第10話 魔石と列車の町 デリックレーン
なぜだ?何故こうなってしまったのだろうか?
薄明かりがついた部屋に、バスローブを着て、仲良く2人で寝てくださいと言わんばかりに置いてあるダブルベット。
カップルで泊まりに着たのならきっと甘い一夜を過ごしそうなこの部屋に、僕の隣で寝ているオリヴィア。少しはだけたバスローブから覗かせる鎖骨についつい目がいってしまう。
落ち着けぇぇ!落ち着くんだ僕!!素数を数えろ!素数を数えるんだ!そう!オリヴィアはたしかに可愛いくて、セクシーだが彼女は男の娘。この事実を目の当たりにして動揺する必要があるか?
いや、いやいや、待て待て!ちょっと待てよ。誰がオリヴィアが男の娘だと言った?そう、たしかジャックが言ったんだ。だが僕自身オリヴィアが男の娘であると確認したわけではない。これを機に確認することが僕の精神を落ち着かせることができる唯一の手段ではないか?
いや、ダメだ!もし仮にオリヴィアが女の子であったならば、その行為は変態行為に他ならない!訴えられたらまず勝てないぞ。だがこのままでは僕の理性が保てない!
むしろこれはOKサインじゃないのか?だとしたならば僕は漢としていくべきなのではないであろうか?ここで何も手を出さないという紳士行為に則ったチキンを発動させることがオリヴィアを傷つけることになるのではないか?
くっ!!どうする?どうすればいいんだ僕ぅぅぅ!
「ううぅん、あれ?まだ起きてるのルーカス、初任務で緊張してるの?いいよ、お姉さんが添い寝してあげる。おいで!」
そう言うとオリヴィアは僕を抱き枕のように抱きしめる。
アババババババババババババ、心臓が!心臓が痛い!どうすれば!僕は、僕は!あぁぁぁ、一体どうしてこうなってしまったんだァァア
12時間前
「それじゃ会議を始めるぞ」
ボスの呼びかけに応じて、みんなそれぞれ会議室に集まってきた。
会議室は真ん中に長方形の大きな机が置いてあり、囲うように椅子が並べてあった。
えっと、僕はどこに座ればいいのだろう?適当でいいのかな?でもこれで順番とかあったら恥ずかしいな、みんなが座って行くのを見てから座るか。
「ルーカス、お主はここに座っとれ!」
テンパっているのがバレたのか、ジャックに指定してもらって椅子に座った。
当然ボスは正面に座っている。僕はボスから見て右側の位置だ。
次々とみんなが座っていきボスが話し始める。
「さて、全員揃ったな!では、始めよう。」
「えっ?あれ?」
僕がさっき知り合った人たちが全員揃ったなにもかかわらず、3つほど席が空いている。
「ん?どーした?ルーカス」
「いや、あの、席がまだ空いているけどみなさん揃ったのかなぁっと思いまして、、」
「あ〜〜、すまん、すまん、他にもまだメンバーはいるんだけどな!今、他の任務に当たっていてね。今いるメンバーは揃っているから大丈夫だよ。」
「あはは〜〜、そうなんですね、すいません。話止めちゃって。」
なんかこの空気やだぁ、スベったみたいじゃないか、静かにならないでくれ〜。
ボスは軽く咳払いをし話始めた。
「では、会議を始める!みんなには新たな任務が入った。今回はこの男を調べて欲しい。」
僕から見て右側の奥の壁に映し出されたスクリーンに男の写真が映る。
男はトンガリ頭で小太りのいかにも小悪党みたいな顔をしている。
性格悪そうな顔してんなぁ、ああいう奴は学生時代の頃、絶対強い奴の隣で叫ぶタイプだな、虎の威を借る狐って奴だ。
「この男の名前はタルボット・ポトロロフ。現在はストーンファクトリー社社長だ。」
「ストーンファクトリー社と言えば、あの魔石で大きくなった会社の?」
オリヴィアが確認するようにボスに言う。
「その通り。魔石と列車の町デリックレーンの発展に貢献した会社だ。」
何?魔石って。そういえば僕って他の街にほとんど行ったことがないな。いきなり何言ってるかわからないや。
質問しようかな、いや、でも聞きづらいな。誰が聞いてくれないかなぁ。
僕が他力本願で頼むように心の中で祈っていると、
「魔石って何?聞いたことないんだけど。」
ありがとう〜〜!ギル!やっぱりね!わからないことは聞かないとね。流石だよ!ギル!素晴らしい。
「魔石っちゅうのは、人間にあるオーラに反応してエネルギーを発する不思議な石のことじゃよ。その石がデリックレーンの町で取れるんじゃ。それをストーンファクトリー社が加工して生活用品を便利にしていったんじゃよ。今や、町の中だけにとどまらず全国展開する勢いじゃよ。いくつかの町では、既に取引が行われているところもあるくらいじゃ。」
な、なるほど、わかりやすい説明ありがとうございます。でもやっぱりジャックは知ってやがったか。すごいな。
「はーん、その社長の浮気調査でもしろってか?」
冗談混じりでギルが嘯いていると
「んなわけないじゃない。そんな事探偵でも雇ってやればいいじゃない!バカなの?ああ、バカだもんね。失礼。」
凄い毒でギルを罵るリリィさん。こわぁい!
