1-12 ふたりのもののふ
「--とまあ、昨日はものすごーく色々あってマジで大変だったわ〜」
俺は気心の知れた『親友』に、昨日のことについて話をしていた。
「……せぬ」
「えっ?」
「解せぬっ!
何故お主ばかり美少女達にモテて、拙者はモテぬのでござるかァ!頼人ォっ!!」
「ぐあああ!?
この男の名は「
俺のオタク仲間だ。
バンダナを頭に巻いて、かけているメガネは何故かグルグル模様があり、前開けのチェックシャツの中にエロゲのキャラが書かれたTシャツ、ジーパンにスニーカーといった、THE・キモオタみたいな見た目をしている。
この大学に入った直後ぐらいに、たまたまこいつの目に俺の作品の絵や小説が入って、深く感銘を受けたらしく、以降こうしてつるむことが多い。
「何故お主だけ女の子達と遊びまくって、拙者を呼んでくれなかったでござるかァ!!
そんなに女の子達を独り占めしたいのでござるか!?」
「いやいやいや、だってお前単位ギリギリだから昨日は授業に絶対出なきゃなんねーから呼びたくても呼ぶなって言ってたじゃねーか!!」
……
文太郎は俺の首を離した。
「……まあ、そうなのでござるがな?
いつも夜中まで漫画やアニメやライトノベル見過ぎゲームし過ぎて朝起きられなかったり、平日でもお構いなしに色んなアニメのイベントや聖地に全国どこでも行き過ぎたせいで、昨日は絶対授業に出なきゃならなかったでござる……」
文太郎は涙ながらに話す。
「……しかしっ! 今日という今日はお主の部屋に突撃でござるっ!!
素敵な男子は頼人だけではないということを女の子達にアピールしに行くでござるよっ!!」
「おっ、来るのか?
今日はありす、叶恵、幸果、智奈の四人とも来るからな、みんなお前が来て喜ぶぞ」
「フン! 頼人がそうやって冷静に余裕かましてられるのも今のうちでござるからなっ!! 早速突撃ですぞーーッ!!」
文太郎は俺の部屋に向かって行った。俺もついていく。
……文太郎。
お前は、俺なんかよりもカッコよくて素敵な男だってことは、俺が一番よく知っているからな。
……服装と口調以外は。
俺達が入り浸ってる部屋に、今日も入る。
そこには。
対戦ゲームをしているが、相変わらず喧嘩をしているありすと叶恵。
コスプレをして、恥ずかしそうな幸果と、嬉しそうな智奈。
「むーっ……あっ、らいくんっ♪ それにぶんちゃんもこんにちはっ♪」
「くーっ!おっ、頼人、それに文太郎じゃねーかっ♪」
「あうぅ……あっ、頼人、文太郎! み、見ないでよねっ!!」
「うふふ♪ あっ、頼人様、昨日はありがとうございました♪ それに文太郎様、いらっしゃいませ♪」
みんなが俺や文太郎に挨拶する。
「やーやー! ありす殿、叶恵殿、幸果殿、智奈殿っ♪ みんな元気そうでなによりでござる〜っ♪」
文太郎はデレデレ嬉しそうな顔してんな。
文太郎とこの四人も仲が良いのだ。ん、文太郎がこの女の子達のうち誰かと付き合う可能性? まあ……俺も願ってはいるが、それについては、後ほどわかる。
俺も四人がそれぞれ趣味を楽しんでいて嬉しい限りだ。
「よお、お前ら。ありすと叶恵は『ストシス』やってんのか。幸果と智奈は……うぅ、また目のやりどころに困るコスプレだな……」
『ストシス』というのは、対戦アクションゲーム『大激闘!ストライクシスターズ』の略である。昔から続いているシリーズで、近年最新作が発売され、このゲームもまた対戦ゲーマーの間で大きな盛り上がりを見せている。
本来8人まで多人数で対戦することができるが、ありすと叶恵は1対1のガチ対戦をしているようである。
「かなちゃん!そこでその技をぶっぱなすのはないよー!ちゃんと画面見てよー!」
「うるせーなありす!喰らう方が悪いんじゃねーか!ぶっぱじゃなくて読みだよ読み!」
なにやら、二人は普通に対戦しているのにピリピリしている。いつものことっちゃいつものことだが、昨日の野球格ゲーのように賭け事でもしてるのか?
