第六章 エミリアン・ビヤール
ルイス警部が月曜日にデンマークに到着してから二日経った、三日目の水曜日の午後二時頃だ。ここフランスでは、エミリアン・ビヤールが自分の出身大学であるパリ大学で、講演を丁度終えた所で、自分の教授室に向かう所だ。そしてパリ大学の廊下を歩いているとそこに、先程までビヤール教授の講演を聴いていた、学生が走って来た。走って来た学生は、少し息を弾ませながら、ビヤール教授に「ちょっと、宜しいでしょうか?聴きたい事があるんです」といった。ビヤール教授は、学生とは対極的にとても冷静で、落ち着いた面持ちで、走って来た学生に「何かね?」といった。走って来た学生は、ビヤール教授に「たった今、教えて頂いた事なんですが、ここの所が少し理解するのが困難なんです、どういう作りになっているのか、詳しく教えて下さい」と自分のノートに指で指し示しながらいった。ビヤール教授は、冷静で落ち着いているが、また若さ溢れる情熱を持っていて、彼の眼は質問に対しての回答への、熱意の輝きを放ちながら、走って来た学生に「そこの所は、この本がとても参考になると思うよ」と優しいがはっきりとした声でいった。走って来た学生は、直ぐに、ビヤール教授が見せてくれた本の名前を書き留めた。エミリアン・ビヤールは、パリ大学出身の哲学の合理主義哲学を専門にしている教授である。歳は二十二である。彼は、ナポレオン・ボナパルトの末裔である。ビヤール教授の主張は『権力と暴力に基づいたシステムは、正義や幸福に反する全ての事をもたらし、自由を阻害する。よって、権力と暴力に基づいたシステムの無い社会と、富の平等な分配を与えるという活動の妨害をしている者を排除する。そして、自由と富の平等な分配を与えるシステムの管理を、アンドロイドに担わせ、人類は芸術や科学といった創造的活動に従事すべきだ』という考えである。フランス人である。髪の色は、明るいブロンドで、髪の長さは、耳が隠れていて、前髪は眉毛を少し隠しているくらいの長さで、七対三で分かれている。目の色は、グレーで、肌は紙の様に白い。エミリアン・ビヤールの服装は、上半身が白地に黒のチェックの柄のワイシャツで、その上に薄いグレーのジャケットを着ていて、黒いネクタイを締めている。下半身は、濃い青のズボンを着ていて、黒いベルトを締めていて、足には黒いブーツを履いている。走って来た学生は、ビヤール教授に「ああ、ありがとうございます、早速読んでみますね。また分からない事がありましたら、質問しに来ても宜しいでしょうか?」と軽い会釈をしながらいった。ビヤール教授は、その固い表情に、少し優しい微笑を浮かべて、走って来た学生に「もちろんだよ、授業の事なら何でも答えられると思うから、僕の所にいつでも来なさい」といった。すると走って来た学生は、もう一度、今度はしっかりと深く会釈をして、その場を離れて行った。暫く大学内を歩いて、ビヤール教授は自分の教授室に到着した。ビヤール教授は、教授室に着くと、自分の講義で使った物を、机になだれ込む様に置いた。そしてビヤール教授は、自分の今作成中の論文に目を通した、それから彼は、部屋にある時計を確認して「そろそろだな、帰るとするかな、論文の事は帰ってからやる事にするかな…」とつぶやいた。それからビヤール教授は、午後の授業が無いので、英国の自分の家に帰る為の仕度を始めた。それから暫く時間が経って、ビヤール教授は、電車とバスを乗り継いでフランスの空港へと向かった。フランスの空港に到着すると、英国行きの飛行機へと乗り込んだ。
