐに検査室の部屋を見つけて中に入って行き、中に保管されているいくつもの試験管を手に取り「これだな、見つけたぞ、これはこれは、願っても無い手掛かりかも知れないな」とつぶやいた。ルイス警部の上司の部下は、手錠をされている男たちに、いろんな事を投げかけていた、とその時に何やら足音が聞こえて来た。ルイス警部の上司の部下は、その足音が聞こえて来た方向に「ジョナサン警部ですか?何か発見しましたか?どうです?」といった。しかし全く何も返事が無かった。ルイス警部の上司の部下は、小型ライフルを構えて、部屋の扉の方に近づいて行った。すると大きな部屋の正面の扉にはめ込まれているガラス窓から、ちらっと人影が見えた様な気がした。ルイス警部の上司の部下は、そのガラス窓から部屋の外を覗き込む様にして見た、とその時タン、タン、タンと銃声が聞こえたと思うと、その音と同じタイミングでガラス窓を砕き、部屋の中にある文房具などに当たり、当たった物を壊した。ルイス警部の上司の部下は、あたふたしながら近くにある机の下へと隠れて、小型ライフルを両腕で掴み、震えながら息を潜めた。そうこうしているとH&KのカスタムP7M13とH&KのUSPをそれぞれ一丁ずつ持った男が二人、持っているピストルを構えながら姿を現し、スーッと部屋の中に入って来た。恐らくその二人の男たちは、部屋の奥で手錠をされている男たちの仲間だとルイス警部の上司の部下は思った。部屋の中に入って来た二人の男たちは、砕けたガラスを踏み鳴らし、慎重に部屋の中を見回しながら、ルイス警部の上司の部下に「おい、居るのは分かっている、出て来い。今のうちに出て来た方が良いぞ、後から出て来ても命の保証はしない、良いか」といった。ルイス警部の上司の部下は、自分の小型ライフルのカートリッジを確かめて、二つ目のカートリッジに取り換えると、静かに這って、部屋の奥へと目指した。ピストルを構えたまま男たちは、ざっと見て人が隠れているかも知れない所に、ピストルをタン、タン、タンと発砲して、ルイス警部の上司の部下に「さあ、出て来い、早くするんだ」と叫んだ。少しばかり沈黙が続いた。ルイス警部の上司の部下はこの機会を良いぞ、しめたぞと思って、隠れている机から身を乗り出して、ピストルを構えている男たちに、小型のライフルでの連続射撃をストトトトとお見舞いした。ピストルを構えている男たちは、その小型ライフルでの射撃を、姿勢を低くして避けながら、自分たちも近くにあった机の下に隠れた。ピストルを構えている男たちの一人が、ピストルのカートリッジを取り換えながら、ルイス警部の上司の部下に「そうか、好戦的なんだな、ではそういう事でいいんだな?分かった、こちらもその様な気持ちで、挑む事にしよう」といった。ルイス警部の上司の部下は、呼吸と心臓の鼓動が速くなり、小型ライフルを握る手に力が目一杯入りながら、黙って相手の様子を窺った。暫くしてピストルを構えている男たちが、こちらに発砲してこない事が、不意に頭の中に浮かんだ。ルイス警部の上司の部下は、ゆっくりと警戒しながら、身を隠している机から辺りを覗いた。すると直ぐさまにピストルを構えている男たちが、発砲して来て、彼らの放つ銃弾がルイス警部の上司の部下の肩をかすめた。ルイス警部の上司の部下は、ピストルの弾が微かに当たった衝撃が体全体に伝わり、直ぐにしゃがみ込み、机にもたれかかった。そしてルイス警部の上司の部下は、慌てて弾が当たったと思われる部位を手で確かめて「ふう、良かった、減り込んでいないな、防弾ベストのお陰だな、命拾いしたなぁ」といった。ピストルを構えている男たちは、ルイス警部の上司の部下が、今引っ込んだ場所に、ゆっくりと近づいて行った。ルイス警部の上司の部下は、足音がゆっくり近づいて来るのが聞こえた、そしてこのままだと、仕留められてしまうと思い、小型ライフルを連続射撃して、部屋の後ろへと、後退して行った。