仄かな苦みを添えて、混ざり合うミルクとコーヒー

 カフェオレを飲んでいる彼女の元に帰ってきたのは愛する恋人。気安い口調で話しかけてくる彼に彼女は何とも言えない表情で応える。何気ない会話に思えるが、それはどこか寂しさを匂わせるものだった。
 彼が好きだったカフェオレ。苦みと甘みを混ぜ合わせて作り出すそれは、どことなく人生を思わせる。だけど、今回ばかりはコーヒーの分量が少し多かったかもしれない。口の中に残る苦みは、そう簡単に消えるものではない。

 この作品は「嬉しい」や「悲しい」といった言葉を使わず、巧みに感情の機微を表現しています。淡々と繰り広げられている会話が寂寥感を醸し出していて素晴らしいですね。
 カフェオレが飲みたいという彼に「わかった、じゃあ、作る。お願いだからそこにいてよね」と答える彼女。このセリフにこそ、彼女の思いが込められているような気がしました。

 寂しい理由も苦い理由もカフェオレを選択した理由も、読んでみればわかります。


 二つのものが一つに混ざり合って生まれたものはなんなのか? この小説を読んでそれを確かめてみてください。

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