第9話 新生活スタート

新生活が始まろうとしている。新生活はなんだかワクワクするものだが、僕にとっては久しぶりの事なので非常に緊張している。


学生なんかだと、小学生なら6年、中、高なら3年ごとに新生活が始まるといっても過言ではない。いや、さらに言うのであれば1年ごとに学年が変わるのだから毎年、春になれば新生活が始まるといっても過言ではないのかもしれない。


その毎年起きていた新生活が、久しぶりに自分に起ころうとしている。散々家でゴロゴロしていた、何も変化もない1日からついに変わる時が来たのだ!


あの事件から2週間。僕は怪我もスッカリ治り、退院した。


街はだいぶ落ち着いてきた。ハルシステムは無くなったが、なぁに、生活スタイルが昔に戻っただけさ。なんてことはない。病院だって普通に機能しているんだ。この街もまた元に戻れるだろう。


そして僕はと言うと、ジャックから指定された集合場所に向かっていた。


「ここか?」


僕は目の前にあるバーを見ていた。


ジャックに指定された場所にきたが、ここで間違いはないよな?


看板には、愚者の楽園と書いてある。


いやぁ〜〜、ネーミングセンスよ。入りづれぇよ!愚か者みたいじゃん。


僕はニューパラスシティから約2時間、セントラルシティの南部にある、小汚いバーの前に立っている。


この国は34の町々の連合国でできている。

各町々で固有の特徴があり、条例があるのだ。このセントラルシティは国の中央に位置する。セントラルシティを囲うように町々が連なっている。


セントラルシティはいわば都心といえよう!そりゃもうとてつもなく栄えてる!


なのにそのセントラルの中でも人気がないここ集合とは、これじゃ観光もできねーな。他に見るところもないし。


とりあえず僕はバーに入ることにした。今はお昼真っ只中だがやっているのだろうか?


「あ、空いてる。」


外見とは裏腹に内装はそれなりに綺麗であった。レトロな雰囲気がとてもいい味を出している。BGMもジャズを流していて落ち着く。


いいじゃん!とってもいいじゃん!しかしもったいねー!中がこんなにいいのに、外面が小汚く、愚者の楽園の名前の看板にするなんて!損だよ!


とりあえず僕はカウンターに座る。この時間、客は1人もいない。


マスターは白髪のオールバックですごい紳士的な風貌をしている老人だ。丸い黒サングラスをかけている。


すごい雰囲気ある人だなぁ。ザ・マスターみたいな人だ!


流石にこのままじっと座っているだけは悪いと思い、メニューを取った。


いや・・メニューの名前見ても全然わからん!何これ?一つも見たことない名前なんですけど!普通ラムとか、ビールとか、ウォッカとかじゃないの?どうしよう、適当に頼むか?


色々悩んでいると、メニューの右下にミルクの文字を発見した!


これだぁぁぁぁあ!こんな所に来てなんだけどぉぉ!これしかなぁぁい!


「マスター!ミルクを1つ」


少し恥ずかしかったが、他に客はいないし、メニューに書いてあるのだから構わないだろう。


マスターは黙ってミルクをコップに入れて僕の前に置いた。


すごい寡黙なマスターだ。イメージは人によって様々あるが、僕のマスターのイメージは気さくに話してくるタイプだから少し違和感を感じる。いや、こんなもんか。人それぞれだろう。僕も喋るのは得意じゃないし、このままじっとジャックを待つのもいいだろう。


しばらくするとカランっとドアの開く音が聞こえた。


「よっ!待たせたかの!」


「おせーよ!ジャック!1時間も遅れてんじゃねーか!本当にここ集合か疑った所だ!」


「すまん!すまん!許してくれ!わしも色々忙しかったんじゃよ!」


ふーん、そんな風にはみえねーけど、そうしといてやるか!


