1-11 クールで、ホットな、ナイトプール

 智奈は、メイドレストランのメイドであり、大富豪のお嬢様である。

 さっき言った通り、俺なんかが釣り合うわけがないのがわかるだろう。

 何故こんなお嬢様がメイドレストランで働いているかというと、俺と智奈が出会って仲良くなった時に、俺が喜ぶことをしたかったらしく。

 それがメイドレストランのメイドになって、俺や俺のようなオタク男達にご奉仕して、いつか俺に相応しい、俺から一番愛される女性になるということらしい。

 お前は何を言ってるんだ、それなんてエロゲ、と思うだろう。俺もそう思う。

 まあ……俺が智奈とここまで仲良くなったのは、そもそも智奈をあの危険な事件から助けたことがきっかけだし、それで俺を愛してくれるのは嬉しいのだが。

 もうちょっとまともな方法はなかったのか……と思わなくはない。




 --場所は移り変わって。

 うわ、めっちゃきれい……語彙力が低下しそう。

 ていうか、智奈の家にこれがあるのは予想はできたが、やはりこういうのは俺みたいな陰キャキモオタ野郎とは無縁かつ眩し過ぎるんだよなあ……


 ここは、ナイトプールである。


 俺は既にトランクス型の水着とパーカーに着替え、女の子達を待っているところである。

 当然俺達は水着など持ってきてないのだが、『宝園グループ』がファッション・アパレル業界にもパイプがあり、俺達に水着を提供してくれたのだ。

 宝園家の召し使いの人達も、女の子達はともかく、よくもまあ俺みたいなどこにでもいるような陰キャキモオタ平凡貧弱男子大学生に、快くここまでしてくれるものである……

「智奈お嬢様を救ってくれた恩人だ!」

 と言ってくれた人もいた。とはいえ、俺は智奈がお嬢様だからそのおこぼれに与りたいとか下衆なことを考えているわけではない。

 智奈が純粋に、素敵な女の子だから、俺なんかどうなってもいいから、救いたかっただけなのだ--


 と、そんなどうでもいいことを考えていると。


「わ〜い♪ナイトプールきらきらですご〜いっ♡」

「イェーイ!アタシみたいな美女にマッチしてて最高だぜー!!」

「す、すごい……!私みたいな乱暴な女なんかに似合わないんじゃないかしら……」


 ありす、叶恵、幸果の三人が、プールや夜景に負けないぐらい、とても眩しい水着姿で現れた。

 智奈は後から来るのだろうか。


 もう、なんつーか。

 『飽きた』『気持ち悪い』『変態』と言われようとも、俺はやる。

 --この三人の水着姿の解説を。


 ありすの水着姿。

 ピンク色で、フリルが多くついている可愛らしいデザインのビキニだ。

 水玉模様のポップな見た目の、子供っぽいがキュートな浮き輪を持っている。別に彼女は泳げないことはなくプールも深くないのでいらないんじゃ?とは思うが。

 しかしながら、やはり大きな胸、むっちりしたお腹、ボリュームのあるお尻、撫で回してみたい太もも。何回見ても、ただただ圧倒される。

 背や顔立ちが幼い感じなのに、こんな極上の身体を持っている。それを見れば、大概の男は狂ってしまうだろう。


 叶恵の水着姿。

 黒色で紐で結ばれていて布地の少ないビキニ。

 何故か巨大な水鉄砲を持っている。インクを塗りたくるゲームの武器でありそうだな?叶恵も最近やってるって言ってたし。

 細いウエスト、そしてメリハリのあるモデルのような身体を自信満々に見せていて、こういう美女がナイトプールに合うんだろうな〜みたいなことを考えていた。水鉄砲はともかく。


 幸果の水着姿。

 青色のシンプルなビキニで、しかしながらそれが幸果の胸、ウエスト、お尻、脚といった抜群のスタイルをわかりやすく見せている。

 恐らく幸果自身はこういうのは恥ずかしがるだろうが、他の女の子に勧められたのだろうか。

 長く美しい黒髪は、プールなのでポニーテールのようにまとめてある。

 もじもじ自分の身体を腕で隠すような仕草をしているが、全然隠せてないし、寧ろそんなことをすると余計男からスケベな目で見られるぞ……と思う。


 もう、三人とも最高の水着姿だ。

 今でこそ仲が良い智奈に連れてきてもらったナイトプールだが、これがもし何かしらのイベントのパーティーとかで、俺以外にも男がいたら、彼女達は男達から熱烈なナンパを受けるだろうことは想像に難くない。

 そうなれば先程のメイドレストランのように、俺は肩身が狭い思いをするのだろうな……


 さっきのメイド服姿に続いて、水着姿に見惚れてしまっていると、

「らいくんたら、またジロジロ見てる〜っ。

 もういい加減この流れ飽きたからさー、ありす達の素敵な姿を見たお礼に、ありす達を楽しませることしてよ〜」

「頼人よぉー、オメーみてーな陰キャキモオタ野郎はこの場所に似合わねーんだよ!