その小型ライフルでの射撃は相手を仕留めるのでは無く、接近して来るのを遅らせるだけであった。ピストルを構えている男たちは、上手く小型ライフルの射撃をかわして、ルイス警部の上司の部下に「もうお終いだ、覚悟するんだ」と余裕の感じを漂わせながら叫んだ。ルイス警部の上司の部下は、数回の小型ライフルの連続射撃を行ったその時、小型ライフルからカチッと何かが詰まる様な嫌な音がした、すると急いで手に持っている小型ライフルを確かめた、それは弾切れの音であった。その光景を見ていたピストルを構えている男たちは、にやりにやりと歯を見せて笑い、ルイス警部の上司の部下に「言っただろ、もうお終いだと、分かったか?漸く状況が呑み込めたという事かな、どうだ?そうだろ」といって、ピストルをルイス警部の上司の部下に狙いを定めた。ルイス警部の上司の部下は、小型ライフルをこれでもかという程に、両腕で抱きしめて、目を目一杯に広げて相手を見た。丁度その時「いいか、妙な事を考えるな、君たちのどちらか一人は必ず仕留められるんだ、大人しくピストルを置くんだ、さもないとどちらかが怪我をする、いや命を落とす事になるかも知れないぞ、良いか?」とルイス警部の声が聞こえて来た。その言葉は、ルイス警部からピストルを構えている男たちへの言葉だった。ピストルを構えている男たちは、その場で苦虫を噛み潰した様な顔で、どうすれば良いか分からず、唯々身動きが取れなくなっていた。ルイス警部は、相手の両方に、どの様に照準を合わせれば、この場を切り抜けられるかを考えながら、ピストルを構えている男たちに「良し、こうしようじゃないか、二人ともピストルを置くんだ、僕たちもライフルとピストルを置く、それでどうだ?それで手を打たないか?」といった。少しばかり誰も一言も発せずに沈黙が続いた、それからピストルを構えている男たちの一人が、体が固まったまま、ルイス警部に「そうだな、そうする事にしよう、そうすれば誰も傷を負わずに済むという所だな、それで俺たちはどうすれば良いんだ?」といった。ルイス警部は、相手の動きに注意しながら、ピストルを構えている男たちに「一、ニ、三、で、みんなでライフルやピストルを相手から反らして、地面に置くのはどうだ?」といった。少ししてルイス警部が、合図をして、その場に居るみんなが、ライフルやピストルを地面に置いた。するとピストルを構えている男たちの一人が、ルイス警部に頭から突進をして、大きな部屋の側面に付いている扉ごと突き破り、地面に叩きつけた。扉は無残にも壊れ、その扉に付いている窓も砕けてガラスが飛び散った。そしてピストルを構えている男たちの二人目とルイス警部の上司の部下が、取っ組み合いになり、二人目の男は、サッと軍用ナイフを取り出し、サッ、サッとナイフを振り回して来た、ルイス警部の上司の部下は、相手の攻撃を避けながら、近くにあった花瓶を相手の隙を狙って頭に叩きつけた、相手は少しよろめきながら、こっちに近づいて来た。ルイス警部を地面に叩きつけた一人目の男は、ルイス警部に覆い被さりながら、二人目の男と同様に軍用ナイフをサッと取り出した、するとルイス警部は、一人目の男の顔に、右足で蹴りを食らわせて、相手が視界を遮られた所で、その場から上体を起こし、その状況から抜け出した。一人目の男は「うおっ」と呻き声を出して、後に体が反り返った。そして一人目の男は、顔に手を当てながら、ルイス警部に「よくもやりやがったな、この野郎」といった。ルイス警部は、手を構えて格闘する姿勢になりながら、一人目の男に「まだまだこれからが本番だ、覚悟するんだな」といった。一人目の男は、ナイフをルイス警部に、真直ぐに突き刺した、ルイス警部は、一人目の男のナイフを持っている手を自分の右手で払い除けて、相手の懐に入り、自分の右腕の肘で、相手のみぞおちに肘鉄を食らわせると、自分の右腕の甲で、相手の鼻に二回殴りつけて、相手のこめかみにパンチを食らわせた。相手は、今度は鼻を押さえて「くそ、こんな筈じゃないのに」といった。