「んじゃ早速行きますかの!」


「どこ行くんだ?僕、行き先も何も聞いてないんだけど・・・」


「行けばわかる!ついてこい!荷物は持ってきたかの?」


「あぁ、言われた通り持ってきたぞ!」


ジャックの手紙には衣類や生活用品も全部もってこいと書いてあった。まぁ僕の部屋はめちゃめちゃにされていたからそんなに大荷物にはならなかった。本当に必要最低限のものをバックに詰め込み背負ってきた。


「よし、問題なしじゃな!それじゃマスター!」と言いつつ、ジャックがマスターに合図する。


マスターは察したかのように何やらゴソゴソ作業している。


えっ?ここで何かすんの?こっからまた電車とかだと思っていたんだけど!!


ジャックが手招きし、カウンターの内側に入る。


いいの?入って?しかもマスターと顔馴染みなのね・・・


カウンターの内側に入ると、床から下に降りる階段があった。


「地下室?」


「ほれ!いくぞ!」


ジャックが先頭をきって進んでいく。僕はマスターに会釈してジャックの後に続いた。


地下は真っ暗で、ジャックがランタンの灯りをつける。


「なぁ!このまま進んでいくのか?この先に何があるんだよ!」


「せっかちなやっちゃのぉ、まぁ黙ってついてこいの!」


むむむ、だって気になるじゃないか!すでに新生活が始まろうとしているってだけで割とワクワクしているっていうのに、お預けされている感じだ!


しばらく階段を降りていくと、目の前に大きなドアが現れた。


「なかなか大きいな!」


「こりゃエレベーターじゃよ!」


「エレベーター!?こんな所に??」


ドアが開き乗り込む。たしかに言われてみればエレベーターに見えなくもないが、何故こんな所に?質問が止まらなくなりそうだが、さっきジャックに止められたから黙っておこ!


エレベーターは上ではなく下に落ちていった。


これ以上まだ下に行くのかよ!


チンっと音がなりドアが開く!!


「うわぁぁ!すげーー!なんだここぉ!」


「ふっふっ!ようこそ!アウトローへ!」


扉の先は大きな空間が広がっており、まるで秘密基地みたいであった。地下にこんな大きな空間があったのかよ!


全体的に白く、サイドにドアがたくさんあった!


「ここは生活空間じゃ!ここで、皆、生活しとる!テレビ見たり、ご飯食ったり、遊んだり、運動したりじゃな!各部屋も用意されとる!」


「すげぇぇえ!すげーよ!これって!やべぇぇよ!」


興奮しすぎて言葉にならん!どうしようぅ!これってあれじゃん!完全にスパイものじゃん!新しい僕に生まれ変わっていいですかぁぁぁぁあ!アッハ!


「ニヤニヤして気持ち悪いぞ!元犯罪者くん」


「てめぇえ!人の心の中よむんじゃねぇぇぇ!妄想は自由だろうかぁぁぁぁあ!!それに元犯罪者ってまだデリケートなところいじるんじゃねーよ!」


ムカつくうぅぅぅ!こいつぅぅぅ!あれ?でもここで生活?あぁなるほど!そういうことか!だから生活用品持って来させたのね!つまり


「僕ここに住むの!?」


「いいじゃろ!通勤時間なし、残業し放題!」


「嬉しくねぇぇぇえ!」


僕達がいがみ合っている所に1人の男が近づいてきた。


「おい!ジャック!俺のバイク帰って来ねーんだけど、戻ってきたなら戻しておいてくれよ!」


男は赤髪で男にしては長い髪をしている。目は鋭く、人を威圧しているように見える。身長も高く、近くにいるだけで威圧感を与えている。片手にタバコを持っていた。


何この人!めちゃ怖い!目!目がすげー鋭いよ!怖いよ!


「おー!ギル!元気にしとったか!!紹介しよう!わしらの新しい仲間のルーカスじゃ!」


「ど、ど、どうも!はじ、はじめまして!ルーカスです!一生懸命頑張ります!」


めちゃめちゃあがっちまった!コミ症なのと、この人の威圧的な目でびびっちまった!やべぇぇよ!!どっしょ!頑張りますって何すんのかもよくわかんねーのに言っちゃったよ!


