第十四章 事件の全貌

ルイス警部が、月曜日にデンマークに到着してから九日経った、十日目の日曜日の午前十時頃だ、ルイス警部は、ぼんやりとした様子で目を覚ました。そこには奥さんのエメットが座っていた、エメットは、喜んだ様子で、ルイス警部の手を握りながら、ルイス警部に「あら、ルイス、起きたのね、ここはデンマークの病院よ。ルイス、あなたは今回の事件の犯人たちと戦って、倒したけれどあなたも怪我を負って、その痛みで気を失ったのよ。その知らせを聞いて、私飛んで来たのよ、私とても心配したわ、パスカルの事は心配要らないわよ、あなたのご両親に預けてあるからね」といって、ルイス警部に抱き着いた。ルイス警部は、エメットに「僕は大丈夫だよ、心配掛けたね、エメット。君が居れば、直ぐに傷は治るさ」といって、ルイス警部とエメットはキスをした。するとルイス警部の居る病室のドアがノックされて、聞き覚えがある声で「ジョナサン警部、具合いはどうかね?医者は命に別状は無いとの事だが、しかし怪我をしたからね、暫く安静にしておかないといけないな」といった。その声の主は英国軍の上層部だった、その後に続いてルイス警部の上司が病室に入って来た。ルイス警部の上司が、ほっとした様子で、ルイス警部に「君が気を失っている間の事を知りたいだろう、教えてやろう。君がクリストフ・バルリエとの戦闘途中で、クリストフ・バルリエが言った事は、君と共に任務に就いた英国海軍特殊部隊特別迎撃チームの隊員であるエイドリアン中尉、バージル軍曹、クリフォード、デイミアン、ダスティンの五人が、作戦時に身に付けていた無線機から聴いていた、そしてその無線機は作戦中では録音される機能になっている。それなので五人の特殊部隊隊員たちが、クリストフ・バルリエが黒幕であり、彼の話しに出て来る人物が一連の事件を、引き起こした事の証人になり、無線機での録音がその裏付けになったんだ。今回の事件についてフランス政府とフランス軍はクリストフ・バルリエが一人で勝手に、行った事で、フランス政府もフランス軍も彼に関与している事は全く無いと言っている、まあそれは、疑う余地は無いだろう。次にジョナサン警部、君が気にしていた内部情報の漏洩の事だが、やはり君の読み通り、起きていたのだ。君に言われて直ぐに我々は行動を起こしたのだ、それで調査した結果ある捜査官の名前が浮上した、彼の名はオリヴァ・ニールセンという名前で、デンマーク警察の巡査である。彼はデンマーク警察とNCAと英国特別捜査機関の報告会の後には決まって誰かと連絡を取っている事が分かった。その相手は我々三つの捜査機関の者では無い人物で、その人物と連絡を取っていたのだ。何故分かったかというと、私たちは我々、三つの捜査機関の捜査官たちの連絡先と照らし合わせてみた所、一致しなかった。そしてオリヴァ・ニールセンの電話の相手を電話番号から突き止めてみると、それはなんとアルベール・オダンだったのだ。つまりオリヴァ・ニールセンはアルベール・オダンに捜査情報を流していたのだ、それで捜査は難航したという事だ。まだ話しには続きがあるんだ、そのオリヴァ・ニールセンには弟というのが居て、その弟の名はカール・ニールセンという名前で、大学院生なのだ。オリヴァはカールと連絡を取り合っていて、カールの所属している団体のヴァイキング・パワードという団体の依頼で、ライフルやピストルの訓練を密かに出来る所を探し出し提供していたのだ。そのヴァイキング・パワードは『自由と平等を与える解放軍』という名目で、以前に街の大変繁盛している食料品店から食料を大量に盗み出して、貧しい住宅地の住民に配るといった破壊行為を行った事がある連中で、ヒメオコゼの料理を出す店の工場に居た男たちもヴァイキング・パワードだったのだ。あの時の押収したライフルやピストルに付いていた指紋で、一人だけ謎の人物の指紋があったろう、その指紋はオリヴァの弟のカールの指紋と一致したのだよ、ライフルやピストルの不法所持だ。オリヴァもカールも身柄を拘束したよ。カールは今回の国際的密輸事件で、アルマン・ボリエ、アルレット・カンボン、ベレニス・カルメがヴァイキング・パワードの一味であり、アルベールの指示に従い、盗難を行った事を証言する代わりに自分と兄のオリヴァの減刑を要求している。ヴァイキング・パワードの連中はお金目当ての犯行であったが、アルベール、オリヴァ、カールはクリストフ・バルリエの『権力と暴力に基づいたシステムの無い社会と自由と富の平等な分配を与える』という信念に感化されての犯行だとカールは言っている。決して私欲の為で無く、正義の為にやった事だと言っているんだ。それから、バルリエとの戦闘では相手は十六人で、こちらは六人での応戦だったが、君は指揮を執り、作戦部隊を勝利へと導いた、良く頑張ったな。後、作戦中に負傷したダスティンの事だが、軽い怪我だと医者は言っている、彼の事は、心配無い、他の特殊部隊隊員たちは無傷だ。これでこの数日の間に起った事は全部話した、ジョナサン警部、事件は全て解決したんだ。ゆっくり体を休めて傷を治す事に集中してくれ」といった。ルイス警部は、少し当惑した様子で、ルイス警部の上司に「盗まれた本と切手はどうなったんです?」といった。ルイス警部の上司は、一瞬苦々しい顔をして、ルイス警部に「今回は取り返す事が出来なかったが、大丈夫さ、直に見つかるさ、心配要らないよ。我々に任せたまえ」といった。ルイス警部は、少し残念そうにして、溜め息をつくと、エメットが、ルイス警部に「そんなに、難しい顔をしないのよ、治るものも治らないわよ。ルイス、あなたは良く頑張ったのよ、悪を倒したのよ、そしてデンマークに平和を取り戻したの、良いわね」といって、ルイス警部の目をじっと見つめた。ルイス警部は、顔を緩ませて、エメットに「そうだね、エメット、君の言う通りだな、愛しているよエメット」といった。エメットは、にこやかに微笑み、ルイス警部に「私も愛しているわ、ルイス」といって、エメットとルイス警部はキスをした。

するとピリリリと携帯電話の音が病室に鳴り響いた。その携帯電話は英国軍の上層部の物だった、彼はルイス警部とエメットとルイス警部の上司に断りながら、病室から出て行って、携帯電話に出た。英国軍の上層部は、何事かという顔をして、電話の相手に「もしもし、急な用事かね?」と電話をした。電話の相手は、慌てた様子で、英国軍の上層部に「今回の事件が解決したのに、英国政府へのサイバー攻撃が止みません」と電話をした。英国軍の上層部は、うろたえた様子で、電話の相手に「分かった、直ぐに捜査チームを編成して、対応する事にしよう。こちらからまた連絡する」と電話をして、通話は切れた。英国軍の上層部は、急いで病室に戻ると、ルイス警部に「ジョナサン君、また事件だ。君を捜査チームに組み込みたい、請け負ってくれるかな?」といった。ルイス警部は、意志が強そうな表情で、英国軍の上層部に「ええ、僕にやらせて下さい、きっと解決して見せます」といった。英国軍の上層部は、ルイス警部に「それは良かった、安心したよ、君のサポートは任せてくれ。何か必要な物があったら何でも言ってくれ。期待している」といった。ルイス警部の上司は、その会話を聞いて、大きく二度頷き、エメットは、ルイス警部の手を握り、ルイス警部はエメットの手を握り返した。

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