 もうちょっとここに相応しい、陽キャリア充イケメンみたいなことやってみろよ!!」

「頼人!またまたそんなジロジロ見て、気持ち悪いのよっ!

 せめて黙ってないで言いたいこと言ったらどうなのよ!!」


 三人が俺に色々言ってくる。

 俺も、つい自分の熱い想いを心の中に溜め込めなくなってしまって。


「お前ら……! そんなこと言うんだったら、俺だって言いたいこと言わせてもらうぞっ!

 ありす、お前の水着姿は、凶器だっ! 劇物だっ! 犯罪だっ!!

 俺みたいな冴えないキモオタ男を全力で殺しにかかってやがる! あるいは狂って自滅しちまうんだよ!!

 ありすはたとえ無自覚だろうが、お前のせいで俺達男どもが死んじまうんだっ!!

 叶恵、俺のような陰キャキモオタ野郎が、お前のような陽キャリア充セレブのような美女の水着姿を見られただけで奇跡のようなもんだと思った!!

 お前がいつも俺のことからかったり馬鹿にしつつもつるんでくれることを本当に感謝してるぜ!!

 幸果、さっきのメイド服もそうだが、その水着姿のような普段お前が見せないようなところを、お前は恥ずかしいんだとしても俺は是非とも見たかったんだ!!

 そんな姿のお前に、男殺しの奥義をかけられて幸せに果てられたら、俺の一生に一片の悔いはないッ!!」


 俺は……三人の魅力を褒める言葉を長々と早口で喋ってしまった。

 三人は、俺をじーっと無表情で見つめる。

 や、ヤバい、言いたいこと言い過ぎてセクハラになってしまったか……?


「らいくん……♪」

「頼人……♪」

「頼、人……」


 三人は、色っぽい表情で、俺に近づいてきてくる。

 え、ちょっと待てよ!? 寧ろ怒ってもいいような気がするが、こいつらには嬉しかったのか!?

 ま、まあ、それなら俺は嬉しいし、これをきっかけにこいつら三人と愛し合うのはやぶさかでは--


 ありすが俺の右腕、叶恵が左腕を掴み。


「へいさっちゃんパス!!」

「オラぁ!幸果頼んだぜェ!!」

「うおおおお!?」

 幸果に向かって引き寄せられ押し付けられる。

 想定外のことで思わず身体のバランスを崩してしまい、その先には思い切り脚を振りかぶる幸果が。


「幸せに果てるまでもなくくたばれっ!

 このドスケベ頼人ぉーーー!!!」

「ぐあああぁあぁあ!?!?!?」


 どぐちゃっ。

 幸果が、俺の股間に、鋭く重いキックを撃ち込み、猛烈な勢いでぶっとばされてしまう。

 こ、これは……! 幸果の男殺し第三の奥義!? しかし幸果の発言からしてまだ未完成のようだ。物凄く痛いが、物凄く気持ち良い。この技が完成して、俺をはじめとする男をより至高の幸せに果てさせてくれるのを楽しみに--


 ザッパアァアァアァン!!!


 派手な水飛沫を上げて、俺はプールに叩き込まれた。

 俺は幸果のキックを股間に喰らって男の魂が潰れ壊れる苦痛と快楽で意識が朦朧としつつ、彼女達を怒らせたことを反省しつつ、幸果はこれでもまだ手加減してる方だろうなと思いつつ、しかしこのままでは冗談抜きで窒息するのですぐに意識をはっきり取り戻してプールから顔を出すと、

「わーい♡」

「ひゃっほーい☆」

 ざぶーん!!

 ありすと叶恵が飛び込んできた。

「うあっ、お前ら飛び込みはあぶねーぞ!」

 その水飛沫が顔にかかって前が見えなくなる。

 しかもありすと叶恵は俺に水をかけまくってくる。

「あははははっ♪ らいくんたらマジできも〜いっ☆

 そんなこと言って女の子が喜ぶと思ってんの〜? ラブコメ脳こわいよ〜♪」

「オラオラぁっ! 陽キャリア充気取りの陰キャキモオタクソ野郎がよ〜っ☆

 そんな奴はアタシがいじめてからかってやるよ! ウォーターシューター喰らいやがれ〜っ☆」

「ううぅ、おい、やめてくれよ〜!!」

 ありすと叶恵が容赦なく俺をいじめてくる。

「頼人、女の子にセクハラ発言した罰よっ!

 このぐらいで済むのは寧ろ喜ぶべきことなんだからっ!!」

 幸果もプールに入って、俺達を見ながら怒ってくる。

「わ、わかった、悪かったって、ごめんなさいっ!