「冗談だっつーの。」
イジけた。あーあ。
「話を戻しましょう。ボス、お願いします。」
冷静に話を戻してくれたゼルダさん。ボスも苦笑いしてるし。
「ありがとうゼルダ。話を戻そう。この男には、ある黒い噂がある。」
黒い噂?
「どんな噂なんです?」
「闇とつながっているのではないかと言う噂じゃ。」
闇、、、、
「つまり、反社会団体と繋がりがある、もしくは援助、参加している可能性があるって事じゃな?」
ジャックの問いに頷くボス。
「詳しい内容まではわからん。さらにあくまで噂の域を超えてはいない。が、こいつには黒い噂が絶えなくてな。調べてきて欲しい。今回はリリィ、ジャック、オリヴィア、ギル、ゼルダ・・・そしてルーカス!お主たちで奴を調べ、もし黒であるならば、奴の目的とその目的の阻止をして欲しい!頼むぞ!」
「了解!ボス!」
みんなが声を揃えて答える。
「今回、リーダーはリリィとし、サブリーダーでジャックを付かせる。ジャックには今回初めての任務、ルーカスのサポートも頼むぞ。」
「了解じゃ」
「よろしく頼むぞ!ジャック!」
「足引っ張んなよ!ルーカス」
うっせぇよ!フォローしてくれや!
そうして僕達は魔石と列車の町デリックレーンへと向かっていった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「うおぉ!すげぇぇえ、ここが魔石と列車の町、デリックレーン。」
町は鉱山に囲まれて町に色とりどりの列車が走り回っている。
町には活気にあふれており道行く通りに人々の声が聞こえる。
どうやらこの町は商人の町としても盛んらしい。いたるところからヘイ!!らっしゃーい!の声が飛んでくる。
「あら〜!お兄さん!どう!うちのお魚!今朝輸入したばかりの新鮮なお魚よ!今なら5パーセントオフにしちゃうわ!どぉーお?お買い得よぉぉお」
魚屋のおばちゃんに捕まった。
「いえ〜、ちょっと急いでいるもので〜、すいません〜。」
にしてもここは山と岩に囲まれていて、水場がないな。だからなのか魚は他の町から輸入したのだろう。ニューパラスより高いや。
「何してるのルーカス!!こっちよ!付いてきなさい。」
冷たくリリィさんに言われた。でもなんだか嫌いじゃない自分がいる。新たな扉か??げへ!
「おおおおおお〜!こりゃ凄いな。」
大広場に出ることができた。真ん中には大きな噴水があり、それを囲うように路面電車の線路が張り巡らされている。
プップーー!と大きな警笛の音が鳴る。
なんだ?どっからだ?
一斉に色とりどりの列車がこの大広場に集まってきた。
「ほら、そこは危ないからこっちおいて、ルーカス。」
「あ、ありがとうございます。ゼルダさん!」
自然と手を出せるなんてやっぱりイケメンだなこの人。
「一体何なんですか?これ?」
「この町はね。この大広場、アルコバレーノ広場に1時間ごとに各地区に向かう列車が一斉に集まるのさ。町は7地区に分かれてあってね、赤、橙、黄、緑、青、藍、紫と言った7色で分けられている。」
へぇ〜、色で地域をね。でも別に町自体に色がついてるわけじゃないんだよな。
「赤地区には赤の列車が、青地区には青の列車が周っていくんだ。そうして各地区にこの広場から散って行って、1時間後、ここに戻ってくる。噴水の周りをゆっくり回っている間にいきたい地域の色の列車に乗って行く。そうやって人を運んでいる町なんだよ。」
「よく知ってますね、ゼルダさん。流石です!博識なんですね。」
「いや、、私も資料を読んで知っているだけで、ここに来たのは初めてなんだ。そう褒めるのはよしてくれよ。恥ずかしいじゃないか。」
あれ、なんか、キュンってくるな。かわええぞ!
