壮大なスケールで描かれる、竜と神、人の伝承記

竜とその眷属である六神によって創られた世界。人々はその世界で竜や神の加護を受けながら生活していたが、数百年前のある事件をきっかけに人と竜は相対する存在となった。世界の趨勢を憂えた竜は、自らの力によって星を終焉に向かわせようとしたが、ある神の策略によって星は滅亡を免れた。以来、人々は平穏な生活を送っていたが、数百年の時を経て運命が動き出し、星は再び破滅への道を辿ろうとしていた。破滅に向かう中で交錯する人々の願い、そして世界を見守る竜と神は何を思うのか。

上記のとおり、神話と伝承をモチーフにした壮大な世界観から成る王道ファンタジーです。歴史や地理に至るまで精緻に創り込まれた様は圧巻の一言。作中には森、砂漠、海など様々なフィールドが登場しますが、どのフィールドも叙情豊かに描かれているので自然と情景が浮かび、自分が異国の地を旅しているような気分を味わわせてくれます。
また、人間ドラマとしても非常に興味深い。敵対していた相手にも実はそれぞれの事情があり、実情を知ってしまえば一概に悪として切り捨てることはできません。物語が進む中で、主人公セス達は戦いではなく共生の道を辿ろうとしますが、それを許さない過酷な試練がいくつも彼らを待ち受けています。
破壊ではなく再生を、滅びではなく救いを、交錯する彼らの願いは果たして聞き届けられるのでしょうか。

さらに特筆すべきは登場する魔獣の多さ。敵対する魔獣は強く格好よく、味方サイドの魔獣は小さく愛らしい。特に仲間の1人ディークが連れている白い毛玉フィーサスの可愛さは病みつきになります。

王道ファンタジー好き、人間ドラマ好き、そしてモフモフ好きな方全てに自信を持ってお勧めできる秀作です。

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