異質な力を持った少年が大切な人のために戦う、王道ハイファンタジー

滅んだ空中国家から地上へと飛び降りて旅立った少年『ルク』。ハンターの少女『クリネ』と出逢い友好を深めるが、彼女を狙う謎の集団『ロスターズ』とも因縁が生まれてしまう。
ルクは圧倒的な『身体改造』の能力を用いて、負けず劣らず強力なロスターズ達と、激しい戦いを繰り広げる――。

ファンタジーでありながら現代的な技術や設定も登場し、非常によく練られて作り込まれた世界観だなという印象を受けました。
そして何よりも主人公のルクとクリネの関係性が魅力的で、空から落ちてきた少年が少女と出逢って新しい旅が始まるという冒頭は、まさに王道なボーイ・ミーツ・ガールものです。こういうの大好き。
そして二人以外の味方や、立ち塞がる敵キャラ達も、どいつもこいつも個性に溢れています。そんな彼らが繰り広げる戦いが、地味で単調なものになるはずがない。迫力満点かつロジカルな戦い方でもあって、総合的に見てとても高い実力を感じられるハイファンタジー作品でした。

ただ世界観や設定、キャラやバトルの描写、展開のテンポの良さや前半のワクワク感などは文句ナシですが、作品の骨となる『目的意識』がよく見えないのだけは惜しいなと感じました。
ルクの過去や能力の真相はネタバレになるから出せないとしても、冒険や戦う目的をもっとハッキリ分かりやすく、要所要所で提示する必要があったと思います。
敵組織も『儀式』のためにクリネを狙っているようですが、その詳細もボカしすぎていて、要するに何がしたい人達なのか、それが伝わってきませんでした。
そんな風に作品全体の方向性や目的が見えないと、読者もどんなモチベーションで読み続ければ良いのか、その理由を見失って離れてしまいます。せっかく面白い内容なのに、そうなっては非常に勿体ないです。

ですがそれ以外の部分では、間違いなくハイレベルな作品だと思いました。ルクの秘密や敵の真の狙いが明かされ、物語が更に盛り上がっていくのを期待します。

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