人と木の絆

ある公園に大きな木があって、そこを訪れる人達を静かに見守っている…。


でもそれは決して穏やかで平和で長閑なだけの物語ではありません。そこに住む人達の挫折もあれば失恋もあります。世の中が繁栄している時代もあれば厳しい時代もあります。そしてある日大きな地震に見舞われ、木自身もその身に取り返しのつかない傷を負ってしまうのです。


この木は人々を見守っていますが、それは決して一方通行なものではありません。人々は初めは目的があるかもしれません。木陰を日よけとしたり、木陰のベンチを逢瀬の場所にしたり、はたまたその幹を剣道の練習相手にしたり。ですが次第にその木を愛し、大切にしたいと思うようになります。故郷に戻り木に心情を告白する若者、ゴミを取り除く夫婦、年月をかけ木の歌を作る男女、心を込めて木の絵を描く女の子…。


この物語には、日本人の自然や風土との繋がり方が表れていると思います。そして常に起こる出来事に気持ちを揺り動かされ、どんどん先を読みたくなる物語です。

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