1-9 メイドさん出撃準備
智奈が持ってきた書類に目を通す、ありす、叶恵、幸果の三人。
いくらなんでも、この三人を目当てに来た大勢の客を、彼女達自身によって喜ばせ鎮めるために、客であるこいつらに今すぐ閉店まで働けっていうのは常識的にありえねーし、大体、労働基準法的に色々アウトなのでは……
まあ……実を言うと俺も、この三人のメイド服姿、見てみたいとは思うが。
「んほおおお♡ おちんぎんしゅごいのおおお♡」
「すげーな! 『割り切り』よりもーかんじゃねーか! キャハハハ☆」
「そ、そんな額を出してくれるぐらい、私に期待してくれるっていうなら、断るのも悪いし、ね……」
「ありがとうございます♪
きっとあなた方のメイドさんの格好、とっても似合いますよっ♪」
こいつらゲンキンだな!?
ありす、叶恵、幸果の面接は、同時に行われた。
「ふん……」
この人は店長らしい。
ロングヘアーで、編み込みでまとめられた前髪。
何故かサングラスをかけていて表情はよくわからない。
長袖にロングスカートの古風なメイド服を来た女性。メイドというより家政婦長とでも言うべきか?
体型は長身でスタイル抜群である。
若くは見えるが、この風格と態度は若い女性のものではない気が。この人何歳だよ?
「採用決定。三人ともだ!」
「やった〜☆」
「よっしゃー☆」
「ほ、本当に通っちゃった……!」
「良かったですね、皆様♪」
「全然喋ってねーのに早過ぎだろ!?」
急いでいて、この三人は見た目は確かにこの店に向いているとは言え大丈夫なのか!?
マジでこの三人も今日の閉店までの数時間、この店のメイドさんとして働くことになるとは……
「いいな、オーナー」
ん? 店長が、壁のタブレットに話しかけたぞ?
すると、そのタブレットに、
【三人ともとびきり可愛いからヨシ!d(♡ワ♡)b】
と表示された!?
この店のオーナーが通信しているのか。ていうか、このタブレットのカメラで撮影してんのかよ。可愛らしい顔文字を使ってるがこいつの中身絶対おっさんだろ!
「すごいすご〜い♪ これがオーナーさん? かわい〜♡」
「こいつにならセクハラ発言されても許せるなっ☆」
「まあ、男が面と向かって言ってるわけじゃないなら、許容範囲かも……」
「この子『オーちゃん』という愛称で従業員さん達に人気なんですよ〜♪」
女の子達に人気者かよ! ひょっとして智奈が顔文字多用するのはこいつの影響か!?
このタブレットもといオーちゃん、いや俺はそう呼ばなくて良いか。オーナーは、
【いやー女の子達にモテモテで困っちゃうね〜
そこの男子のキミ、ライバルが現れてどんな気持ち〜?(`・ω・´)】
と煽ってきやがった。タブレット破壊するぞこの薄っぺら野郎!
「では早速、40秒で支度しな」
「りょーかいで〜す♡」
「やってやんよー☆」
「智奈や店長さんの期待は裏切りたくないし……! 頑張りますっ!」
「みなさんの制服をご用意してます、どうぞ♪」
「40秒は無理だろ!」
三人は用意されたメイド服を持って更衣室に向かう。
サイズは合ってんのか気になるが……
40秒後。
更衣室から、立派なメイドさんが三人出てきた。
「メイドさんにじょぶちぇ〜んじっ♡」
「アタシじゃなくてご主人様に服従させてやら〜!」
「うぅ〜、この服露出多くて恥ずかしい……」
「みなさんとーっても可愛らしくて素敵ですよぉ♪」
「マジで40秒で支度したよ!?」
さて、やらなければなるまい。
ありす、叶恵、幸果の、メイド服姿の解説を。
ありすのメイド服姿。
もはや、胸は、説明不要か。いや、あえて説明しよう。
このメイド服のデザインが大きく胸元を開けているのもあって。
たゆん。ぽよん。揺れまくっている。
こんなこと下品だろうが、この大きなおっぱいを触ってみたい、揉んでみたい。多くの男がそう思うだろう。
その欲望は、理性や倫理で抑えようとしても熱く沸き上がってしまうもので。
俺も客の男も、この乳房をずっと見ていたら、思わず気づいた時には手を伸ばしてしまっていた……なんてことになりかねない。
それに、絶対領域のむっちりした太もも。
撫で回したい、顔を押し付けてすりすりしたい。
ていうかこの上のお尻のムチムチ具合を確認するために、ありすが後ろを向いた隙にスカートをめくってみたい。
それをしたら当然セクハラで犯罪だが……ありす自身は、許してくれそう、てか寧ろ喜ぶか?あるいは男を陥れるためにあえてそういう素振りをするのか。
他の人に警察に通報されて到着する前に、可能な限り悪戯してしまいたくなる。そうすれば、逮捕されて牢屋に入れられても悔いなどない。
従順なイメージのメイドさんであることも相まって、ご主人様の男を狂わせてしまいそうな、そんな劇物のような姿としか、言い様がない。
叶恵のメイド服姿。
やはりスタイル抜群な身体を思う存分活かすような服装だ。
ハリのある大きな乳房、細いウエストから腰やお尻へのメリハリの効いたライン、絶対領域の太ももが眩しいスラリと伸びた美脚。
見た目は申し分なく、美しく完璧である。
元々はギャルという強気なイメージだった叶恵が、従順なイメージのメイドさんになると、なんかギャップを感じて新鮮だ。
こんなメイドさんが自分に従属してくれたら、最高だろうな……『従属してくれたら』。
……だがしかし、物申したいことがある。
こいつは! 致命的に! メイドさんが! 務まりそうにない! 従属してくれそうにない!