ルイス警部が月曜日にデンマークに到着してから二日経った、三日目の水曜日の午後四時頃だ。ルイス警部は、携帯電話を片手に、作戦室から出た直ぐの通路で、自分の奥さんのエメットに電話を掛けている。ルイス警部は、待ち望んでいた物を手に入れた表情で、エメットに「もしもし、僕だルイスだ、今丁度時間が出来たんだ。そっちはどうかな?時間あるかな?」と電話をした。エメットは、少し声を弾ませながら、ルイス警部に「あら、大丈夫よ、今仕事に区切りがついた所よ、何でも話して良いわよ」と電話をした。ルイス警部は、瞳を輝かせながら、少し勢い良く、エメットに「良かった、やっと時間が出来た所なんだ、調子はどうだい?それとパスカルの様子はどうかな?そしてそれから僕の両親の方はどうだい?」と電話をした。エメットは、上機嫌な様子で、ルイス警部に「私は、体調も仕事の方も、上手くいっているわ。パスカルも元気にしているし、良く私や、ルイス、あなたのご両親に、なついているわ。あなたも早く仕事を終わらせて帰って来て、パスカルになついてもらわないといけないわよ、これは我が家の決まり事よ。それからあなたのご両親は仕事をしながら、パスカルの面倒を見てくれているわ、今日は、ルイス、あなたのお母様が花屋の仕事をしながら面倒を見てくれているの、とても助かっているわ。それに家族が面倒を見てくれていると思うと、安心出来るわ。そっちはどうなの?」と電話をした。ルイス警部は、とても穏やかな表情と口調で、エメットに「そうか、なるべく早く仕事を片付けて、そっちに帰って、パスカルになついてもらわないとな、それが家族の決まり事なら尚更だ。それからエメット、君の方も万事順調にいっているみたいで、良かったね。僕の両親とも上手くいっていて、とても嬉しいよ。こっちは今、事件の手掛かりになりそうな事が見つかってね。その手掛かりを追ってみようと思っている所なんだ」と電話をした。エメットは、ルイス警部に「さすがは、私のルイスね、凄いじゃない、とても感心するわ。あなたって最高の捜査官よ」と少し声が高くなりながら電話をした。ルイス警部は、エメットに「それがそうでも無いんだ、これからが捜査の本番なんだぁ、僕の事を応援してくれるかい?」と電話をした。エメットは、しっかりとそして優しく何かを教える様な感じで、ルイス警部に「そうなのね、大丈夫よ、私がちゃんと付いているわよ、だから落ち着いて捜査に打ち込むのよ。あら、仕事を再開しないといけないわ、また連絡して頂戴ね、愛しているわ、ルイス」と電話をした。ルイス警部は、穏やかな気持ちになり、エメットに「分かった、絶対また連絡をするからね、僕の両親に宜しく伝えておいてくれ、愛しているよ、エメット」といって、電話の通話を切った。ルイス警部は、携帯電話を上着の内側のポケットにしまうと、作戦室に入って行った。するとルイス警部の上司の部下が、慌ただしく小走りしながら来て、ルイス警部に「ああ、ジョナサン警部、これからどうします?どんな手で捜査しますか?」といった。ルイス警部は、平静な様子で、ルイス警部の上司の部下に「今、捜査の事を考えていた所だ、昨日の報告会で聴いた事を元に、まずはデンマークの郵便博物館でのフランスへの不審な荷物の郵送時の住所の件を調べる。次はデンマーク王立図書館での、展示用のショーケースのネジ状の留め金が、壊された時に使用された酸性物質は特定出来たが、デンマーク国内では手に入らない、そしてデンマーク国外では一般に頻繁に使用されている物なので、この物質の入手経路を絞り込むのは難しい。それなので、この酸性物質の件は置いておく事にして、デンマーク王立図書館の具合いの悪くなった職員が盛られた毒物について検討したい。この毒物も特定が出来た、この毒物はヒメオコゼという魚の体に生えている棘から抽出したもので、デンマーク国内では手に入らない物であるが、そのヒメオコゼを食材として扱っているお店が、デンマーク国内にあるのが分かった。早速その料理店に、行ってみる事にしようと考えていた所だ」といった。ルイス警部の上司の部下は、ルイス警部に「ヒメオコゼとは、Grey-sting fishじゃないですか、スープにするとなかなか美味しいというあれですね。ジョナサン警部」といった。