「おお、よろしくな、オレはギルバートだ!ギルでいい。」


「あ、はい!よろしくお願い致します。」


ガッチガチだった。面白い返しも思いつかないし、何答えていいかもわからん。


「そんなにビビらんでも大丈夫じゃよ!とって食ったりはせんよ!ギルはあんな目つきじゃが、基本頭パッパラパーのやつじゃ!タバコ吸ってるか、ギャンブルしてるかのどちらかじゃよ!ついでに話下手じゃ!」


「誰の頭がパッパラパーだよ、それよか早くバイク戻せって!どこにあんの?」


「ああ、あれな!壊れた!」


「え?うそだろ?お前絶対壊さないって!あれ限定モデルだぞ!!」


「悪かったって!しゃーないやろ!任務やったし!ほぼルーカスのせいなんじゃよ!」


おぃぃい!てめぇぇえ!こらぁぁぁ!人のせいにすなやぁぁ!あれか!あの時のバイクか!そーいや、お前借りてたっていってたな!この人か!この人なのか!オメェェが謝れやぁぁぁぁあ!


「ち、ちが、違うんですぅぅぅ!ぼ、僕じゃ、僕じゃないんですぅぅぅ!」


「わかってるよ!ジャックの嘘だろ!いじめてやるなよ!ジャック!」


「あらら?バレた?すまんすまん!今度なんか埋め合わせするからの!な!」


「わかったよ、仕方ねー!今回は許そう。」


そういうとギルはまた喫煙所に入っていった。まだタバコが吸い足りないのだろう。


でもギルって、なんだか見た目は怖いがめちゃめちゃいい人なんじゃないか!!ちょっと仲良くなれそう!


「ギルは優しいのぉ!ちょろいな!ワッハッハ!」


「てめぇえ!人を嘘で売ったくせにギルになんて言い草だ!このやろ!」


「ギルは見た目通り戦闘狂じゃぞ!」


え?!そこはそうなの?殺戮マシーンなの?こわぁ!


「あらぁ〜!ジャックじゃなぁーい!おひさぁ!元気ぃしてるぅ?」


ソファーに座って喋りかけてきたのはなんとも綺麗な女の人だった!


青紫がかった髪色で、ウェーブのかかった髪型肩まで伸びている。泣きぼくろが右眼にあり、チャイナドレスがなんとも言えない妖艶さを出している。手足が長くとても綺麗であった。


超どストライクのお姉さんだ!滅茶滅茶かわいいぃぃ!おっぱいが小さいが、そんなものどーでもいい!僕はあらゆるおっぱいを愛せる!大きさなど大した差ではない!


「よぉ!オリヴィア!任務は終わったのか?お互い任務に出て会えなかったからの!何ヶ月ぶりじゃ?」


「2ヶ月ぶりかな!ジャックは相変わらずね!元気そうで!んで、その子は?」


「紹介しよう!新しく入ってきたルーカスじゃ!まぁまだボスと面談してからじゃけど、」


「あ、ルーカスです!よろしくお願致します!オリヴィアさん!」


「よろしくね!アタシはオリヴィアよ!さんはいらないわ!同い年くらいじゃない?ルーカス何歳?」


え?同い年かな?すごい大人ぽく見えるけど、


「えっと20歳になります!」


「あら!同い年じゃない!仲良くしましょ!ルーカス!あらぁ!ルーカスなんだかかわいい顔してるのね!ふふ!」


え?いやぁ!そんなこと生まれて初めて言われたなぁ!すげー照れるんだけどぉぉ!やばいぞ!やばいぞ!職場恋愛とか萌える!


「ありがとうございます!オリヴィアはとても綺麗ですね!見惚れちゃいましたよ!なんつって!」


「さっきと違って饒舌じゃの、」


「うるせぇな!ちょっと黙ってて!」


「ふふ!元気がいいのね!男の子はそーでなくっちゃ!」


あぁ!楽しい!いきなりこんなイベントあっていいんですか!散々な目にあってきたからなぁ!報われちゃっていいですか!へへ!


「あーー!ギル!それアタシが目につけてたアイスよ!返しなさいよ!こらぁ!」


奥にいたギルさんに向けていきなり大きな声を上げるオリヴィア。


「うるせ〜!早い者勝ちだろ!知らねーよ!お前が目につけてたなんてよ。」


と言って歩き出していくギル


「んなぁにぉ!見てろよぉ〜!」


オリヴィアはギルに向けて右手を前に出し、何かを掴むような形を作る。


すると一瞬にして手元にアイスがオリヴィアの掌に掴まれていた。


一体なにが起きた?なんだろう、この感覚!僕はなんだか見たことがあるような現象だぞ?