ルイス警部は、格闘姿勢をしながら「ふぅ、どうした?ナイフまで持っているのにこんなものか?」といった。一人目の男は、ナイフを向けながら、ルイス警部に「今の台詞を忘れるなよ、良いか?捜査官」といって、ナイフの刃を横に向けて切り付けて来た。ルイス警部は後ろに飛び退き、ナイフの攻撃を避けて、自分の右足で相手のナイフを持っている手に回し蹴りをすると、右足で相手の顔に蹴りを食らわせた。相手の一人目の男は、又しても後ろに体が反り返り、頭を後ろに投げ出して「ぐわっ」と呻き声を出した。ルイス警部は、最初と同じ様に格闘姿勢を保ちながら、相手の次なる攻撃に備えた。一人目の男は、首を横に振りながら、ルイス警部に「このまま終わると思うなよ、良いか」といって、ナイフの刃を斜めにして切り付けて来ると、次に刃を横にして振り回して来た。ルイス警部は、相手の二度目に振り上げて来たナイフを、自分の右腕をL字に曲げて、腕を相手の手首に当て、相手の攻撃を防ぐと、相手の右の横っ腹に自分の左手で二回パンチを食らわせ、相手の後ろに回り込み、相手の右膝の後ろに自分の左足で蹴りを入れ、相手が地面に右膝を付けると自分の左足の膝で、相手の頭に膝蹴りを食らわせた。相手は、ルイス警部の攻撃の衝撃で少しぼんやりとした表情を見せながら、地面に前のめりになった。一人目の男は、少し息を切らしながら、顔を上げてルイス警部に鋭い視線を投げた。そして一人目の男は、ルイス警部に「どんな気でいるのか、分かっているぞ、俺を倒した気でいるんだろ。そうだろ、そんなのは束の間の話しさ」といった。ルイス警部は、平静を保った口調で、一人目の男に「何度でも倒してやるさ、そして仲間と同じ様にその腕に手錠をかけてやる」といって、格闘姿勢をしながら、この男の周りをグルグル回っている。一、二分の沈黙の後に一人目の男は、その場から立ち上がり、持っているナイフの刃を下にする様に持ち替えて構えた。一人目の男は、ナイフの刃を向けながら、ぎゅっとナイフの柄を強く握りしめて、ルイス警部に「そんな事が言えるのは今のうちだぞ、この捜査官野郎が」といった。ルイス警部は、格闘姿勢に力を入れて、一人目の男に「準備はいつでも出来ている、さあ来い」といった。一人目の男は、ナイフの刃を下にして横に構え、右から左に切り付けて来た、ルイス警部は、その相手の一撃を避けて、相手のナイフを持っている腕を両手で掴み、その手を力を込めて回転させて、捩じ伏せて、ナイフを落させた。その後に、ルイス警部は、自分の左腕の肘で肘鉄を一人目の男の鼻に食らわせ、相手がよろめいた所に、相手の左右のこめかみに、自分の左右の手で一発ずつパンチを叩き込み、次にまた相手のみぞおちに自分の左右の手で一発ずつパンチを入れ、相手の左右のこめかみを自分の右足で蹴り飛ばすと、相手は「ぐわぁ、ああ」と叫びを上げて後ろへと倒れ込んだ。ルイス警部は、相手にパンチや蹴りを加えたのにも関わらず、少しばかりの準備運動程度の運動量にしかなっておらず、息も切らさずに、顔色一つ変えずにいた。そしてルイス警部は、地面に転がっている一人目の男に素早く後ろに手を組ませて手錠をかけて「勝負あったな、さあ大人しくするんだ」といった。二人目の男とルイス警部の上司の部下の方では、二人目の男が、ナイフをサッと振り回して、ルイス警部の上司の部下に向かって来た、ルイス警部の上司の部下は、近くにあった書類の本を掴み、その書類の本で、相手の攻撃を防いだ。その書類の本にザックリとナイフが刺さり、危うくルイス警部の上司の部下に突き刺さりそうになった、しかし彼は機転を利かせて、そのナイフの突き刺さった書類を横に引っ張り上げながら、相手を押し退けた。二人目の男は、ナイフを落して、後ろによろめいた、そして二人目の男は、落ちたナイフを拾おうとして地面に手を付いた。その情景を見てルイス警部の上司の部下は、近くにあった大きなセロハンテープ台を引っ掴み、又しても相手の頭に「ドカン」と音を出して叩きつけた。