《常識》を疑え

これは凄まじい問題提起だ…と拝読させていただいて、震えました。問題提起であり、疑う余地もないような常識こそ疑えという注意喚起でもあると思います。
常識とは社会が産みだすものですが、動物的本能に基づくものでもあります。
出産は女の役割である。という常識がひとつ、覆されることによって読者はドミノ倒しのように様々な疑問を抱きます。
夫婦になったらこどもを作るのが常識。
こどもこそが夫婦の愛の証、……でもそれってほんとうなのか。
こどもを作らなければ夫婦愛にはなんの証もないことになってしまうのか。いやあ、そんなはずはないでしょう。こどもがいなくても、仲睦まじく、愛に溢れた豊かな関係を築いているご夫婦もたくさんいらっしゃいます。
子孫を残すことが人生の意味であり最大の幸福。
……ほんとうにそうでしょうか。
他にも残せるものはいっぱいあるし、幸福だってひとそれぞれのかたちがあるはずです。

ちょっと考えればわかることなのに、常識というものに縛られているから、普段は「それが正しい」と疑いもせずに過ごしているわけです。
その常識をかさに着て、誰かを責めたり差別したり、あるいは常識に縛られて自己嫌悪に陥ったりしているのではないでしょうか。

常識、一度でいいから、疑ってみませんか。
男女問わず、様々な読者さまに読んでいただきたい、衝撃の短編です。

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