ルイス警部は、少し驚いた様子で、ルイス警部の上司の部下に「いや、僕には分からないが、そうなのか?そのヒメオコゼのスープは、美味しいと評判なのかね?」といった。ルイス警部の上司の部下は、自信がある感じで、ルイス警部に「料理の仕方次第で、とても美味しくなる、そんな物なんですよ、是非食べてみたいな。良い機会ですね、食べてみますかね、ジョナサン警部?」といった。ルイス警部は、たしなめる様な態度で、ルイス警部の上司の部下に「そのスープは、美味しいかもしれないが、これは事件の捜査なんだよ、そんな余計な考えはやめて、事件解決に集中するんだ。良いかね」と最後の語尾は、少し消えた様にいった。ルイス警部の上司の部下は、少ししょげた様子で、ルイス警部に「了解です、事件の捜査を頑張ります」といった。ルイス警部は、ルイス警部の上司の部下の元を離れて行き、ルイス警部の上司が座っている所へと歩いて行った。ルイス警部は、昨日の報告会で発表された、デンマークの郵便博物館での不審な荷物の送り先であるフランスの住所と、ショーケースの破壊に用いられた酸性物質と、職員に盛られた毒物の事をどう捜査すれば良いか考えていた。そしてルイス警部は、捜査の仕方を思いついたので、その事を伝えようとしていた。ルイス警部は、ずんずんと歩いて行き、ルイス警部の上司に「あのう、昨日の報告会で聴いた事から考え出した、捜査の進め方を提案したいのですが、良いですか?」といった。ルイス警部の上司は、座っている体をルイス警部の方向に向き直り、ルイス警部に「何かな?どうぞ話してくれ、何でも良い、捜査を進めようじゃないか」といった。ルイス警部は、背筋を真直ぐに伸ばして立ち、ルイス警部の上司に「昨日も思ったんですが、郵便博物館の荷物の郵送先のフランスの住所を、フランスの執行機関に調べて貰う事が、やはり捜査の一つとして捨て切れなくて、実行したいのですが、それは可能ですか?僕もデンマーク政府から依頼されて、内密に捜査して欲しいとの事であるのは、分かっていますが、どうもフランスの何かが絡んでいるのではないかと考えています」といった。ルイス警部の上司は、難しい顔をしながら、ルイス警部に「んん、そうだな、あまり大っぴらに話しを進める訳にはいかないんだが…、そうだな、フランス警察位の規模の組織なら、他国だが私から内密に捜査してくれと言えると思う。それでどうかね?フランス警察を急行させるという事で、ジョナサン警部?」といった。ルイス警部は、明るい表情になり、ルイス警部の上司に「はい、分かりました。では郵便博物館での不審な荷物については、その様な捜査をするという事で承知しました。そして具合いの悪くなった職員の件についても、捜査を進めたいと思います」といった。それからルイス警部は、ルイス警部の上司に、デンマーク王立図書館の、職員に盛られた毒物についての捜査方法を提案した。その提案をルイス警部の上司に受け入れて貰い、ルイス警部は、ヒメオコゼを食材として、扱っている店に向かう用意を始めた。ルイス警部は、もしかしたら犯人は一人では無く、複数の人物による、犯行ではないかと考えていた。その為にルイス警部は、ルイス警部の上司の部下に「今回のヒメオコゼの料理店に捜査をしに行くには、ピストルとライフルの装備をしなければならないと思う。自分に合った装備をして、これからヒメオコゼの料理店に向かう事にしよう。良いな」といった。ルイス警部の上司の部下は、自分の出番が来たと思っているのか、肩に力が入り、体が強張りながら、ルイス警部に「分かりました、了解です、直ぐに用意をして、出動します」といった。ルイス警部とルイス警部の上司の部下は、少しばかり時間が経ち、出動の準備が整った。そしてルイス警部とルイス警部の上司の部下は、警察車両であるZENVO(ゼンヴォ)・TS1GTの色はブルーの車に、二人は乗り込んだ。