だが相手は、両手で頭を抱えたが直ぐに、ナイフを拾い上げて、ルイス警部の上司の部下の方に振り返って走って来た、ルイス警部の上司の部下は、大急ぎで小型ライフルのMP7A1の転がっている所へと走って行き、相手に向けて引き金を引いたがカチッと音がするだけで弾が発射されなかった。ルイス警部の上司の部下は、先程弾が切れてしまって、逃げ場が無かった事を思い出した、そして急いでMP7A1のカートリッジが転がっている所に向かって滑り込み、新しいカートリッジをMP7A1に慌てる手で装着しようと試みているが、なかなか上手くこの小型ライフルの本体に入らない、相手は容赦無くナイフを手に、向かって来ている、そんな時やっとの事で小型ライフルに、カートリッジがカチャンと音を立てて装填出来た。彼は、その小型ライフルを天井に向けてストトトと威嚇射撃をした、相手は、ナイフを手に勢い良く、走って来ていたのをピタッと止めて、その場で固まった。ルイス警部の上司の部下は、照準を合わせながら、二人目の男に「良いか、これ以上近づくな良いな、もし一歩でも近づいてみろ、忽ちハチの巣だぞ」といった。二人目の男は、静かに低い声で、ルイス警部の上司の部下に「お前は捜査官だ、そんな事出来っこないさ」といった。ルイス警部の上司の部下は、二人目の男に「足や腕ならどうだ?いつでも撃てるぞ、さあナイフを捨てて、遠くへ蹴るんだ、さあ直ぐにやるんだ」といった。二人目の男は、ルイス警部の上司の部下に、一瞥しながら、ナイフを地面に置いて、ゆっくりと蹴飛ばした。ルイス警部の上司の部下は、小型ライフルを構えながら、二人目の男に「そうだ、それで良い、次は腕を見える所に出して、地面に膝を付くんだ」といった。すると丁度その時ルイス警部が、二人目の男の後ろに来て、男に「ゆっくりと腕を後ろに組むんだ」といって、手錠をかけた。ルイス警部とルイス警部の上司の部下は、後から来た二人組みの男たちを、初めから大きな部屋にいた、男たちの居る場所に連れて行った、それから男たちが持っていたライフルやピストル、そしてナイフを男たちから離れた一か所に集めると、自分たちも先程地面に置いたライフルとピストルを拾い上げて再び装備して、カートリッジをカシャ、カシャンと音を立てながら確認した。

 暫くすると何やら警察車両や救急車のサイレンらしい音が聞こえて来た。ルイス警部は、窓越しに立ち外を窺った、すると思った通り法執行機関の者たちだが、自分たちの所属する捜査機関では無い事が分かった。ルイス警部は、急いだ様子で、ルイス警部の上司の部下に「どうやら、うちの機関の人間じゃない人たちが、先に到着するみたいだ、詳しい事は話すな、デンマーク政府からは内密に捜査する様に言われているんだ、良いな。もし困った事があったら僕に任せてくれればいい、僕の傍を離れるな」といって、溜め息をついた。ルイス警部の上司の部下は、ポカンとその場に立ち尽くして、ルイス警部に「はい、了解です。まあ次から次へと問題が舞い込んできますね」といった。ルイス警部は、軽く頷きながら、ルイス警部の上司の部下に「仕方無いさ、事件の捜査とはそういうものなんだよ」といった。少しして荒々しく階段を駆け上がって来る音が聞こえて来た、その音の主はデンマーク警察のSWAT部隊と何処かで見た事ある様な特殊部隊の連中だった。SWAT部隊とは、警察組織やそれに近い組織で、軍では無い特殊部隊の事である。デンマーク警察のSWAT部隊は、ライフルは、H&KのMP5A5のライト付きハンドガードに照準器を装着した物で、ピストルは、GLOCK17を装備している。それから防弾ベストを着ていて、ヘルメットを被っていて、特殊部隊用の黒い服装をしている。何処かで見た事ある様な特殊部隊は、ライフルは、SIG SG 553にライトとグリップと照準器を装着した物で、ピストルは、SIG SAUER P228を装備している。