「あっ!てめぇえ!ずりぃーぞ!能力は反則だそ!このオカマやろぉ!」


「へっへー!知らないわよぉ〜!取られる方が悪いのよ!この三白眼!」


と言って走って逃げていったオリヴィア、それを追いかけるギル。


元気いいなぁこの人たち!オリヴィアのさっきのはなんだったのだろう、一瞬にしてものがオリヴィアの掌に瞬間移動してきた。なんだかジャックが前に見せてくれたアレに似ているような、いや、そんなことよりもだ!


「ウソォォォォォォォオオオオオオオオオオオオ!オリヴィア!男なの!?」


「オリヴィアは男じゃよ!いや、オカマじゃよ!」


あんなに綺麗なのに!そこいらの普通の女性よりも綺麗なのに!そんなぁぁぁぁあ!


僕が泣き崩れている背中をジャックが摩る。


うぅぅぅぅ!この心の傷は深いぞ!


「まぁ挨拶も済んだし、行こうかの!奴ら鬼ごっこ始めちゃったしのぉ」


「ちょっと待て!それよか気になってたことがある!前から思っていたんだが、この際はっきりしてほしい!さっきのアレはなんだ!一体どういう力だ?ジャックの変身する奴と同じなのか?答えてくれ!」


「そうじゃのぉ、まぁいいか、話しておいた方が、いちいち驚かれなくていいかの!」


心臓に悪いしね!ここいらでハッキリさせようじゃない!ぶっちゃけめちゃめちゃ気になっていたことだ!これを機に聞かせてもらおう!


「いいかの!人には普段見えないエネルギーが体から発せられている。わしらはこれを闘気(バトルオーラ)と呼んでおる。誰がそう呼んだか知らんが呼ばれておるからそう呼べ!」


バトルオーラ?オーラ?なんかファンタジーな話だなぁ。


「優れた兵士になると闘気(バトルオーラ)

感じ取れるようになり、操ることが出来る。このオーラには特殊な効果があり3つの型に分かれるのじゃ!」


「なんかかっこいいな!いいなオーラ!」


「1つ目の型は行動型!人の動きや行動を具現化したりする能力じゃ!」


動きを?どういうことだろう?


「わしのこの能力も行動型じゃ!わしの能力は『化ける』!自分はもちろん、他の無機物も様々なものに変身させることが出来る!イメージで言えば、狐や狸が頭に葉っぱを置いて変身する話があるじゃよ!それと似たようなもんじゃ!妖怪変化に近いかもの!ちなみにオリヴィアも行動型じゃよ!」


化けるぅぅ?なんかピンとこないな!そもそも化けるって行動とか動きなのかもよくわからん。狐や狸の話もありゃ現実じゃないだろう。


「ふん!どうやらピンときてないようじゃの。まぁわしのはわかりづらいかの。基本人の言葉で言う、動詞にあたるものは行動型じゃよ!」


「ふーん、そうゆうものなのか、よくわからんけど、オーラもよくわからないし、僕的には!」


「オーラは魔法使いで言う魔力だと思えばいい。わしのは魔法を使ってると思え!」


「な、なるほど、じゃオリヴィアのは?」


「オリヴィアのは『奪う』!能力じゃよ!」


「なるほど、それでアイスがね!」


「2つ目は支配型!1つのキーワードを一定の範囲で支配することが出来る。それは物質でも概念でもいい。」


「ごめん?どういうこと?」


分からん!僕の理解が追いつかない!


「例えば自分が支配するのが水だとしよう。そうすると一定の範囲で水を自由に操ることが出来る。この能力はこの場所に水がなければ全く使えない。これが支配型じゃ!」


おおお!支配型かっけぇ!強いやん!たぶん!