少しの間、警察車両を走らせると、ヒメオコゼを料理として扱っている店の前に到着した。ルイス警部は、低い声で店を見つめながら、ルイス警部の上司の部下に「ここか、その例の魚を扱っている店は…、それではもう一度装備を確認してから、店の中に入り、話しを聴くことにしよう」といった。ルイス警部の上司の部下は、まだ捜査に対しての緊張が消えていない状態で、声が少しだけ震えながら、ルイス警部に「その様ですね、分かりました、装備の確認をします」といった。ルイス警部は、英国の警察官のみんなに支給されているピストル(拳銃)のSIG SAUER P226に弾がきっちりと込められているかを確認して、そして防弾ベストを着た。次にルイス警部の上司の部下もまた、ルイス警部と同じ様に、支給されているピストルのSIG SAUER P226の確認と防弾ベストを着た。ルイス警部は、険しい顔付きで、ルイス警部の上司の部下に「準備はできたか?では行くぞ」といって、警察車両のドアを開けて外へと出た。ルイス警部の上司の部下は、初めてのピストルを携帯しての捜査なので、緊張している様子で、ルイス警部に「準備完了です、はい、それでは行きます」といって、警察車両から降りた。ルイス警部とルイス警部の上司の部下は、ヒメオコゼを料理として扱っている店に向かって歩き出している、その店の外観はガラス張りで出来たブロックの様な建物であった。そのガラス張りで出来ている建物に、夕日の光が射してとても綺麗な色を放ち、建物全体を色とりどりに輝かせている、その様子はまるでステンドグラスの様だ。ルイス警部は、店の入り口の傍に来ると、ルイス警部の上司の部下に「では良いな、中に入ったら、まずは店の店員に聴き込みをするんだ。相手が何か不審な仕草をしたら、ピストルを引き抜いて構えるんだ、良いね」といった。ルイス警部の上司の部下は、緊張のあまりに口が乾くのを感じながら、目の瞳孔を大きく開きながら、ルイス警部に「了解しました、任せて下さい」といった。ルイス警部は、先に店内に入って行き、その後にルイス警部の上司の部下が店内に入って行った。すると店内もまた、明るくて、調理された食べ物が、ガラス張りで出来たショーケースの中に入っていて、そのショーケースは色鮮やかな魚料理でいっぱいになっていた。ルイス警部たちは、ショーケースが付属しているカウンターに近づいていった。見渡すと店内の座席は、カウンター席とテーブル席の両方が用意されている、料理はショーケースの中に置かれている物を持ってくるか、注文するかのどちらかだ。店内の店員は忙しくお客の接客をしていて、どうも話しを聴けそうもないが、丁度一人手の空いた店員がいた。ルイス警部は、ポケットからデンマーク政府からの依頼の証明書と英国の警察バッジを見せながら、手の空いた店員に「失礼だが、僕はデンマーク政府の捜査許可を貰っている、英国の警察の警部であり、特別捜査官のジョナサンだ。この店の店長に話しを聴きたいんだ、店長に会わせてくれないか?」といった。手の空いた店員は、ルイス警部の上司の部下に視線を向けると、ルイス警部に「彼は、いったい誰です?」と少しびっくりとして口を半開きにしていった。ルイス警部は、彼の質問を聴いて、いきなりの展開で、これは失礼な事をしたと思いながら、手の空いた店員に「彼も僕と同じ様に特別捜査官だ、説明が無くて悪かったね、それで店長に会わせて貰えるかな?」といった。手の空いた店員は、不思議そうに、そして何かを思い抱いている事がある様子で、ルイス警部に「そうですか?とても落ち着きが無いみたいに見えるけど、もしかして強盗とかじゃないかな?先程の見せてくれた証明書も警察バッジも偽物じゃないんですか?まあ、深追いしませんよ、自分の命が惜しいですからね。今店長を呼んできます」といった。ルイス警部の上司の部下の緊張気味の様子が、少し裏目に出たみたいだ。彼は息をするのも、苦労している様に見えた。