デンマーク警察のSWAT部隊と同様に防弾ベストを着ていて、ヘルメットを被っていて、同じ様な特殊部隊用の服装をしている。彼らは、H&KのMP5A5のライト付きハンドガードやSIG SG 553を構えて大きな部屋に入って来ると、ルイス警部とルイス警部の上司の部下の周りを取り囲んだ。それから彼らは、険しい顔をしながら、ルイス警部とルイス警部の上司の部下に「武器を捨てて、その場で手を見える位置に出しなさい。いいか言う通りにするんだ」といった。ルイス警部は、自分たちを取り囲んでいる特殊部隊に「今ライフルとピストルを置くから発砲しないでくれ、いいですか?直ぐ取り掛かりますから」といって、ライフルをゆっくりと置いて、ピストルもホルスターから引き抜いて地面に置いた。ルイス警部の上司の部下もルイス警部の後に続いてライフルやピストルをその場に置いた。そしてルイス警部は、特殊部隊に「僕は、法執行機関の者だ、特別捜査官のルイス・ジョナサンだ。それから僕の横に居るのも僕と同じ機関の特別捜査官だ、どうかライフルを下ろしてくれ」といった。特殊部隊は、あまり状況が呑み込めていないらしく、納得がいかないという顔をしながら、ルイス警部に「それが本当だという証拠は無いのか?うちの政府では特別捜査官などはいない筈だ、何処の機関だ、言ってみろ」といった。するとルイス警部は、ポケットにゆっくりと手を入れながら、特殊部隊に「今から僕の居る機関の連絡先を出すから、そこへ連絡してくれないか?そうすればお互い納得がいく筈さ。どうだい?それで手を打とうじゃないか」といった。一、二分の沈黙が続いた。特殊部隊は、まだ険しい顔のままで、ルイス警部に「何故、君の居る機関の事を話せ無いんだ?何か問題でもあるのか?」といった。ルイス警部は、慎重に言葉を選びながら、特殊部隊に「僕もそうしたいのだが、僕たちの活動は機密扱いな事がとても多くてね、それで詳しく話せ無いんだ。だからここの連絡先に問い合わせてくれ」といって、連絡先の書いてある名刺を渡した。特殊部隊の隊長が、慎重にその名刺を受け取り、眺めていると、急に聞き覚えのある声が、部屋の中に響いた。そしてその声の主が大きな部屋の中心に躍り出た、その男はルイス警部の上司だった。ルイス警部の上司は、穏やかな表情と口調で、特殊部隊に「まあ、まあ、みなさん。そう怖い顔をせずに聴いて下さい、このジョナサン特別捜査官と彼と一緒に居る男は、私の居る捜査機関に居ましてね、その捜査機関は、英国軍と英国の警察組織の協力下で編成された捜査機関なのです。その機関の名は英国特別捜査機関であります。そして補足説明なのですが、彼、ルイス・ジョナサン特別捜査官は、英国海軍での階級は、少佐で、英国の警察組織では警部なのです。彼と私たちは、今起こっている様な事件に、少しばかり詳しいのです、その事件とは美術品の盗難事件の事です。この事件の事は、ご存知でしょう?だからデンマーク政府に依頼されて私たちは内密に、事件を捜査していたのです、そこへあなたたちデンマーク警察とNCAが乗り込んで来たという所です。少し言葉が悪かったかも知れないがね、そういう事です。お分かりになりましたか?」といった。ルイス警部は、何処かで、見た事のある特殊部隊が、NCAの特殊部隊である事が、会話を聞いて思い出した。特殊部隊の隊長は、思い描いていた事と違い落胆した様子で、ルイス警部の上司に「分かりました、では念の為にデンマーク政府に問い合わせてみても、宜しいでしょうか?」といった。ルイス警部の上司は、顔に微笑みを浮かべて、特殊部隊の隊長に「大丈夫ですよ、分かって貰えると嬉しいのですが」といった。特殊部隊の隊長は、直ぐに持っている無線機で、警察署に連絡を入れて、デンマーク政府にルイス警部の上司から聴いた事を確かめてみた。暫くして、特殊部隊の隊長が、部下たちに「直ぐにライフルを下ろすんだ、彼らは我々の国の為に、他国から来た捜査官たちだという事みたいだ。