僕が花を嫌う理由

作者 松尾 からすけ

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★★★ Excellent!!!

悲しいときがある。

泣きたいときがある。

前を向けないときがある。

とても飲み込めない現実がある。

ずっと明けない夜に怯えることがある。

『一般的』な応援歌は、気持ちを正して涙を拭いて前を向いて飲み込んで現実と向き合えば夜が明けるから怯えないでという。

だが、これは違う。

この小説は——優しい……。

悲しさを。泣きたい思いを。後ろ向きな感情を。吐き出したい現実を。夜という今を。
すべて、肯定する。

無理して笑わなくていい。
辛かったら辛いって言っていい。

そう言う、本来当たり前に掛けるべき言葉を、思いやりを、優しさを、この小説は知っている。

今、立ち上がれないあなたに、是非読んで欲しい一作。

★★★ Excellent!!!

この作品を読み始めると「おや?」と思うかもしれません。あるいは「もしや……」と予感するでしょう。
この手のお話ではどうしようもない運命のようなものがあります。しかし、本作はその切なさを落ち着いたトーンで描くことで、ただ切ないだけでは言い表せない世界を作り出しています。
五枚の花弁が散っていく止めようがない時間の流れと動いていく物語……これらをどうぞご堪能ください。

★★★ Excellent!!!

はなびらでも花びらでも花弁《かべん》でもなく、花弁《はなびら》と振られている。漢字の端正で硬いイメージの奥に、はなびらの柔らかさが覗く。

主人公は花が嫌いだ。それがなぜなのか、現実の出来事に重ねて語られていく。

花弁《はなびら》が散るたびに、失われたひとひらの代わりに感情が重なってゆく。薄く、冷たく、滑らかで、優しい。哀しいと簡単に言うのは躊躇われるほど繊細で、触れれば消えてしまいそうで。

これ以上は何も言えない。だから、あなたも散りゆく花を惜しめばいい。けっして難しいことではないはずだ。

★★★ Excellent!!!

花が嫌い。そんな人は実際にどれくらいいるのでしょうか。

本作『僕が花を嫌う理由』の主人公は、タイトル通りとにかく花が嫌いだそうで。

さらに主人公にとっては気に食わないことに、意中の彼女はそんな花に夢中になっているのです。

病院のベッドの上で。


ここでドキッとした勘の鋭いあなた。たぶん、その予想はあたりです。

彼女は病気なのです。それも治すことが叶わぬような重い病気。


さぁ、こうなるとつらいのは「時間の経過」というものです。

医師でもない主人公は、彼女が弱っていく様をただ見ていることしかできません。

せいぜいできることと言えば、彼女が愛でる花の水を変えてやることだけ。


しかし皮肉なことに、その花こそが「時間の経過」を無残にも教えてくることになるのです。

一枚、二枚、三枚と散っていく花びら。

呼応するかのように、その命を枯らしていく彼女。

そして最後には……。


ここから先を語るのは無粋でしょう。はかなくも美しいこの物語は、絶対にご自身の目で読んでいただかないと、その素晴らしさを味わうことは出来ません。


『僕が花を嫌う理由』とは何か?


真実を知った時、あなたはきっと、涙を流すでしょう……。

★★★ Excellent!!!

『君』が大切にしている花。
花の命は短い。
花が散っていくさまは、『君』の行き着く先を『僕』に容赦なく突きつけます。
その暗示に打たれながら、『君』との日々を過ごした『僕』は、どれほど苦悩していたことでしょう。きっと枯れ落ちそうになるのを必死で堪えていたに違いありません。
『僕』の心の内を想像するにつけ、涙が滲んでしまいます。

★★★ Excellent!!!

花。
雲や、風——。

この世を去ろうとする大切な人は、音もなく形を変えていくそれらの穏やかなものと少しずつ同化し——やがて、「穏やかなもの」そのものへと還っていく。

流れる時は、決して止められない。
そして——生きているものは、この世に「置き去りにされる」のだと。
その瞬間、誰もが痛いほど、そう思い知らされる。

この物語の余韻が、うまく言葉にならないまま——そんな強烈な思いが、静かに胸に溢れました。

この物語の世界で私が感じたことを、どうぞ皆様の目で確かめてください。

★★★ Excellent!!!

例えばだれかを愛しいと思ったとき、たくさんの言葉を費やしてその人を称賛するという方法もある。
シェイクスピアみたいに。
あれはあれでよかった。いやむしろスタンダードである。なにせ大先生だから。
だが現代は何もかもあって、言葉の価値もわりと昔よりは下がってしまったかもしれない。そんなとき、言葉の選び方、あるいは「どう書かないか」が重要になってくる。
書かないことでどうその愛しさを伝えようか?
花の匂いが一瞬かすめるのは、この飄々とした話の奥を、読者がかきわけていこうとしたときあらわれる。
清潔な香りがしている。

★★★ Excellent!!!

正直、既視感がないと言ったら嘘になる。
確かどこかで似た話を読んだ。
それでも、心が打たれてしまうのは何故だろう。
胸をスーとすり抜ける風の正体は何だろう。
典型的で目新しさがないのに、どうして、目から溢れる水が止めどなく流れるのだろう。
きっと、「あなた」も共感できるはず。

★★★ Excellent!!!

主人公である彼には大切な女性がいる。そんな彼女がある日、花を拾ってきた。5枚の花びらをつけた白くて綺麗な一輪の花を。
彼女が大切にしているその花。
花は嫌いだなんて言った彼だけど、大切な彼女の大切な花。
世話をしないわけにはいかない……。

だが、どんなに丁寧に手入れをしても花はいつか枯れてしまう。
彼女の大切な花も例外ではない。
一枚……また一枚と……。

主人公の彼はもしかしたら初めからこうなることが分かっていたのではないだろうか。
あまりにも似過ぎていたから。
それなら彼が花を嫌った理由も納得できる。

大好きで大嫌い。大嫌いだけど愛おしくて大切で……。
今日も彼は花に水をあげるだろう。

★★★ Excellent!!!

花を嫌う?

ほとんどの方は、お花好きだと思います。

可憐で綺麗で、良い匂いだったり。
一生懸命咲いてて癒されたり元気貰ったり。

でも、あなたがこの作品の主人公だったら?

お花を好きでいれますか?

私は、どんなにお花が好きでも嫌ってしまうでしょう。

何よりも愛しく何よりも大事で嫌になります。

心臓をぎゅっと捕まれました。

そして、読み終わり現実に戻ると大切な人が脳裏に浮かぶ素敵な作品でした。



★★★ Excellent!!!

おかしいですよねえ。花が嫌いな理由が虫が嫌いだからって。それは直接花が嫌いな理由にならないですよねえ。
おかしいですよねえ、嫌いなのに毎日水取り替えていて、最後の最後まで花は散らずに待っていたんですよ。
おかしいですよねえ。

最後はそのままの意味ではないですね。



とにかく隠喩にまみれている小説です。どこをとっても隠喩、何を切り取っても隠喩。
本当の意味を探しながら読むというのもなかなか面白いものです。

全体的に悲しいのは、綺麗です。