ルイス警部の上司の部下は、ルイス警部に「どうかしましたか?私について質問を、されているみたいでしたけど、私から話しましょうか?」といった。ルイス警部は、落ち着き払った様子で、ルイス警部の上司の部下に「大丈夫だ、直ぐに店長が来る」といった。手の空いた店員は、店長のいる厨房へと向かって行った、その手の空いた店員が、店長と何やら話しをしているが、少しばかり聞こえて来た。手の空いた店員は、警告気味な口調で、店長に「今来たお客の中に、変わった連中が来ています。どうやら自分たちは、私たちの政府から依頼されて来た捜査官だというんです、でももしそうならニュースやら新聞やらの記事になるでしょう。疑わしいですよ、その上店長と話したいと言っているんです。彼らは表面上な所だけは捜査官の様な風格を出しているんですが、どうもびくびくしていて、何か犯罪を匂わせる様な感じをしているんです、どう思います?直ぐに警察に通報した方が良い気がします」といった。店長は、肥えている体格を厨房の外に向けながら、手の空いた店員に「そうか、またお前の空想癖が始まったか、まあ良いだろう、少し話しをしてくるから、他の店員にはそう言っておいてくれ」といって、厨房を出てルイス警部のいる所までやって来た。店長は、息を切らしながら、視線をルイス警部とルイス警部の上司の部下へと移しながら「私が店長だ、それで話しというのは何かね?」といって、額の汗を拭った。ルイス警部は、依然として穏やかに、店長に「先程のあなたを呼びに行った店員にも言ったのですが、僕たちはデンマーク政府に依頼されて来た特別捜査官のジョナサンだ。こちらではヒメオコゼを料理として出すと聴きました、それは事実ですか?そのヒメオコゼについて聴きたいんです」といった。店長は、嬉しそうな表情をしながら、ルイス警部に「はい、うちの店ではヒメオコゼを取り扱っています。あの魚は結構人気があるんですよ、他では滅多に料理として出されない為に、お客様は一度食べてみたいと思い、注文して下さるんです。すると味もかなり思っていた味と異なり美味しいみたいで、少し得をした気分になり、今度は友人を連れていらっしゃるんです。だからこのヒメオコゼの料理はとても評判が良い料理なんですよ」といった。ルイス警部は、興味を惹かれた様子で、店長に「ほう、そうですか、それでそのヒメオコゼという魚は、毒を持っていると聴いたんですが、食べられるんですか?後それからそのヒメオコゼの毒をどの様に扱っていますか?それとですね、ヒメオコゼを料理以外に活用したという事はありませんか?ほら、あの何処かの業者や人にヒメオコゼを売った事があるとかありませんか?」といった。それを聴くと店長は、少し機嫌を損ねた様子で、彼の目が鋭く光った。そして店長は、ルイス警部に「大丈夫ですよ、ヒメオコゼは体に生えている棘に毒があるだけで、棘以外には毒はありません。それにその棘は工場できっちりと取り除かれてから、うちの店に来るんです、だから毒を誤って食べてしまうという様な事は、ありません。それから誰かにそのヒメオコゼの棘を売りつけたという様な事は、絶対にありません。私はお金の為にこの料理店の運営を危険にさらすという事はしません、従業員のみんなの事を大切に思っています。だから彼らの生活を脅かす様な真似はしません。質問の答えになっているでしょうか」といって、少し目に涙を浮かべながら、口元をきゅっと締めた。ルイス警部とルイス警部の上司の部下は、料理に使う厨房やらを見せて貰った。ルイス警部は、話しの内容に不審な点は無いなと思いながら、店長に「分かりました、とても参考になりました。それでは僕たちは、これで失礼します」といった。店長は、優しい柔らかな表情を見せながら、ルイス警部とルイス警部の上司の部下に「分かって頂いてとても嬉しいです、もし良かったら次に来る時は、お客様として来てください。