「最後は変質型!物質の性質を自身が決めた性質に変えられる能力じゃ!例えば、この硬い壁も決めた性質を柔らかいなどであれば柔らかくすることが出来る。」


「なるほど、物自体は変わらないけど、壁は壁だけど柔らかくできたり、ベタベタすることもできるみたいな認識でいいのかな?」


「それで大丈夫じゃ!どうじゃ!これが能力についてじゃよ!」


「なんとなく理解はしたよ」


よく分からない部分もあるが納得するしかないみたいだしな、話も進まない。事実、現実として起こっているのだから認めよう。


でもそしたら、もしかして!僕にもオーラがあるわけでしょ!なに型かな?僕強くなっちゃう?最強でTUEEEEしちゃっていいですか?!無双してハーレム築いちゃっていいですかぁぁあ!!!


「阿呆!お主みたいなヘッポコが簡単に使えるわけないじゃろうが、ナメんな!これには、センスとキッツイ修行の果てに手に入れられるかどうかじゃ!優秀な兵士でも才能がなければ使えないこともある!ド阿呆が!」


「・・・・・」


人の心ん中見ないでくれ、、いいじゃなか!想像したくらい!夢見たっていいじゃない!可能性がゼロじゃないんだからさ!な!


「ほんじゃ、ボスへの挨拶もあるしそろそろ行こうかの!」


そうかぁ、さらっと聞いて忘れてたけどボスに挨拶があるのかぁ、僕普通のラフな格好で来ちゃったけど大丈夫かな?


僕たちはまっすぐ進み、大広場に出ると、そこには大きなモニターと、真ん中に長方形の細長い机が置いてあった。


会議室か?でかい机だなぁ。


左奥にさらに大きな扉があり、目の前まで行く。


扉の隣に、女の子が座ってゲームしてた。


「ボスは中にいるかの?リリィ!」


「お帰りジャック!帰って来たのね。ボスは中にいるわよ!」


なんとも可愛らしく女の子がそこにはいた。銀髪で、少し眠たそうな眼をしている。そして何故か白衣を着ていた!さらに巨乳であった!もう一度言おう!巨乳であった!


かわぇぇぇ!でっけぇぇえ!ウヒョーいい!


「ふーん、そいつがジャックが推薦してきた奴?ふん、なんでもいいけど、ジャックやボスがこいつを見て判断するのは勝手だけど、ワタシはワタシで勝手に判断させてもらうわ、こいつがどういう男かをね」


あれれぇ、きっついなぁ、手厳しんですけれどぉ。人の顔全然見ないでゲーム画面しか見てないし、こっち全然見てくれないぜ!


「信用たる人物かどうかなんて言うのはね、ここぞって時に現れるものよ、勝手に浮かれないことね。」


なんと言うドS!でも少しいいかもしれない!ぐふふ!


「き、肝に命じておきます!」


「んじゃ、入ってこいよ!ボスが待ってる。」


僕は扉を叩く!


コンコン!確か2回でいいんだったよね?すごい緊張してきたんだけど。


「どうぞ!」


「失礼します!ニューパラスシティからきました!ルーカスです!よろしくお願いします!」


「あぁぁあ!そんな固く並んで大丈夫だ!ほれ!そこに座りな!」


「あ、はい!」


僕は勧められるままソファに座った。


にしてもボスはとてもダンディな方だった。雰囲気からしてイケてるオジさんのようであった!少しウェーブのかかった髪をオールバックにしており、綺麗なヒゲがまたかっこよく決まっている。身体も老人とは思えないほど引き締まった体を服の上から見ても分かった。メガネがまた聡明そうに見え、また本当に聡明な方なのだろう。


どう見ても、映画のハリウッドスターのようなカッコいいじーさんである。男なら誰しもこんな歳の取り方をしたいと思う程である。


「ジャックから話は聞いているよ!ようこそ!アウトローへ!ワシはここのボスのゲーアノートだ!よろしく!皆からボスと呼ばれておるからそう呼んでくれ!」


「はい!ボス!」


確かに、ボスという風格を持っている。でもどことなく優しさもあふれていて、この人と喋っていると暖かかった。


「ジャックの推薦だが、君の口からもう一度話してくれ、君のことを!」


僕は、1から全て話した。これまでの人生や、自分の気持ちを、あの事件のことも!