こいつ自身も言ってるように、寧ろご主人様であるはずの客の男を服従させてしまいそうだ! 男にとってはそれで良いのかも知れないが、メイドというコンセプトは崩壊する! この店的に大丈夫なのか!?
あるいは新しい客層を呼び寄せられるかも知れない。叶恵が今後もここで働く機会があればの話だが。
そして、幸果のメイド服姿。
なんというか……幸果のコスプレ姿そのものが、レアである。希少価値である。
恥ずかしがっていて、ブラウスを上に、スカートを下に引っ張って、大きな胸や綺麗な太ももを隠そうとする。しかしそんなことしても殆ど隠せてないが。
先程のゲーセンの時に、俺の身体に押しつけられた大きく立派な乳房。ありすと叶恵の間ほどの巨乳である。油断してしまったのやむなしである。
さっき幸果が話していた奥義の案に、この乳房を男の顔面に押しつけて息を止めてやる、というのがあった。
恐ろしい、が……その技を、それもこのメイドさんの幸果にしてもらって幸せに果てるのもまた良いかも知れないと思ってしまった。
太もももむっちり肉付きが良く、この脚で男の頭を挟み込む第一の奥義『
……いや、俺はさっき、この美脚から放たれる、第二の奥義『
あれを喰らって昇天しかかったのは、最悪の痛みだけではなく、最高の気持ち良さをも感じていたからだというのは間違いない……俺はまだ、あの青い世界の光に飲み込まれるわけにはいかないが。
是非とも、幸果の男殺しの奥義の数々を、何度でも受けて、幸せに果ててみたい……いや、決してMとかじゃない。
そして、幸果がメイドさんになったことにより、ご主人様として、普段言えない命令をしてみたい。
「男殺しの奥義を、俺に手加減なしでぶつけて、俺を幸せに果てさせてくれ」
……と。何度も言うが決してMとかじゃない!
俺がこの三人に見惚れていると。
「らいく〜ん、そんなにありすのメイドさん姿に見惚れちゃって〜☆
ありすにさくしゅされてすっからかんになりたいの〜♡」
「頼人! オメーも服従させてやろうか!?
ご主人様のオメーを四つん這いにして、背中にアタシというメイドが乗って、文字通り尻に敷いてやろうかっ☆」
「頼人、ジロジロ見るなあっ!
アンタがご主人様だとしても、スケベな目で女の子を見て道を違えるなら、私がメイドとしてご主人様のアンタを矯正してやるわっ!!」
メイドさんになっても、この三人は自分らしさを確かに持っている。素敵なことだ。
「……もうっ!みなさま、急がなくては!
ありすさん、叶恵さん、幸果さん! はやくホールへ! ご主人様方がお待ちですっ!!」
智奈はむっとして言い放つ。
「りょーかーいっ♪ メイドさんとして、ご主人様のみんなからさくしゅしに行ってきま〜すっ☆」
「誰が一番人気になれるか競争だァー! ご主人様ども、アタシらに屈服し、服従し、従属し、震えやがれっ!!」
「男に暴力を、『できるだけ』振るわないようにしなきゃっ……! 仕事だし……!」
四人は、いざホールへと向かって行った。
ふと疑問に思ったが。
「あの〜ところで、俺は男だからメイドにはなれないんですけど、俺なんかする事ないです?」
「……」
シュッ。無言で何かを高速で投げてきた!? 慌ててキャッチ。
これは……カメラ!?
「撮れ!」
……なるほど。理解した。
俺も、ホールにいざ向かわん!
「オーナー。どう思う?」
【女の子達はもちろん、あの男の子も輝いてて素敵だね〜(*´ω`*)
ボクらの若い頃、青春してたことを思い出しちゃうよ〜
ね〜店長ちゃん♡】
「……『ら』は要らん」
【店長ちゃんひどいΣ(T◇T)】
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