「でも改めて、こうして目の当たりにすると知識で知るより目で見る方が感動が大きいな。」
「そうですね、、いかに自分が狭い世界に生きていたか思い知らされますよ。」
少しカッコつけた言い方になってしまったが、本当にそう思ったのだ。
「2人とも何してるの、早く来て、もうそろそろ着くわよ」
またリリィさんに怒られてしまった。流石に初っ端で印象を悪くし過ぎるのは良くないぞ。
ものの5分と経たないくらいで僕は目的地に着いたことにすぐ気がついた。
いやぁ、どうなのよこれ。
それはすごく最近、見た覚えがある看板だった。看板にはこう書かれていた。
『愚者の楽園』
「何、ここって全国にあるの?全国この名前なの!?」
「いいじゃろ?わかりやすくて。わしらの隠れ家みたいなもんじゃよ。いや、秘密基地か!」
「愚者ってなんだろうな、オレは未だに意味を知らん。」
「オメーの事だよ、クソ三白眼!バーーカ!ケッケッケ!」
「んだとコラ!ゲテモノオカマが!!気持ち悪いんだよ!厚化粧!」
店の前でギルとオリヴィアが喧嘩を始めた。この2人仲悪りぃな。いや、ある意味仲がいいのか。
「いい加減にしろよてめぇら!早く来なさいよアホンダラども!全然進まないじゃない!」
「あ、はい、すいません。」
僕とギル、オリヴィアが謝った。ついにリリィさんがブチ切れだ。それはもう鬼の形相で。美人の怒った顔って、、、嫌いじゃない!ニコ!!大概、僕もしぶといのである。
僕達は急いで店に入る。
「やぁマスター、よろしく頼むよ。」
ゼルダさんがマスターに挨拶をしている。まてよ、待てよ、あのマスターの顔、セントラルにいたマスターと同じ顔じゃねぇぇか!同じ人?双子?ソックリさん?
「いい?話を進めるわ!みんな席に座って!これから任務について計画を練るわ。」
リリィの声に皆反応して僕達は無造作に席に着いた。
「マスター、資料を!」
「かしこまりました。リリィ様。」
「まずこれから情報収集に入るわ。町にでてタルボットに関する情報を、手分けして集めて来てちょうだい。ワタシ達には圧倒的に情報がない。タルボットの有力な情報を掴まない限り前には進めないわ。」
情報収集か、これなら安全そうだな。それにそれなりに僕にも手伝えそうな分野だ。
「この町は7地区に分かれているので2人1組になって2地区分、収集を行ってもらうわ。ワタシとギル、オリヴィアとゼルダ、ジャックとルーカスで集めてもらうわ。オリヴィアとゼルダには悪いんだけど3地区分行って来て欲しいの!よろしくね。」
「え〜〜!アタシらだけ多くない〜?平等じゃないじゃない〜〜!ぶー」
「ワタシは頭空っぽのギルとペア、ジャックは新人のルーカスのペア。3つ出来そうなのはあんたらのペアしかいないのよ。」
「うぅぅ、ちぇぇ、わかったわよぉ〜」
ジャックとペアか、なんだか少し安心するな、まだみんなの事はそんなに知らないし、ジャックとの方がいくらか気持ちが楽になる。
「それじゃ今から3時間後、またここに集合で!解散!」
「そんじゃ行きますかの、初任務だからって張り切り過ぎるなよ!ルーカス」
「へいへい、せいぜい足を引っ張らないように頑張りますよっと」
僕とジャックはとりあえず広場まで戻って行った。ここから僕達の担当する地区に行った方がわかりやすいと思ったのだ。
「えっと、僕達が担当するのは赤と橙の地区かな?」
「レッド地区にオレンジ地区じゃよ。まずはレッド地区から行ってみよう。さっき列車は行ってしまったみたいじゃし歩いての。」
ジャックと歩きながら僕は聞いてみる。
「で?これからどうするんだ?どう情報収集するの?」
「そりゃもちろん人に聞いてじゃよ。」
え!?人に聞いて回るの!?こりゃなかなか大変な作業になりそうだ。
「噂って奴は人から人に伝わるもんじゃ。人に聞いた方が手っ取り早いしの。それにタルボットの事を聞くぐらいならそんなに難しいこともないんじゃないかの。奴はこの町を発展させた社長じゃ。」
「な、なるほど、じゃ、じゃっ、あそこのオバさんに話しかけてみようか!!な!な!」
「慌てんなよ、いきなりお前みたいな挙動不審な男が話しかけて来たら気持ち悪くて殴りたくなるわ。」
「それはお前の対応だろうが!なんでいきなり殴られなきゃならねーんだよ!せめて逃げ出すとかにして!」
自分で言ってて傷ついた。こいつと喋ってると心に傷ばっか作ってくな。
「こういうもんはの、場所と人を選ぶんじゃよ。」
そう言ってジャックが立ち止まる。
「ん?ここって酒場?」
ジャックはぐんぐん入って行く。
ちょっとまってよ!
