1-3 コスプレ・デカダン

「やれやれ、あのクソデブ女をどかせられたし、スタイル抜群な身体のアタシを思う存分撮りやがれっ⭐︎」

 叶恵もコスプレを済ませて、ありすをどかしてご満悦で準備万端のようだ。

 ……叶恵も、これまた凄い格好だな。

 某世紀末バトルアクション漫画が元ネタの衣装なのか、革ジャンにトゲ付きの肩パッドを着用し、でかいショットガンの模型を装備している。さっきはこれで俺を殴ったようだ。

 しかし問題は……やはりありすに匹敵するレベルの露出度の高さ。

 叶恵の胸には、薄いサラシだけが巻かれていて、ありす程ではないがかなり大きめの胸の形が見えてしまっていて。

 その割に、細くて綺麗な、美容やダイエットに気を使ってるのがよくわかるお腹も露出している。

 黒光りして腰やお尻の形を強調するタイトミニスカートと、ヒールが高く鋭いニーハイブーツの間に絶対領域の太ももが見える。

 例の世紀末漫画の男キャラには革ジャンとトゲ付き肩パッドを着用した奴が多いが、流石に今の叶恵のような攻撃的な印象の女性キャラなんていなかった。

 今の叶恵の姿を例えるなら、世紀末の雑魚敵モヒカン男達を従える女ボスのようだ。

 どんなにムキムキなモヒカン男であっても、叶恵には逆らえ無さそうである……

 こうして改めて叶恵の身体を見てみると、本当に俺みたいな陰キャキモオタ男なんかには勿体なさ過ぎる、イケメン男と並んだ方が映えるようなスタイル抜群の美女だな……


「おらっ♪汚物は消毒だ〜っ⭐︎」

 そんな俺のモヤモヤなんかどうでもいいと一蹴するように、叶恵が銃をこちら側に向けて、ウインクして歯を見せて笑う。シャッターチャンスだ。


 パシャッ。


「それ言ったらお前自身が消毒されるんじゃ?」

「あ〜? アタシみたいな最高にイイ女に汚物を消毒してもらうとか頼人みたいな男にとっては最高のご褒美だろぉ〜⭐︎」

 叶恵のような、乱暴で下品な言動や性格はともかく、見た目はすごく美人な女の子に、俺のような男の汚物を消毒してもらう……なんかアレな想像をしかけたがやめておこう。


 叶恵は今度はヤンキー座りのようなポーズをとる。

 ……おいおい、そんな脚開いたら、タイトスカートの中身が見えちまうだろ……

 なんとか見えないように、少し上からのアングルで撮る。


 パシャッ。


「あァ?頼人、オメーナメてんのか?

 アタシがこんなヤンキー座りで脚開くポーズしてやってんのに、ローアングルで撮らねーとか寧ろ腹立つんだけどよ?

 真面目系クズのへタレ陰キャかよ」

「なっ!? そんなのわざわざ見たり写真撮ったりするとか、ローアングラーみたいな最低なことできるかっ!」

「ケッ! マジで興醒めするわー、テンション下がるわー、それともこうでもしなきゃわかんねーのかぁ♪」

 そう言うと叶恵は、あろうことかタイトスカートをいきなりめくり出し、わざとパンツを見せつけてきた。

「うぅっ…! やめてくれよ、そんな恥じらいもなく見せてきても嬉しくねーよ!」

「オラぁ! よく見やがれ、写真撮りやがれっ!

 そうしねーと頼人のことクソED野郎だってフミッターで晒すぞっ!!」

「そんなひでー言葉使うんじゃねーよ! 本気で傷つくわ!」

 こんなことを女の子に言われたら男はマジで傷つくからやめて欲しい。ましてやそれをネット上で言いふらすとか名誉毀損じゃねーか。

 それに、叶恵の表情は怒りの他に……なんか、少しの寂しさを感じさせる。

 俺はありすの時のように暴走しないようにしていたが、ありすとの扱いの差に、叶恵は寂しさを感じたのかもな……

「しゃーねーな……わかったよ、叶恵がそんな撮って欲しいなら、嫌々だけど、撮ってやる」

「ハッ! 最初からそーしときゃ良いんだよっ♪

 そっちの方が男らしくて好感が持てるしなっ⭐︎」

「うるせーな……じゃ、撮るからな」

 俺は恥ずかしがりながらも、ヤンキー座りでスカートをめくってパンツを見せつけている叶恵を撮る。


 パシャッ、パシャッ。


 ジッと叶恵のパンツを見ながら撮影する形になってしまう…

 黒いレースで、両端は紐になってて、布地が少ない。

 こんなんコスプレするのに向いた下着じゃねーだろ……って思う。

 叶恵は立ち上がって後ろを向き、ショットガンの模型を地面に突き立て、パンツが見えているお尻をこちらに突き出すポーズをして、得意げに笑う表情を俺に向けて撮影を促す。


 パシャッ、パシャッ。


「頼人よー、もっとアタシの身体がありすよりも優秀だってところ、見せてやるよっ……♡

 ありすの二番煎じなのはイラつくがなっ♪」

 ん?

 叶恵はこちら側を向き、胸を包むサラシを、指で摘んで。


 シュルルルッ。


 あっさりサラシを解いて、先程のありすと同じように指で大事なところを隠してはいるが、大きくて柔らかそうな乳房を晒してしまった。

「あぁあ!? 叶恵、お前も、こんな……!」

「キャハハッ☆ 頼人、ありすだけじゃなくてアタシのエロ姿もちゃんと撮れや〜っ♪

 じゃねーと『アタシは頼人に弱みを握られて言うこと聞かされてた、助けてください』ってフミッターに書いて頼人の人生終わらせてやるかんなっ!」

「くぅう……!」

 叶恵が虚偽の情報を流すというのはどうでもいいが。

 ありすのアレな姿を撮った以上、叶恵のそういう姿も責任持って撮ってやんねーといけないのだろうか……と、この時の俺は感覚が麻痺してしまっていた。

 またさっきのありすの時と同じような展開になってしまった……!

