第四章 手掛かり

 暫くして作戦本部に、ルイス警部が到着した。ルイス警部は、作戦本部の中へと急いで入って行きながら「なかなか早く着いたな」とつぶやいた。作戦本部のビルのドアを開けると、そこには先程分かれたルイス警部の上司の部下が、立っていた。ルイス警部の上司の部下は、ルイス警部に「こちらです、ジョナサン警部、三階の作戦室で、上司がお待ちしています」といった。ルイス警部は、ルイス警部の上司の部下の彼に『やはり彼は出来る人だな、仕事がテキパキとしていて頼りになると』と心の中で思った。そしてルイス警部とルイス警部の上司の部下は、エレベーターに乗り込み、三階へと向かった。少ししてエレベーターから三階に到着して、ドアが開くと、デンマークに到着して、作戦本部を訪れた当日の時の様に、作戦室の賑やかな音が聞こえて来た。その賑やかな理由は、作戦の結果の報告を告げているのと、目下調査中の事柄の状況報告や、その報告を告げる為のテレビ電話やコンピューターの音が、部屋中に響いているのだ。ルイス警部の上司の部下は、ルイス警部が作戦室に入れる様に、部屋の扉を開けながら「ジョナサン警部、上司です」といった。ルイス警部の上司は、ルイス警部とルイス警部の上司の部下に、視線を離さずに「二人とも捜査は、どうだったかな?話してくれ」といった。ルイス警部の上司の部下は、ルイス警部の上司に「はい、ご報告する事がいくつかあります」といった。ルイス警部の上司は、ルイス警部の上司の部下に「是非聴かせてくれ」といって、ルイス警部に視線を投げた。ルイス警部は、ルイス警部の上司に「僕も彼の報告の補足説明をしたいと考えています」といった。ルイス警部の上司は、ルイス警部に「良し、良かろう、では本題に入ろうではないか」といった。ルイス警部の上司の部下は、我先にと言わんばかりに、ルイス警部の上司に話し始めて「まずデンマーク王立図書館である、通称ブラックダイヤモンドでの捜査では、本棚から展示されている本が、盗まれたという事件であると思います、まだはっきりとは申し上げられませんが、こじ開けられた本棚には、赤い液体が固まった様な物が、こびりついていました。そこから犯人に繋がるかもしれません」といった。するとルイス警部の上司が、ルイス警部の上司の部下に「その盗まれた本の展示は、どんな本棚になっていたのかね?」といった。ルイス警部の上司の部下は、まだまだ話しを続ける様であったが、自分の話しを慌てて中断して、ルイス警部の上司に「はい、本棚は強化ガラスで出来ているショーケースの中に、本を入れて、そのショーケースの底と本棚をネジで留めている造りになっています。先程私が言っていた、赤い液体が固まった様な物があったのは、ネジで留める所にありました」といった。ルイス警部の上司は、自分の両腕を組んで、真直ぐに立ち、ルイス警部の上司の部下に「うむ、そのまま話しを続けてくれ」といった。ルイス警部の上司の部下は、頷きながら、ルイス警部の上司に「はい、次に犯人に繋がりそうな事柄は、デンマーク王立図書館であり、通称ブラックダイヤモンドの職員の一人が、体調を崩していて、どうやらその体調を崩した職員は、意図的に体調を崩させられたのかもしれないんです」といった。ルイス警部の上司は、ルイス警部の上司の部下に「いったい、何故その様な見解に至ったのかね?」といった。ルイス警部の上司の部下は、目を輝かせながら、ルイス警部の上司に「はい、ご説明します。その体調を崩していた職員は、体調を崩す前にある女性の方と接触をしていて、その後に具合いが悪くなったと考えられるんです。その女性は、室内なのに、青いサングラスをかけていて、流暢なフランス語を話していたのだそうです。とても怪しい人物だと考えられます」といった。ルイス警部の上司は、片方の眉毛を少しだけ上げて、ルイス警部の上司の部下に「その怪しい女性は、特定出来そうなのかね?どうなのかね?」といった。ルイス警部が、二人の会話のやり取りを聴いて、急に会話に跳び込んで来ると、ルイス警部の上司に「今、うちの科学捜査班にデンマーク王立図書館の方での、盗難事件の現場と体調を崩した職員の身辺調査をしています。その結果次第では、何か犯人を断定出来る事が出て来るかもしれません」といった。ルイス警部の上司は、ルイス警部の方をチラッと見て、ルイス警部とルイス警部の上司の部下に「そうか、ではまだ何とも言えないという事かぁ。