みんな良いな、彼らは国際的密輸事件の犯人たちでは無いという事だ」といった。ルイス警部は、先程の特殊部隊の隊長の落胆した様子が、僕たちが国際的密輸事件の犯人たちだと思っていたのに違ったからであると、又もや会話から分かった。ルイス警部の上司は、さっそうとした足取りで向かって行き、ルイス警部とルイス警部の上司の部下に「二人とも無事だな?怪我は無いな?どうだ?それから私たちよりも先にデンマーク警察やNCAの連中が到着してしまい済まなかった。どうか許して欲しい、何やらこの辺りに居る住民や店の者が激しい発砲音を聞いたらしくて、デンマーク警察に連絡したとの事らしい。そして今デンマーク警察は国際的密輸事件をNCAと合同で捜査に当たっているらしく、彼らも又君たちを国際的密輸犯たちだと勘違いしたみたいで、NCAもここに向かって来たとの事らしいんだ。分かってくれるかな?」といった。ルイス警部は、ほっとした様子で、ルイス警部の上司に「いや、とても助かりました、どうなる事かと思いましたよ。捜査は秘密な事が多いし、他国であるので僕たちがここに居るのは、どうも変であるので、困っていた所でした」といって、ルイス警部の上司の部下に目配せをした。ルイス警部の上司の部下は、頷きながら、ルイス警部の上司に「私もジョナサン警部と同じ意見です」といった。その後、デンマーク警察とNCAとルイス警部たちは、大きな部屋の奥で手錠をかけられている男たちを拘留したり、負傷している者を、まずは病院に送った。そしてルイス警部が見つけたいくつもの試験管を確保したり、大きな部屋に最初から居た男たちやその仲間の所持していたライフルやピストルや軍用ナイフの山を見つけた。その中には軍用の警棒もあった。男たちは、ルイス警部たちの居る捜査機関に連れていかれる時に「お前たちは分かっていない、我々は民衆を圧政から解放しようとしているんだ。自由と平等を与えてやる、解放軍なのだ!」と叫んだ。それから、この工場の中を隅々まで調べてみた。少しばかり時間が流れた、するとフランスの紙幣とドイツの紙幣が入った、スーツケースを発見した。その紙幣には、それぞれフランスの紙幣の場合は七桁の数字が書いてあり、ドイツの紙幣の場合は四桁の数字が書かれてあるのだった。そうこうしていると、デンマーク警察とNCAの特殊部隊とルイス警部たちの居る捜査機関の人々の中から見覚えのある顔の男がつかつかと急ぎ足で、ルイス警部たちの所へと歩いて来た。ルイス警部はその男が防弾ベストを着ていて、腰にはNCAの捜査官全てが身に付けているピストルのSIG SAUER P228を携え、サングラスを付けて、無線機を耳に付けている格好であるが、彼が以前に事件の捜査で会った事のあるNCAのリーダーである事を思い出した。NCAのリーダーは、息を弾ませながら、ルイス警部の上司を一瞥し、ルイス警部に「また君か、ジョナサン警部だったかな?んん、いったい君は、ここで何をしているんだね?ここはデンマーク警察とNCAとそして君の横に居る、彼の捜査機関の特別捜査官が、担当している事件の国際的密輸犯の隠れ家だぞ。英国の警察の警部である君が居る所では無い、さあ事情を説明したまえ、英国から遠い、ここデンマークまで来た事をだ。さあ、私に分かる様に話したまえ」といった。ルイス警部の上司が、NCAのリーダーが今にも飛び掛かって来そうな形相なので、手を上げて彼の言葉を遮りながら、NCAのリーダーに「まあ、まずは落ち着いて下さい、彼、ジョナサン警部は私が選んだ、特別捜査官の一人です。彼はとても素晴らしい功績を持っていましてね、英国海軍での階級は少佐で、英国の警察組織では警部です。それに以前の国際的密輸事件の解決を行ったのも彼ですよ。どうです?ジョナサン警部は優秀な人材ですよ」といった。NCAのリーダーは、苛立たしい表情と口調で、ルイス警部の上司に「しかし、君、ジョナサン警部は以前の事件でアヌビス神の銅像をまんまと盗まれてしまったじゃないか。