 渋々俺は、写真を撮っていく。


 パシャッ。パシャッ。


「頼人もノリノリじゃねーのかぁ?

 アタシの胸、ありすみたいなデブの脂肪なんかより、イイだろぉ♪

 そんじゃ、こういうのどーよっ☆」

 叶恵は、革ジャンを勢いよくバッと脱いだかと思えば、上半身を裸にして向こう側を向いて革ジャンを背中に背負ってる状態になった。

 背中の向こう側に乳房が見えて、先端の大事なところがギリギリ見えない身体の向き。

 例えるならば、俺や叶恵が今でもゲーセンでプレイしている、ハイファンタジー格闘ゲームのセクシー魔女キャラクターの、服を脱いで上半身裸になって向こう側を勝利ポーズのようだ。

 これは、なんつーか、スタイリッシュでカッコよさすら感じる……!

 アレな意図とか関係無く撮らねばならない。


 パシャッ。パシャッ。パシャッ。


「頼人ぉ〜♪

 そんなにアタシの写真撮りまくりやがって♪

 アタシがありすよりイイ女だって、わかったかぁ☆」

 叶恵がそう言うと……叶恵が何かバッと投げたのが一瞬見えた後、カメラを構えていた俺の視界が突然真っ暗になる。

「なんだ!?何か布のようなものが!?」

 慌ててそれを取り外すと、それは叶恵が着ていた革ジャンで。


 叶恵が、上半身裸で俺に抱きついてきて。

 乳房を、むにゅうっと俺の身体に押し付けていた。


「か、かかか叶恵っ……!!!」

「頼人っ……♡ 写真撮るじゃ物足りねーだろっ?

 アタシの身体、直に堪能させてやるよっ……♪」

 あまりの事態に、思わず、俺の持っていたカメラをガシャンと落としてしまった。しかし壊れたかどうかの心配すらどうでも良くて。

 叶恵の顔が近い。ジーっと色っぽい眼で俺を見つめてくる。

 身体の柔らかさや、良い匂いとか……女の子の魅力を直接感じてしまって。

 流石にこれは逃げられない、というか、逃げたくない、逃げたら男が廃るというか……


「らいく〜んっ! かなちゃんのターンだったから黙って見てたけど、もー見てらんないっ!

 かなちゃんたらありすをパクった上でらいくんに抱きつくなんて反則だよっ!

 ありすだって同じことしてやるんだから〜!!」

「あ、ありす……お前までっ」

 俺に叶恵が抱きついているところに、今度は後ろからありすが抱きついてくる。

 ありすの、大きくてもにゅ〜っと柔らかな乳房の感触が、俺の背中に伝わる。こいつ、まだ服を着直していなかったのか!?

 前から叶恵が、後ろからありすが、二人とも胸を丸出しにして、俺に抱きついて密着してくる。

「頼人〜♡ もー逃さねーかんな〜☆」

「らいく〜ん♡ だ〜い好きだよっ☆」

「うぅ、あぁ……」

 二人とも火がついてしまったのか、叶恵は俺のシャツのボタンを、ありすはズボンのベルトを、外しにかかってくる。


 ああ……ありすも、叶恵も、可愛くて、美人で、積極的で、エロ過ぎて。

 俺だって……本当はこの子達のことが、大好きでたまらない。

 一人とか選べない。俺のことを愛してくれる女の子達、みんなの気持ちに応えたい。

 ならいっそ、ここでありすと叶恵と、愛し合えたら。

 俺の貞操を、ここで捨てる時か……


 叶恵がシャツを、ありすがズボンを、同時に脱がせてきた、その時二人が俺の身体から一瞬離れた。

 その隙を突いて、俺は、

『カッ』

 と目を見開き。


「シュワッチ!!!!!」

 特撮で主人公の人間が巨大ヒーローに変身するかの如く、大ジャンプを決める。空中で膝を抱えてスクリューアタックのように大回転。そして離れた位置に着地。華麗なる大脱出を果たす。

 ありすと叶恵、呆然とした表情。


「お前ら何考えてんだよぉ!

 こんな、こんな大学の一室で俺に襲いかかるとかどんなヤバいサークルだよ!?

 俺はトイレに行く! お前らさっさと普通の服に着替えて、さっき言った通りゲーセンに行く準備しとけよ! いいな!?」

 俺は思わず大泣きしながら、二人に捨て台詞を吐きその場を逃げるように後にする。


「らいくん!! 全年齢向けから18禁に一歩踏み出す勇気がないのーーー!?!?」

「頼人!! オメーみたいな男は寧ろ女を不幸にするんだよォーーー!!!」

 ありすと叶恵の罵言雑言は、あえて聞かないようにした。

 ……今の俺はインナーシャツにトランクス姿なので、歩いてるところを誰かに見られたら俺が不審者扱いされるな……


 人目を忍び、男子トイレに着き、個室に入る。

「はぁ〜……」

 安心したところで、さっきのことを思い出してしまい。


「ありす……叶恵……っ!

 うっ、うぅ……はぁ、はぁ……!くぅっ!!」


 このあと滅茶苦茶賢者タイムした。

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