幸果と智奈は、最近流行っているアニメ「魔法少女あすな☆アテナ」のコスプレをしているようだ。幸果はわざわざ自分からするとは思えないが、智奈が幸果にプレゼントしたのだろうか? 智奈は俺やありすや叶恵の影響で、メイド服だけでなく色んなコスプレに興味関心を持って着こなしているのだ。
智奈はその主人公の「あすな」が魔法少女に変身した姿のコスプレをしている。
全体的に白とピンクで構成されていて、ポップで可愛らしい印象だ。
……胸元がはだけてそこそこの大きさの胸の谷間が見えるブラウスとか、短いスカートとか、白のニーソックスを履いて演出される絶対領域とか、やたらスケベでいやらしい服装である……それを楽しそうに着る智奈。もうちょっとお嬢様としての上品さを……いや、これで良い!
幸果は「あすな」の前に現れる謎の少女の「まきあ」のコスプレをしている。
黒と紫で構成された服で、クールなイメージである。
あすなのコスプレをした智奈と同じく、胸や太ももを露出させている。特に幸果は胸や太ももがむっちりしていてとても魅力的に見えてしまう。
幸果はとても恥ずかしそうだ。ジロジロ見てたら、また男殺しの奥義をかけられそう……寧ろ喰らいたいがな!
「うふふ♪ 頼人様、文太郎様♪ ご満足頂けていますでしょうか♪
ありすさんや叶恵さんだけでなく、智奈や幸果さんのコスプレ姿も素敵でしょう♪
是非とも、写真を撮って頂きたいです♪」
「も、もうっ! 頼人、文太郎、アンタ達変態キモオタ野郎どもにジロジロ見られるのは気持ち悪いのよっ!
それ以上見たら、二人とも男殺しの奥義を喰らわせてやるんだからっ!」
智奈と幸果は、俺達に魅力的な提案をしてくる。
「幸果殿や智奈殿のコスプレ、今日も素敵ですぞっ!
是非とも写真を撮ったり、幸果殿の男殺しの奥義を喰らいたいところですが、ありす殿や叶恵殿とゲームで一緒に遊ぶのも捨てがたいっ!」
「文太郎、その気持ちはわかるが、優柔不断なのも良くねーぞ。ちゃんと決めねーと」
俺達はどうしようか考えていたが、ありすと叶恵は、
「らいくん、ぶんちゃん、今はありすとかなちゃんのガチ対戦中だよっ! お先にさっちゃんとともちゃんのコスプレ撮影してあげていいよ〜?」
「頼人、文太郎、後でいいからアタシとありすと四人でチーム戦しようぜー! アタシが無双するだけだろうがなっ☆」
と、後でいいと言ってくれた。
「ありす殿、叶恵殿、かたじけない!
頼人!幸果殿、智奈殿の撮影がどちらが上手くできるか、そして幸果殿の男殺しの奥義のコンボをどれだけ耐えられるか競争でござる!」
「ほぉー文太郎、俺の方が女の子達に付き合わされている時間は多いからな?
お前ごときが俺に勝てると思うなっ!!」
というわけで、俺達は幸果と智奈のコスプレ撮影を始めることにした。
「ふふ、頼人様や文太郎様、素敵な殿方二人に撮影してもらうの、とっても嬉しいですっ♪
智奈と幸果さんをよろしくお願いしますねっ♪」
「アンタら、私達の写真撮りまくるっていうんだったら、その後に幸せの果てまでぶっとばして昇天させてやるんだから覚悟しなさいっ!!」
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