私と彼は波長があう

短編でありながら、というより短編であるからこそ、思いっきり情景描写に舵を切った美しい作品です。その情景は、巧みに主人公の胸中を映し、安直な言葉で理解する（させる）ことを許しません。そこに伴う爽快感だけでも、一読の価値ありです。

のみならず、本質となるドラマは実にさっぱりとしていて、大人びています。この『情景：ドラマ』のバランスは、きっとこの著者様ならではのバランス感覚の上に成り立っているのではないでしょうか。

『ドラマ＝本質』と申し上げましたが、『ドラマが情景を支えているのでは』という不思議な感覚を得ます。
その一種の『逆行現象』が、涼しく読者を包み込んでくれます。

文学的であり、また…続きを読む

恋の始まりなんて、一瞬で過ぎ去ってしまう時間。

それを美しく切り取って、額縁に収めたような作品です。

彼のどこが好きなんだろう？
そんな疑問を感じる瞬間がありますよね。
でも彼以外の人は好きになれなさそう。

穏やかな日常のワンシーン。
ただここに登場する男女は温かい。

彼女の返信した二文字にやられる男性はきっと多いはずです。

私だったらいいのにとつい思ってしまいました。
私もこんな恋愛をしたいです。

特に何かが起こるわけでもなく、おおきな進展をするわけでもない、あるカップルの日常のほんの一コマ。

それが、とても丁寧な情景描写で切り取られた作品。

とても心地よく温かい気持ちになれました。