第十一章 ヴァイキング・パワード
ルイス警部が、月曜日にデンマークに到着してから五日経った、六日目の土曜日の早朝で、丁度デンマーク警察署でデンマーク警察とNCAと英国軍と英国警察の協力下で編成されている英国特別捜査機関の三つの捜査機関の報告会が終わった直後だ。ドイツ国内のハンブルクにあるシュタイゲンベルガーホテルでは、大きな赤レンガに四角い窓ガラスが、沢山埋め込まれている造りのこの建物に、早朝の陽の光が差し込まれて、淡い輝きを放っている。この建物から飛び出している大きな橋の周りにある川の水面にも、陽の光が照らされて、水面に映っているシュタイゲンベルガーホテル全体に濃い黄色い絵の具で描いた様に、見る人に穏やかな安らぎをもたらしている。そしてこの建物の中の内装については、受付は、木で出来ていて、受付の後ろの壁には、大きくシュタイゲンベルガーと銀色の文字で書かれている。受付の傍には待合室があり、そこは木で出来た穴の空いたブロック状の壁造りの空間がある。地下と上の階へとは透明な手すりがついている階段がいくつもあり、階段の近くには大きな綺麗な明るい緑色の植物が入っている花瓶もいくつもある。部屋の中については、大きなベッドには白いふかふかの枕が二つと赤いモーフがあり、ベッドの横には受付と同じ色の小さなテーブルがある。部屋の床には明るい水色に波線の模様のカーペットが敷かれていて、近くには壁に埋め込まれている黒いテレビと受付と同じ色の枕と箪笥やテーブル、それから白いソファーにモーフと同じ赤色のクッションが置かれている、そして透明な小さなテーブルの上に白い花が置かれている。部屋に泊っている人たちはまだ眠っている時間だ、そんな中泊り客の携帯電話が鳴った。泊り客の男は、うんうんと唸りながら携帯電話の置いてあるベッドの横にあるテーブルに手を伸ばして、携帯電話があると思われる場所をバンバンと叩きながら、探して漸く携帯電話に応答した。男は、眠そうな声で、電話の相手に「もしもし、どなたですか?」と電話をした。電話の相手は、低い太い声で、男に「こちらトゥルージャスティスだ、きっちりとこちらの声が聞こえているかな?急ぎの用だ、直ぐにそのホテルから退却するんだ、捜査機関の奴らが、君たちの行方について感づいている。急いでその場を離れるんだ、良いな」といって、携帯電話の通話は切れた。男は、携帯電話をテーブルの上に滑らせると、ベッドから飛び起きて、持っている中で一番大きな茶色の鞄に荷物を詰め込み始めた。数分経ち、男は白いワイシャツとグレーのスーツのズボンを着て、茶色の革靴を履き、慌ただしく部屋から出ると、同じ階の二つの部屋に、ノックを数回して、大きな声で、早く扉を開ける様にいった。数秒で扉が開いた、そこには白いワイシャツと紺色のスーツのスカートを着て、紺色のハイヒールを履いている女が一人立っていた。女は、血走った目で、男に「ええ、私にもトゥルージャスティスから連絡があったわ、直ぐにここを出ないと、捜査官たちが押し寄せて来るって言っていたわよ、直ぐに遠くに行かないといけないわ。あら、あの子にも知らせないと」といって、少し離れた部屋のドアを指差した。男は、頷きながら、女に「ああ、さっきドアをノックした所だよ、まだ眠っているかも知れないな、どうしょう、あっそうだ携帯電話を掛けよう、起きるまで何度も掛けるんだ」といった。すると男と女が通路に立っていると目の前の部屋のドアがパッと開いた。そこには白いワイシャツと緑色のスーツのスカートを着て、緑色のハイヒールを履いている女が、手に大きな鞄を持って、風貌は先程の女よりも少しばかり若く、その場に立ち尽くしていた。その若い女は、とても慌てた様子で、息を弾ませて、男と女に「用意は出来たわ、二人ともトゥルージャスティスから電話を貰ったでしょ、ここを一刻も早くでましょう。追手が私たちを捕まえに来るわ、荷物は出来るだけ少なくしてね、二人とも急いで、一秒でも早く出ましょうよ」といって、手に持っている大きな白い鞄を両手で持ち上げて通路に置いた。数分後、男は、グレーのスーツの上着を着て、手には大きな茶色の鞄とグレーのコートを持って、自分の部屋から嵐のごとく出て来た。女は、紺色のスーツの上着を着て、紺色の帽子を被り、黒い大きな鞄を持ちながら立っていて、一方若い女の方は、緑色のスーツの上着を着て、白い大きな鞄を持って立ち、それぞれの部屋から出て通路で男を待っていた。男は、目を大きく見開き、鞄を重そうに持ちながら、片手で手招きして、女と若い女に「こっちだ、非常階段から下に向かって、駐車場に出よう、そこからレンタカー店で借りた車に乗るんだ、では行こう」といった。