まあでも、私たちの科学捜査班に期待をしようじゃないか」といった。ルイス警部の上司の部下は、少し溜め息をついて、少し残念そうな面持ちでいた。ルイス警部は、捜査のベテランであるのか、ちっとも上司の言葉に対して悔しい気持ちを抱かなかった様であった、彼からすれば捜査開始から間も無いのだから当然という心構えなのだと、彼の自信のある報告から分かった。ルイス警部の上司は、ルイス警部の上司の部下の気持ちにはお構い無しに、直ぐにルイス警部の上司の部下に「デンマーク王立図書館の方の報告は以上かね?」といった。ルイス警部の上司の部下は、目を見開きながら、慌てた様子で、ルイス警部の上司に「はい、ブラックダイヤモンド…いやデンマーク王立図書館での捜査報告は以上です。次のデンマークの郵便博物館の方に移りますね」といった。ルイス警部の上司は、少し慎重な表情で、ルイス警部の上司の部下に「報告を続けてくれ」といった。ルイス警部の上司の部下は、少し緊張しながら、ルイス警部の上司に「郵便博物館では、私は警報が鳴った時の郵便局員たちの行動について聴いてみました。まず一つ目の質問は『警報が鳴った時に、何をしていましたか?』と聴いてみました、すると郵便局員たちは『いつも通り、お客様の接客をしていました』、『監視カメラを確認したり、辺りを見廻して異変が無いか確認していました』と内容はこの二種類の返答内容で、言い方はそれぞれでしたが、趣旨は同じである返答をしていました。二つ目の質問では『警報が鳴った日に、変わった事や不審な人を見なかったですか?』と聴いてみました、すると郵便局員たちは『変わった事や物はありませんでしたね』と多少の言い方の違いはあるかもしれませんが、どの局員もこの内容の返答をしていました。そして最後に『美術品以外に紛失した物は何かありますか?』という質問を聴いてみました、すると郵便局員たちは『確かめたのは事件後になってしまいますが、失くなった物は何一つ無いと思います』とこの内容の返答をしていました。以上で私の報告は終了です」とはきはきとした調子でいった。ルイス警部の上司は、ルイス警部の上司の部下の報告を聴いて、難しい顔だったのが、いっそうに難しい顔になっていた。ルイス警部は、ルイス警部の上司の部下の報告が終わると、自分の右手を上げて、ルイス警部の上司に「それでは、僕の捜査報告を行います。良いでしょうか?」といった。ルイス警部の上司は、はっとした様子で、ルイス警部に「もちろんだ、話してくれ。今の報告の状況だけだと捜査が辛いと考えていた所だ」といった。ルイス警部は、息を吸い込んでから、ルイス警部の上司に「デンマーク王立図書館の捜査は、うちの科学捜査班からの調査結果待ちという所です。次にデンマークの郵便博物館での捜査では、警報が鳴った日に郵便窓口に配置されていた郵便局員たちに話しを聴いてみました。僕はこの郵便窓口にいた局員の一人に、最初に『窓口ではどの様な業務をなさっていますか?』と聴いてみました。すると郵便窓口にいた局員の一人は『私どもは、物を郵送する仕事に従事しています。大きく分けて国内と国外に郵送する仕事に分かれています』と言っていました。そして僕は質問の回答に出て来た国内と国外の郵送の事について聴いてみました、僕は最初に国内の郵送の事について聴いてみる事にしました。一つ目の質問で『警報が鳴った日、あなたは何をしていましたか?』と聴いてみました、その質問に国内に郵送する局員は『その日は朝から手紙や小包を郵送して欲しいお客様が多くいらして、とても郵便局内は混雑していました。ですから、私も忙しく接客をしていました』と回答しました。一つ目の質問の回答を聴いて、二つ目の質問では『それは警報が鳴った時もですか?』と聴いてみました。その質問に国内に郵送する局員は『はい、警報が鳴ったのは三階でしたし、放送で三階以外の階は仕事を継続して行う様に言っていましたので、普段と変わり無く仕事をこなしていました』と回答しました。三つ目の質問は『仕事の時に普段とは、変わった荷物を受け取った事などはありましたか?』と聴いてみました。その質問に国内に郵送する局員は『いや、お客様のみなさんは警報が鳴っても、落ち着いていらして、普段とは違わずに郵送する荷物を私に渡していました。ここに来るお客様は、お客様同士ではほとんど顔見知りなんだと思います』と回答しました。