酒場は昼間にもかかわらず、人が多く来店しており、酒を飲んで騒いでいた。どうやらこの店は繁盛してるっぽい。
僕らはカウンターの席に着いた。この中から聞いていくのかな?
「オヤジ、ミルクを2杯。それに何かつまめるものを1つ頼む。」
「おい!ジャック!いいのか!?」
なんかサボってる気分なんですけど。いいのか?先輩流のサボり方を伝授してるのか!?
「いいんじゃよ。これで。この店で一番噂話を聞いてるのはここのオヤジじゃよ。オヤジと話すきっかけを作るんじゃよ。」
な、なるほどなぁ、
「はいよ、ミルクに枝豆。」
ガタイのいい無愛想なオヤジは僕達の目の前に頼んだミルクと枝豆を置いた。
「なぁオヤジ、どうじゃ?最近は、随分繁盛しているようじゃが。」
「そうでもねぇよ、普通だ。」
「ほう!それで普通か!それは羨ましい限りじゃの。なあ!わしらはな記者をしてるんじゃがの、何か面白い話とかないかのぉ〜〜」
「さぁな、特に変わったこともないしな。」
オヤジは皿を拭きながらぶっきらぼうに答える。
「そうかぁ、じゃこの男について何か面白い噂話など聞いてないかの?」
そう言うとジャックは胸ポケットからタルボットの写真を出す。
オヤジが写真を見ようとしたその時
「おうおう!知ってるぜぇ!なぁ兄ちゃん達!俺らにレポートしろよ!なぁ!」
隣で呑んでいた無精髭のおっさんが絡んできた。
うへぇ、メチャメチャ酔ってんなこいつ。顔真っ赤。酒クセェ。
「ほう?何か知ってるのかの?」
「あぁあ!知ってるぜぇぇ!だがなぁ〜、タダとはいかないねぇ〜〜!兄ちゃん達!ここの町の人間じゃねーだろ?」
「何故そう思うんじゃ?」
「ふっん!その質問してる時点で答えてるもんだよ。兄ちゃん。」
「どう言うことじゃ?」
「この町にいて、その男のことを聞いて回ろうって奴はいねぇって事さ。」
「なるほどの。」
えっ、怖!どんな男だよこいつ!
「なぁ兄ちゃん!俺とちょっとしたゲームをしようぜ!なぁに簡単なゲームさ!このゲームに勝てば情報をやるし、兄ちゃん達のそのミルク代も俺持ちにするぜ!」
「負けたら?」
「兄ちゃん達は俺たちの酒代を払ってもらう!どうだ?」
「頼むぜ、兄ちゃん!へへへ!」
後ろにいたおっさん達も乗ってきてしまった。
「いいじゃろう。」
えええええ!いいのぉ?いいのかよぉ〜!僕らにデメリット大きくない?金あんのかよ。頼むぜ、ジャック!
「そうこなくっちゃな!ポーカーで勝負をしよう!」
そう言うとおっさんはポケットからトランプを取り出した。
僕達はテーブルに移動する。
「おい!これを配ってくれ!」
後ろにいる他の客を呼んだ。
「え?俺ですかい?」
「ちょっとまってくれ。それはお主の取り出したトランプ。イカサマがないか確認させてくれないかの?」
「いいぜぇ!別に!当然の権利さ!」
ジャックはトランプを手に取り入念に見ている。
「あ、それとオヤジ!もう一杯ミルクを頼む!」
「あ?いいのかよ?兄ちゃん!」
「お主が奢ってくれるんじゃろ?」
「言うねぇ!」
ジャックはトランプを呼ばれた客に返し、おっさんは配るように勧める。
(馬鹿めぇ!カードには仕掛けは何もしてねーよ!適当に選んだ客だと思うだろうがこいつは俺の仕掛け人さ!)