それでも彼を優秀であると、そして特別捜査官に任命した事が正しいと言うつもりかね?彼に任せていると今回もまた、デンマークの美術品が盗まれ、消えてしまうという事になる気がしますがね。ふん」といって、鼻を鳴らした。ルイス警部の上司は、少しばかり沈んだ様子を見せながら、NCAのリーダーに「しかし、以前の事件の首謀者を制圧して、その首謀者が属している組織も壊滅した事は事実である。それに首謀者たちの手に渡って活動資金源になる事を防ぎ、英国の国家を救い、また英国の国民を救って、エジプトと英国の間の友好関係を保てたのも事実であるのです。であるからしてジョナサン警部は、かなり優秀な人材なのだ」といった。NCAのリーダーは、少し黙り込んだが、ルイス警部の上司に「でも、アヌビス神の銅像は消えてしまったままではないか、少しだけジョナサン警部を褒め過ぎなのではないかな?アヌビス神の銅像も取り返し、さらに前回の国際的密輸犯たちを捕える事も出来た筈だ、それなのに盗まれたアヌビス神の銅像は行方知れずだ。まったくどうしてくれるんだ、今回は美術品を盗まれない様にくれぐれも注意してくれ」といって、その場から立ち去った。

 ルイス警部の上司は、溜め息をついた、そしてルイス警部に「NCAの連中は、ああ言っているが、英国政府は、ジョナサン君、君を正当に評価しているから安心したまえ、良いね。それでどう思うかね?この工場の事は?」といった。ルイス警部は、NCAのリーダーの言葉を真剣に受け止めている様子で、先程まであった勢いが薄れて、ルイス警部の上司に「今の所は何とも言えない状況ですが、工場内にあった複数の試験管とライフルやピストルを撃って来た男たちとスーツケースの中にあった外国紙幣は必ず何かしらの手掛かりになると推察出来ます。しかし、科学捜査班の調査が行われていない今は、この工場で手に入れた物がデンマーク王立図書館と郵便博物館の盗難事件と関係があるとは、まだ言えないという所でしょうか」といった。ルイス警部の上司は、感心した様子で唸りながら、ルイス警部に「んん、そうだな、うちの捜査機関の科学捜査班での調べを急いで貰おうじゃないか。んん、それで行こう、まずは今回手に入った物の調べからだな、では気を取り直して捜査に当たろうじゃないか、ジョナサン君」といって、頷き、その場を離れて行った。ルイス警部は、はっと何かを思い出した様に、ルイス警部の上司の部下に「さあ、僕たちも作戦本部に帰ろうじゃないか、もうそろそろ陽が沈む頃だな、作戦本部で頼んであった事と今回の手に入った手掛かりを検証しよう。さあ行くぞ」といって、手招きした。ルイス警部の上司の部下は、大きく頷きながら、ルイス警部に「はい、今行きます。すこしばかりくたびれましたね、なんたって銃撃戦でしたよ、この仕事にピストルの携帯義務があるのは分かっていましたが、相手がここまでライフルやピストルを激しく発砲してくるとは思いませんでしたね。いやぁ、ジョナサン警部、お互い無事で何よりでした、私が作戦本部に帰る道は運転しますね」といって、そそくさと警察車両へと向かって行った。ルイス警部の上司の部下は、先程地面に置いた、ピストルのSIG SAUER P226と小型ライフルのH&KのMP7A1を既に拾っているらしかった。ルイス警部は、漸く落ち着いたので、ピストルのSIG SAUER P226を拾い上げ、ホルスターにしまい込み、ライフルのH&KのMP5SD6を拾い上げた。そして、ルイス警部とルイス警部の上司の部下は、警察車両のZENVO(ゼンヴォ)・TS1GTの色はブルーの車に乗り込んだ。車を走らせていると夕日で輝く街並みが見えた、デンマークの街に面している海がキラキラと輝く、それからおとぎ話しに出て来そうなデンマークの建物を照らし、とても別世界の物の様に光を放っている。

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