ボスは優しく僕の話を受け止めくれていた。なんだか少し気恥ずかしかっだが、それと同時に嬉しかった。こんなに自分のことを話したのは初めてかもしれない。


「そうか、色々辛かったんだね!話してくれてありがとう。では1つだけ質問してもいいかな?」


なんだろう?質問?


「ここは普通の会社とも違う。少し特殊なところだ!正直命を賭ける所でもある。君は人々のために命をかけられるかい?」


生半可な覚悟じゃできないってことだろう。それほど大変な仕事だ!でも僕はあの時決めたんだ!もう迷わない!


「ええ、もちろん!」


「そうか」


そう言ってボスは笑った。


「でもいいんですか?僕みたいなのが入れるんですか?一応警察組織ですよね?警察学校も行ってなければ、僕一応犯罪者の部類に入るんですけれど、それに銃も使ったことないし、、」


気になった所だったので聞いてみた。ここの仕組みはどうなっているのだろう?試験とか受けてないんだけど大丈夫?


「あああ!大丈夫だよ!なにせここにいる奴らは、ほとんど警察学校なんて行ってない奴らばかりじゃ!さらに元犯罪者の奴らじゃよ!それで警察からも、社会からも弾かれもんの集団。それがアウトローじゃ!」


「ええええええええ!いいんですか?それ大丈夫なんですか?」


「問題ない問題ない!大丈夫だよ!はっはっはっ!それに聞いた話、君は技術班だろ?期待してるよ!きっと君の力は役に立つ!これからよろしくね!」


「よ、よろしくお願いします!」


「この後すぐ会議になるから待っててくれ!扉出てすぐの机でみんなでするからよろしく!」


そう言われて僕は部屋を出た。


あんなんで大丈夫なのだろうか?僕はとんでもないところに就職してしまったんじゃないだろうか?


まぁ考えても仕方ないし、やっと手に入れた仕事!頑張ろうじゃないか!可愛い同僚もいるしね!


んん?ジャックがどこに行ったかキョロキョロしていたら何やら誰かと喋っていた。


「おーい!ジャック!ボスと話終わったぞ!」


「おお!ルーカス!紹介しよう!ゼルダだ!」


「はじめまして!ルーカスです!よろしく!」


「はじめまして!ゼルダです!よろしくね!」


ゼルダは黒髪のポニーテールで左眼に眼帯をつけていた。顔は端整な顔立ちをしておりはっきり言ってイケメンだ!クッソ、これは僕でもイケメンと認めざるおえない。なんていう甘い声、アイドルか!


「かっこいいですね!モテるでしょ!ゼルダさん!」


「えっ!あ、そー見える。」


ん?反応がおかしいぞ?なんだかすこぶる落ち込んでいる。何故?


「そうだよねぇ、私っていっつもそう、はぁ〜、私だってね!可愛いぬいぐるみとか、甘いスイーツとか大好きなのになんでみんなそうやって!おっぱいか!おっぱいがないからか!チクショー!」


「あれ?え?どゆこと?なになに?」


「おいおい!ゼルダは女の子じゃぞ!」


なにぃぃぃい!た、確かに言われてみると、女の子にも見えてきたぞ!なんかいじけてる姿が可愛いなぁ!この子は貧乳だからこそ魅力がある気がする!


「いやいや!僕は貧乳も巨乳も、全てのおっぱいを愛しています!」


「へぇ?え?え?え?」


ゼルダさん、めちゃめちゃ赤面してた!ヤベェ、いきなりセクハラしてしまったぞ。


「お主、いきなり性癖バラされても困るぞ!初対面でやるのぉ」


いやぁぁぁぁ!フォローしようと思ってぇぇ!ミスったぁぁ!


「おおーい!そろそろ会議はじめんぞ!」


ボスが皆を集め始める。


「ルーカス良かったの!会議があるときは十中八九、任務があるときじゃ!お主の初任務になるかもしれんぞ」


「初任務・・・」


僕の中で不安と興奮で心臓が暴れまくっていた。やはり新生活っていうのは心をドキドキワクワクさせてくれる物らしい!

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