カードが5枚ずつ2人の前に配られた。
(クックック!こちらは10のスリーカード!あっちにはブタしかいっていない。これでも勝てるが念には念だ!)
「まぁ2枚チェンジでいいかな。」
(さぁ、奴は何枚チェンジする?まぁ何枚チェンジしても同じだがな!)
パリンッと大きな音が響き渡った。どうやらビールがテーブルから落ちたみたいだ。
「ん?あ、俺のビールが!?ネズミが当たったのか?」
ジャックは何も言ってこない。
「ほれ!兄ちゃんは?何枚チェンジだい?」
「ノーチェンジじゃ!」
「はぁっ!?」
(ハッタリだ。いや、ハッタリをする意味がない。一回きりのこのゲームで降りることはできない。イカサマか?)
おっさんは交換した2枚を確認する。
(やったジャックが2枚きてフルハウスだ!これで勝てる。)
「それじゃショウダウンだ!」
2人が一斉に手札を公開する。
「俺は10とジャックのフルハウスだ!俺の勝ちだろ!」
「わしは、エースのフォーカードじゃよ!」
「はぁっ!?馬鹿な!!」
「わしの勝ちじゃな。」
「クッソォォォ!仕方ねぇ!」
「ほれ、このタルボット等いう男について教えてくれの。」
「しゃーね、ゲームはゲームさ!いいか、あくまで噂だがな、このおっさん、新しい事業を始めたみたいなんだってよ。」
「新しい事業?何を始めるんじゃ?」
「どうやら武器を売ってるみたいなんだ。とても大きな金が動くらしい。」
武器!?武器だと?それって不味いんじゃ?
「まぁどんな武器を売ってるかは知らねーけどな。」
「そうか。ありがとの!いいネタになりそうじゃ。ここの奢りは頼むの!」
「へいへい、わかりやしたよ」
僕とジャックは酒場をあとにした。
「なぁジャック、さっきのポーカー、どうやって勝ったんだ?」
「なんじゃ、イカサマって気付いておったんか?」
まぁ相手もイカサマしてると思ってヒヤヒヤしてたんだけど、まさかジャックもイカサマで勝利するとは。でもどうやったんだろ。さっぱり分からん。
「なぁーに、最初、奴のトランプを見ている時に強い役のカードをアリに化けさせてわしの手のひらに隠した。丁度オヤジにミルクを頼んで挑発来た時に視線を外しての。」
え?そん時に?まじか。
「そのあと、新しくもらったミルクをネズミに変えて、奴のビールを落とし注意をそらした時に、貰った5枚のカードをアリに変え、持ってたアリをカードに戻しただけじゃよ!」
すげぇな、抜け目ねー!
「ほれ!記念にやるよ」
そう言うとジャックはブタの5枚のカードを渡して来た。
いらねー、なんの記念だよ。
「にしても、奴の噂。本当ならかなりやばいの。どんな武器かは分からんが嫌な予感がする。この事についてもう少し聞き込みをしてみるかの。」
「そうだな。やはり奴はテロリストと繋がってんのかな?」
「可能性は高いの、今はまだ情報が少ない。」
それから僕達は聞き込みをしたがこれと言ったものは出てこなかった。
「あーーー!もう!疲れたぁぁ!なんの手がかりもなし!それにこんだけ歩いてたら疲れてきた。みずぅぅうう!飲み物ぉぉぉ!」
「うるさいやっちゃのぉ!全くしょうがない奴じゃ、さっきの交差点近くに美味しそうな飲み物が売ってる店があったから買いに行ってやるわい。」
オメーも喉乾いて、目星つけてるじゃん!
「ジャック行ってくれるの!やっさっしぃぃ!」
「適当に買ってくるから、お主はここで休んでおれ。」
「はぁぁぁい!よろしくですぅぅ」
にしてもあっちぃ、歩き回ってたらこの日差しがきつくなってきた。坂多いし!全く。いい情報はないしさぁ。
日陰で少し休みながらジャックを待っていと突然
僕は何かに突き飛ばされた。
「いってぇぇ。なに?何事だ?」
僕は仰向けにびっくり返し背を地につけていた。なにやらぶつかった拍子に誰かが僕の身体の上に倒れてる。
よく見てみると、フードを被っていて見づらいが、褐色肌の金髪美少女だった。
え?え?
美少女と目が合ってしまう。
「あ、あの!助けてください!お願いします!」
「へ?????」
この出会いが物語を大きく動き始めるとは、この時の僕には全く思いもしていなかった。
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