言葉を話せず、動くことの出来ない木の 過ごした日々
- ★★★ Excellent!!!
一本のケヤキの木を主人公にした物語。
童話のように、可愛らしい、目線で描かれながら、
ケヤキの木に宿る感情は、人間らしく。
取り巻く環境や、出会う人々との、
言葉を介さぬ、交流は、温かさに包まれます。
言葉を話せず、動くことの出来ない木の
過ごした日々、流れる年月が、
描かれています。
若い頃、
新しい街の、公園へ植えられたケヤキの木。
動かぬ木だからこそ、同じ場所に立ち、
見える景色と、長い年月をかけ、
動いて行く街の人々や、社会。
地域の環境など。
そこに暮らす人々の成長と、環境の変化。
訪れる困難に、
向き合う様子が、
時の流れを通して、間近なものに感じられます。
くすぐったい気持ちで、
ケヤキの木が見守った、
敬三と君枝。
やがて、ケヤキの木は、隆也と出会います。
そして、同じ公園に植えられた、若いケヤキの木ルーク。
人々とともに、
ケヤキたちも、変化してゆきます。
年月や家族、地域。
やがて迎える老い。
優しい視線でそっと、ケヤキの木のように、
寄り添ってくれる物語です。