花弁《はなびら》が散る、そのたびに薄く重なる感情は、なに。

はなびらでも花びらでも花弁《かべん》でもなく、花弁《はなびら》と振られている。漢字の端正で硬いイメージの奥に、はなびらの柔らかさが覗く。

主人公は花が嫌いだ。それがなぜなのか、現実の出来事に重ねて語られていく。

花弁《はなびら》が散るたびに、失われたひとひらの代わりに感情が重なってゆく。薄く、冷たく、滑らかで、優しい。哀しいと簡単に言うのは躊躇われるほど繊細で、触れれば消えてしまいそうで。

これ以上は何も言えない。だから、あなたも散りゆく花を惜しめばいい。けっして難しいことではないはずだ。

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