補足として、この回答に出て来る『顔見知り』の事については、国内に郵送する局員は『この辺りにある、スーパーマーケットで買い物ついでに、荷物を郵送しに来るお客様が、とても多いんです。警報が鳴った時も郵便局内は、買い物をして来たお客様か、買い物をこれからしに行くお客様で、混雑していました』と言っていました。また質問事項に戻ります、四つ目の質問は『国内に荷物を送る人たちには、警報が鳴った時に、不審な物を見たか聴いたのかな?』と聴いてみました、その質問に国内に郵送する局員は『はい、お客様のみなさん、良く周りの事を覚えていらっしゃいまして、特に普段とは違った事は無かったとの事でした』と回答しました。五つ目の質問は『国外に荷物を送る担当の人も、話してくれた様な状況なのかね?』と聴いてみました、その質問に国内に郵送する局員は『それは国外の担当の方に聴いてみないと分かりません』と回答しました。この回答を聴いて、僕は次に国外に荷物を郵送する担当の局員である、盗難事件の時に郵便窓口にいた局員に、話しを聴いてみる事にしました。国外担当の局員への一つ目の質問は『警報が鳴った日、あなたは何をしていましたか?』と聴いてみました、その質問に国外担当の局員は『私は、普段と同じで国外に荷物を郵送する手続きをしていました』と回答しました。二つ目の質問は『国外に郵送するお客様も、やはり顔見知りのお客様が多いですか?』と聴いてみました、その質問に国外担当の局員は『いいえ、国外に郵便物を送るお客様は、観光客の方がほとんどで、大抵はデンマークの絵ハガキや特産物に、私たちデンマークの郵便局の消印を押して貰い郵送するのが、目的のお客様がほとんどです。わざわざお土産を郵送するのは、国々によって消印が異なるので、思い出の一つにそれを集めたいという事みたいです』と回答しました。この回答を聴いて、三つ目の質問は『それでは、通常通りで変わった点は無かったという事ですか?』と聴いてみました、その質問に国外担当の局員は『そうですね、少し気になった事といえば、大抵のお客様は旅行気分を味わいたいと、ゆっくりしていらっしゃるのですが、一人だけフランスに郵送するお客様がいらして、その方は何でも良いから、早く手続きを済ませてくれとの事でした。気になった事といえば、その事でしょうか』と回答しました。この回答を聴いて、四つ目の質問は『そのお客はどんな物の郵送を頼んできたのかね?』と聴いてみました、その質問に国外担当の局員は『そうですね、中位の大きさの小包と、そして後から手紙の封筒を出して来て、その二つを郵送して欲しいとの事でした』と回答しました。この回答を聴いて、五つ目の質問は『その郵送する荷物の中身は何か分かるかね?』と聴いてみました、その質問に国外担当の局員は『そうですね、小包の方は“お菓子”と郵送する時の伝票に記載がありましたが、少し重い気がしました。そして封筒の方は急いで糊付けしたみたいで、まだ封が乾ききっていません様でした』と回答しました。六つ目の質問は『フランスの郵送先は分かるかね?』と聴いてみました、その質問に国外担当の局員は『荷物の送り先のフランスの住所なら、直ぐに分かります。今調べますね』と回答しました。最後の六つ目の質問に出て来た、フランスへの郵送先を書いた書類の控えにある事を、全て書き留めました。これらの質疑応答を踏まえて、僕はデンマーク王立図書館での流暢なフランス語を話す、サングラスをかけていた不審な女性とデンマークの郵便博物館でのフランスへの不審な荷物の郵送が、犯人へ繋がる手掛かりでは無いかと考えています。僕の捜査報告は以上になります」といった。ルイス警部の上司は、ルイス警部の話しが終わると満面の笑みで、ルイス警部に「ふふふ、これでこそ私たちの捜査班だ、では何処から捜査を始めるかね?その意向を教えてくれ」といった。ルイス警部は、決意した様な表情で、ルイス警部の上司に「フランスへの郵送先の住所が、他の郵便局でも、宛先として書かれていないか調べてみます。それから輸送先の住所自体も確かめてみます」といった。ルイス警部の上司は、熱い視線を送りながら、ルイス警部に「素晴らしい、ではその方向性で捜査を進めてくれ、頼んだぞジョナサン君」といった。ルイス警部は、先程と変わらぬ自信に溢れた面持ちで、ルイス警部の上司に「はい、任せて下さい」といった。