 お前らについ、言いたいこと言い過ぎちまって、これからはそんなことしねえからっ……」

 そう弱々しく情けなく謝ると、ありすと叶恵は水をかけてくるのをやめて……


「……えっ?」

「らいく〜ん……♪」

「頼人……♪」


 二人がいつの間にか、俺に近づいて、俺の身体に寄り掛かってきていた。

 また思わせぶりな態度をとって俺にお仕置きするのか!?と警戒したが……

 うぅ、二人の柔らかな身体がくっついてくる。


「やっぱり、らいくんはありす達をどすけべへんたいな目で見てるけど、とっても愛して大切にしてくれてるよね〜っ♡

 ありす達、いつもそれのおかげで嬉しいよっ♪」

「頼人はやっぱ陰キャキモオタドスケベ変態野郎じゃねーとなー♪

 カッコつけてるよりそっちの方がオメーらしいし好感が持てるぜ〜☆」

 俺への愛情を表現してきて、いくらなんでも驚いてしまう。

「ちょ、お前ら、さっきと態度変わり過ぎだろ!?

 ていうか幸果に俺をぶっとばさせたのは怒ってるからじゃねーのか!? 幸果もよー!?」

 幸果にふると。

「さ、さっきのは、お仕置きの意味もあるけど。

 私の新しい奥義の練習を、頼人なら受け止めてくれると思ったから……

 アンタ以外の男になんか、なかなかできないし……

 ど、どう? 痛いだけじゃなくて、気持ち良かったなら、嬉しいけどっ……♡」

 幸果が、恥ずかしそうに喋る。

「いや、まあ……そりゃ、気持ち良かったけどさ……

 それじゃ、俺が褒めてくれたから、ご褒美の意味もあったってことか?」

 幸果は、こくり、と頷いた。

 マジかー……なんか恥ずかしくて気まずい雰囲気。


「みなさん、楽しんで頂けて何よりです♪」


 プールの出入り口から声が。

 俺達をここへ連れて来てくれた張本人。


「智奈のことなど気にせずとも結構ですよ♪

 ただ……個人的な意見ですが、頼人様はみなさんだけでなく、智奈のものでもあるんですからねっ?」


 智奈が、水着姿で現れた。

 緑色のワンピースタイプで、落ち着いた雰囲気だ。

 智奈の、細いウエスト、そこそこ膨らんだ胸やお尻といった、整った身体つきがよくわかる。

 何だろう、ありす、叶恵、幸果より胸やお尻は小さいが……こういう身体つきも、素敵だと感じる。抱きしめてあげたいと思う。

 智奈も、自信を持っているからこそ、メイド服や水着を着こなせるのだろう。


 智奈は、他の女の子と俺が遊んでいるのを見て、流石に少し不機嫌そうだ。

 

「……悪い、お前ら。

 智奈のもとに行かせてくれ」

 俺は、くっついている二人を離れさせ、プールを波立たせながら、プールサイドにいる智奈の近くまで向かう。


「っ!?」

「ッ!?」

「……!」

 三人は衝撃的な顔をしていた。

 お前ら、すまない……だが、智奈が俺達をここへ連れて来てくれたんだから、俺からも智奈も楽しませてやらねーと、って思ってるんだ。


「智奈……一緒に遊んでくれるか?」

「はい、もちろんです♪頼人様っ……♡」

 俺は智奈に手を伸ばして、それに智奈が手を伸ばして握り、智奈もプールに入る。

 ああ、まるで美しいお嬢様をエスコートするイケメンお坊ちゃまの気分だぜ。実際は俺はそこら辺のキモオタでしかないがな!


 向こうの三人は呆然としていた。しかし……

「……さっちゃんすきありっ♪」

「きゃああぁあ!?」

「幸果、頼人や智奈なんか放っといてアタシらで遊ぼうぜ〜♪」

「あなた達また〜!あぁああぁん……♡」

 ありすが幸果の尻を、叶恵が幸果の胸に触り出して、弄び始める。幸果も気持ち良さそうに喘ぐ。

 気にはなるが……俺は智奈に集中だ。


「ふふ……♪」

「っ!と、智奈……!」

 プールに入った智奈が、いきなり俺に抱きついてくる。

「頼人様ぁ♪ あなたは智奈だけのものですっ♪

 他の女性のみなさんに、渡したくありませんっ……♡」

「うぅ……!」

 俺も、ドキドキしながら、智奈の身体を抱きしめる。

 智奈の髪を、撫でてあげる。サラサラで綺麗だ。

 こうすれば、智奈は楽しんでくれるだろうか。

 しばらく、抱き合って……


「でも……最終的に決めるのは、頼人様ですから、ねっ?」

「えっ……?」


 智奈は、意味深なことを言う。

 そして。


「やっぱり、みなさんで遊びましょう♪

 頼人様に、誰が一番か、しっかり選んでもらうために♪」


「わわっ!?」

 俺は、智奈に手を引かれ一緒に三人のもとへ行く。


「らいく〜んっ♡」

「頼人ォ〜☆」

「頼人っ!」

「頼人様っ♪」

 四人が、次々に俺を呼ぶ。


「……ありす、叶恵、幸果、智奈。

 俺は……」




 俺は、果たして。

 この四人の素敵な女の子達の中から、一人を選ぶことなど、できるのだろうか?

 選んだとしても、他の三人を悲しませないだろうか?

 俺は、この子達、みんなに幸せになって欲しい。

 だが、どうすればいいか、わからない。


 俺には、アイツらを、幸せになんて--

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