とても美味しい料理を、あなた方にお出しします、それでは」といって、手を振りながら、深く会釈をした。ルイス警部とルイス警部の上司の部下は、店内から外へ出る為に歩きながら、店長から聴いた話しを、振り返りながら考え込んでいた。そして店から出ると、ルイス警部の上司の部下は、先程までの肩を張っていた緊張が、すっかり無くなっていて、ルイス警部に「いやぁ、今回は何も収穫がありませんね、いったいどういう訳なのでしょうかね。どう思います?ジョナサン警部、やっぱり店長が一枚噛んでいるのでしょうかね、うむ」といった。ルイス警部は、ルイス警部の上司の部下の事などは余所に、返事もせずに考え込んでいた。するとルイス警部は、自分たちが乗って来た警察車両のZENVO(ゼンヴォ)・TS1GTで色はブルーの車の傍に差し掛かった所で、急に茫然とある建物を見入って、立ち尽くした。ルイス警部が見ている建物は、ヒメオコゼの料理店の裏手にある大きな工場だ。ルイス警部は「あれか工場というのは、確かめてみないといけないな」とつぶやいた。ルイス警部の上司の部下は、そのつぶやきを聞いて、ルイス警部に「えっ、何です。何か言いましたか?良く聞き取れませんでした、どうしましたか?」といった。ルイス警部は、暫くその場に立ち尽くしていると、警察車両のトランクを開けて、今回の捜査に必要と考えて持って来たライフルを取り出して、そのライフルを点検し始めた。ルイス警部は、夢中になっている様子で手を動かしながら、ルイス警部の上司の部下に「あの工場に行ってみよう、何か手掛かりがありそうに感じるんだ。直ぐに君もライフルの装備を準備してくれ、早速あの工場に、向かおう」といった。ルイス警部の上司の部下は、びっくりした様子で、言われた通りに、警察車両のトランクから小型のライフルを取り出しながら、ルイス警部に「はい、今やります。そうですね、私もあの建物は、なんか妙だなと思っていた所なんですよ。直ぐに用意が整いますよ」といった。ルイス警部は、警察車両のトランクからHECKLER & KOCK(ヘッケラー&コッホ:H&K)のMP5SD6を取り出して、ライトと照準器を装着させて、カートリッジ(弾倉)を三つ用意した。ルイス警部の上司の部下は、ルイス警部と同じ様に警察車両のトランクからHECKLER & KOCH(ヘッケラー&コッホ:H&K)のMP7A1を取り出して、ライトと照準器とサイレンサーを装着させて、カートリッジ(弾倉)を三つ用意した。ルイス警部とルイス警部の上司の部下は、ライフルの準備が整うと、二人は今居る所から、見えている工場に向かって歩き出した。二人はなるべく音がしない様に、そしてもしかしたら潜んでいる犯人に不意を突かれない様に、持っているライフルを犯人が潜んでいそうな所へと構えながら進んで行った。少しばかり歩くと工場の入り口に二人は到着した。ルイス警部は、捜査のベテランだけあって落ち着いているが、それとは反対にルイス警部の上司の部下は、体が先程より増して震えている様子であった。それは少し仕方無かった、ピストルの次はライフルの携帯だ、もしかしたら物凄い銃撃戦が待ち構えているかも知れないのだ。ルイス警部は、声の音を低く落としながら、ルイス警部の上司の部下に「工場の中に入ったら、素早く周りを観察しながら、ライフルを構えて何か柱などの物陰に隠れるんだ。相手は何人いるか分からない、それに発砲してくるかも知れないからだ。良いな」といった。ルイス警部の上司の部下は、無言のまま唯々頷いた。ルイス警部は、低くしている声で、ルイス警部の上司の部下に「良し、それではこれから突入する、良いかね?」といった。ルイス警部の上司の部下は、再び唯々頷いて、ルイス警部の突入の合図で、二人は工場の中へと入って行った。
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