シュタイゲンベルガーホテルの正面の扉からぞろぞろと白いワイシャツの上に黒い防弾ベストと黒いスーツのズボンを着て、黒い革靴を履いている捜査官らしき人たちが、ピストルのSIG SAUER P228を手に持って先頭に立ち、その後に黒い特殊部隊の格好をした人たちが防弾ベストを着て、頭にヘルメットを被り、手にはライフルのSIG SG 553にライトとグリップと照準器を装着した物を持ち、体に備えてあるホルスターにピストルのSIG SAUER P228をしまい、ホテル内へと入って来た。先頭に立って入って来た捜査官の一人が、急いだ様子で、身分証を見せながら、ホテルの受付係に「英国国家犯罪対策庁の者だ、今国際的密輸事件の捜査をしている所なんです、それで犯人たちが国外に逃げたという事を掴み、ここドイツまで来ました。間違い無く、ホテル側に内密にお知らせした紙幣の製造番号と一致したんですね?」といった。ホテルの受付係は、緊張で震えながら、捜査官の一人に「はい、こちらに知らせされたドイツ紙幣の製造番号が、ホテルの予約をする時とホテルに設備されているレストランで食事をした時に使用された事が分かりました、それで直ぐにそちらの捜査機関に連絡したという次第です」といった。捜査官の一人は、頷いて、ホテルの受付係に「そうでしたか、分かりました。それでどの部屋に彼らは泊まっていますか?教えて下さい、それから出口になる様な場所であるエレベーター、階段そして裏口などを大至急教えて下さい」といった。ホテルの受付係は、受付の机の引き出しからホテル内の地図を出して、捜査官の一人に「はい、紙幣の製造番号が一致したお客様は、全員五階のフロアになります、五階のこの三つの部屋になります。それとここに書いてある場所が出口になる様な所全てです。他には全くありません」といった。捜査官の一人は、他のNCA捜査官たちとNCAの特殊部隊隊員たちに「良し良いか、特殊部隊隊員の内の三人は、私について来るんだ、他の特殊部隊隊員は、正面扉と裏口と駐車場に行ってくれ、良いね、特殊部隊隊員じゃない捜査官たちは、階段とエレベーターから五階へと向かってくれ、良いね、犯人たちを絶対に逃がすな良いな、それではみんな急いで取り掛かるぞ」といって、NCAの捜査官たちと特殊部隊隊員たちは、クモの子を散らす様に、あっという間に散り散りになって行った。少ししてNCA捜査官の一人は、他の捜査官たちと三人の特殊部隊隊員を連れて、五階の犯人たちが泊っている部屋に到着すると、その三つの部屋をホテルの受付係から借りたマスターキーを使い開けて中を確かめた。しかし部屋の中は、もぬけの殻で荷物も大半の物が残っていた。NCA捜査官の一人は、その状況を見て、直ぐにエレベーターと階段と裏口と駐車場に配備している捜査官たちや特殊部隊隊員たちに無線機で連絡を入れて、変化が無いか確かめると、犯人たちが来ていないか確認した。しかし捜査官たちと特殊部隊隊員たちからは、異常事態や不審な人物たちを見かけていないと応答された。NCA捜査官の一人は、険しい顔で考えて、犯人たちは遠くに逃げる筈だ、それに部屋の様子を見ると逃走する十分な時間は無かった筈だ、そうか車でこのホテルを離れるつもりだなと思った。そしてNCA捜査官の一人は、駐車場の様子を再度確認して欲しい、それから駐車場の警戒を怠るな、今から自分も駐車場に向かうという事を伝えた。すると暫くしてNCA捜査官の五階へ向かった人たちの内の数人が階段から駐車場に向かった、それから特殊部隊隊員たちの数人がライフルを構えながら駐車場の奥へと入って行った。その時大きな鞄を持った男女三人組が見えた、その男女三人組は丁度シルバーの車に乗り込もうとしている所だった。そして特殊部隊隊員の一人が、ライフルを構えながら、男女三人組に「動くなNCAだ、捜査機関の者だ、直ぐに止まるんだ」といった。けれども男女三人組は構わずに車に乗ろうとした。そこにNCA捜査官の一人が、背後から男女三人組に近づき、その内の男の頭に銃口を突き付けて「そのままじっとしているんだ、良いか、妙な真似をしてみろ、容赦はしないぞ」といった。すると相手はその場に力なく腕を下ろして、大きな鞄を地面にドタンと音を立てて置いた。その後に二人の女も地面に自分たちの大きな鞄を置いて手を上げてその場に立ち尽くした。三人の男女は、特殊部隊隊員たちに囲まれてライフルを向けられながら、NCA捜査官たちに両手に手錠を掛けられて連行された。
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