ルイス警部の上司の部下は、捜査報告を行う前よりも、自分に対しての自信が陰っているのか、下を向いたまま黙っているのだった。そんな中、作戦室のドアのノックされる『トントン』という音が聞こえて来た。ドアのノックの主は、ルイス警部の上司に「科学捜査班の者です、中に入っても宜しいでしょうか?ご報告する事があります」といった。ルイス警部の上司は、科学捜査班の人に「大丈夫だ、どうぞ入って来なさい」といった。ルイス警部の上司が、言い終わるか、終わらぬ前に、作戦室の扉が開き、その扉から丸々と太った男が、色々な書類を持ちながら慌てて入って来た。科学捜査班の人は、書類を抱えながら、ルイス警部の上司に「捜査に影響がある事柄をご報告に参りました、きっと捜査の役に立ちますよ」といって、ルイス警部に視線を投げると、顔がはっとなって「あなたがジョナサン警部ですね、噂はかねがねです、何でも元々は英国海軍に居て、英国海軍特殊部隊に在籍していたとか、その頃の偉業は沢山聞いています。凄腕のスナイパーであって、幾戦もの戦いを切り抜ける手助けを大きく担っていたんですね。ここで会えて光栄です、今回ここへ来たのは、この話しをする為では無く、もちろん調査結果の報告の為です。調査結果が出来次第、ジョナサン警部に報告すると約束したので、報告に来ました。探しましたよ」とルイス警部と握手しながらいった。その科学捜査班の彼の手は、まん丸いパンの様な手であった。科学捜査班の人は、握手をし終えると、ルイス警部の上司の部下に目をやり「あなたの良い仕事ぶりは、とても評判ですよ、一緒に仕事が出来て嬉しいです」といった。ルイス警部の上司の部下は、ほんの今まで落ち込んでいたにも関わらず、彼の話しを聞くと、明るい雰囲気を帯び始めて、軽く会釈を返した。科学捜査班の人は、ルイス警部とルイス警部の上司とルイス警部の上司の部下の顔を順々に見廻して「ええと、これから調査報告を行います、みんな一緒にここで聴く事にしますか?それとも個別で聴きますか?どうします?」といった。ルイス警部は、科学捜査班の人に「僕が一番先に聴きたいと言ったのだが、折角だから、みんなも集まっている事であるし、みんなで報告を検証しよう」といった。科学捜査班の人は、作戦室にある大き目のテーブルに、持って来た書類を慌ただしく整頓せずに並べた。科学捜査班の人は、少し息を切らしながら、ルイス警部とルイス警部の上司とルイス警部の上司の部下に「ではこれから、調査の結果をお伝えします。まず初めに、デンマーク王立図書館の盗難現場の調査結果からです。展示用の本棚のショーケースの、ネジ状の留め金の所が壊されていました。どの様に壊されたかというと、酸性の液体物質を少量、吹き付けてネジ状の留め金を溶かしたんだと分かりました、その留め金を溶かした酸性物質は特定出来ましたが、どうやらデンマーク国内では手に入らない様です。また、溶けたネジ状の留め金部分に付着していた、赤い液体が固まった様な物は、どうやら人間の血液である事が分かりました、その血液を犯罪者データベースで調べてみましたが、特定出来ませんでした。その血液の持ち主には犯罪の前科が無いみたいですが、女性である事は確かです。それからどの様にして血液が付着したかというと、恐らく溶かして壊れた留め金の金属の破片が鋭くなって、その破片の刃により手を切った時に、血液が留め金部分に付着したというのが、一番考えられる理由です。次に、報告する内容はデンマーク王立図書館の具合いの悪かった職員についてです、彼を検査した所、どうやら毒物を盛られていたという事が分かりました。その毒物は毒性が弱い物ですが、大量に服用するとウイルス性の病気と良く似た症状が出るみたいで、服用後一日か二日で症状が現れて、熱や発疹が出る様です、もっと悪い時は嘔吐もするみたいです。この毒物を調べた所特定しましたが、これもまた、デンマーク国内では手に入らない代物なんです。以上で調査報告を終了します」といった。この報告を聴いていたルイス警部とルイス警部の上司とルイス警部の上司の部下の三人は、みんなそれぞれ、次なる手を思いついた様な顔、問題の大きさを把握して驚いた様な顔、どこまでも追及してやるぞという意気込みを訴える様な顔をしてその場で立ち尽くしている。

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